山口和幸の「ツールに乾杯!」<2>フラットなステージ? 容赦ない激坂に顔面蒼白

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 いやはや。3日間のベルギー出張を終えてツール・ド・フランスは大会4日目にフランスに戻ってきた。


 やっぱり“外国”を走るツールは多少違和感がある。町並みや道路の作りも微妙に異なるが、大会主催者としてもちょっとだけお客さんという負い目があるからだ。

 フランス国内だったらゴール手前の中央分離帯なんて、自治体に命じて撤去しちゃうからね。ツールがオランダやベルギーで落車が多いのはそんなことも一因にあるはずだ。

 ボクもフランスに戻って一安心。クルマを運転していても道路標示の法則やドライバー同士のあうんの呼吸がカラダに染みついているからね。フランス人は道路で道を譲ったりすると、必ず百点満点の笑顔を返してくれる。ボクはそんなところが大好きなのだ。

 第3ステージのゴール地点は、英仏海峡のカレーにも近いブローニュシュルメールだ。ブローニュといえばパリの西にある森林公園が思い浮かぶ。ボクが初めてツール・ド・フランスを目撃した1988年、あのときはロードバイクを持っていってブローニュの周回コースを走ったものだ。夏場のこの時期は午後10時くらいまで明るいので、平日でも仕事を終えた人たちがレーシングジャージに着替えて走っていた。そんな恵まれた環境を目撃してしまうと、帰国後に都内で走っている日本のサイクリストの置かれた境遇がかわいそうになってしまった。

 フランスで同じ街の名前はよくあるので、そういうときは接続詞「シュル」のあとに地域を特定する言葉をつける。「メール」は「海」という一般名詞で、ブローニュシュルメールはいわば「ブローニュの海」って感じかな。人口43,800人の落ち着いたところだ。

 ツール・ド・フランスの平たんステージをクルマで走ってみると、「おいおい、これがホントにフラットなのか?」と顔面蒼白になる。特にブルターニュ半島などは典型的で、波状的に出現する丘陵を上り下りするという、うねりのある道が地平線まで続く。修善寺町にある日本サイクルスポーツセンターの5kmサーキットほどのアップダウンだ。いや、それはちょっと言い過ぎかもしれないけど、少なくとも群馬サイクルスポーツセンターより厳しいはずだ。



 この日のコースも後半に丘陵地が連続した。しかも残り1km地点を過ぎるとブローニュシュルメールの激坂が出現する。選手にはるか先行してクルマでこの坂を上ったが、地元の道路工事関係者が滑り止めのオガクズをまき、それを清掃車で掃き清めていた。雨になったらスリップするような恐怖感がある。

 マニュアルの取材車で激坂に停車するのは避けたいところだ。アルプスやピレネーでは半クラッチの連続で、焼けただれたいやなにおいが鼻をつく。もし激坂の途中で止まったらサイドブレーキをギッチリと引きながら覚悟の思いで坂道発進する。脇の下に冷や汗が流れるのが分かる。

 たまに失敗してエンストしたりすると沿道のファンに大声援を送られる。

 ボクは今年もツール・ド・フランスという大サーカス団の一員として3500km先のパリを目指している。
 

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)
ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)。

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