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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<4>独走の流儀! 強く、巧く、そして美しく走る真のエースたち

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 この1週間は興味深いレースが目白押しでした。ベルギーでは石畳系クラシックがいよいよ本格化し、スペインやフランスではグランツールを見据えたライダーたちがステージレースに集結。みなさんは、お目当ての選手の動向をチェックすることができたでしょうか?

独走で決める! これぞエースの勝ち方

 強いカンチェが帰ってきた。3月20日のE3ハーレルベーケ。UCIワールドツアーにおける石畳クラシック初戦となるこのレースで、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レイディオシャック・レオパード)が魅せた。

E3ハーレルベーケで独走から勝利に持ち込んだカンチェッラーラと檄を飛ばす監督E3ハーレルベーケで独走から勝利に持ち込んだカンチェッラーラと檄を飛ばす監督

 カンチェッラーラはゴールまで残り35kmの登坂区間・クワレモントで抜け出すと、そのまま独走。他の追随を許すどころか、しっかりとペース配分し、ラスト10kmを踏み直して1分以上の差をつける圧勝劇を披露した。レースのたびにマークが厳しくなる中、急坂とパヴェを使ってパワープレーに持ち込む突破力も見事だ。

石畳を走るサガン(2013ヘント~ウェヴェルヘム)石畳を走るサガン(2013ヘント~ウェヴェルヘム)

 ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリングチーム)は、ついにクラシックの勝利をもぎ取った。3月24日のヘント~ウェヴェルヘム。降雪により距離が185kmに短縮されたこのレースで、13人の逃げ集団に加わり、残り4kmを切って単独アタックに成功。最後は得意の“ウィリー”でゴールを決めた。

 集団内では、有力スプリンターが後方にいるためローテーションに加わらない選手も多かった。そんな中、サガンは自ら積極的な集団牽引に力を費やしつつアタックを決め、スプリントに頼らずとも脚が違うことを見せつけた。チームメイトのマチェイ・ボドナル(ポーランド)による献身的なアシストも、大きな勝因だ。

 ヴォルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)では、クイーンステージとされた標高1947mのポルト・アイネの頂上ゴールを目指す第4ステージでレースが動いた。ジャパンカップでの活躍でもおなじみのダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)は、序盤から逃げ集団に入り、ポルト・アイネで抜け出しそのまま勝利。これが決め手となって総合優勝も勝ち取った。

2012年ツール・ド・フランスでの見事な“スカイ・トレイン”2012年ツール・ド・フランスでの見事な“スカイ・トレイン”

 今年のツール・ド・フランスのグランデパール(スタート地点)でもあるコルシカ島を舞台に開催された、クリテリウム・アンテナショナル(UCI2.HC、フランス)では、スカイ プロサイクリングが躍動した。コル・デ・ロスペダールの頂上ゴールで争われた第3ステージでは、残り5kmでクリス・フルーム(イギリス)がアタック。一時は後続に1分近い差をつけ、格の違いを見せつけた。前日の第2ステージ個人TTでマイヨ・ジョーヌを獲得していたリッチー・ポート(オーストラリア)も2位に続き、2人の状態の良さが際立った。

 ここまで読んで、これらレースに共通することが見えたのではないだろうか。いずれも独走で勝利を決めているのである。

 コースレイアウトやレースの質、アシストの働きなど条件は様々に異なるが、「勝ってなんぼ」のビッグレースで独走を成功させるのは、やはりその選手が本当に強いからこそだろう。複数の選手が協調して追走を試みても、それを凌駕する一人逃げの鮮やかさを、この1週間は何度も目の当たりにすることができた。

“金の卵”が活躍するUCIレース

 今回は、国内ではあまり目にする機会がないUCI1クラス、2クラスのレースで活躍する“金の卵”をチェックしてみようと思う。

リック・ツァベルは2012年のU23ロードのドイツ王者リック・ツァベルは2012年のU23ロードのドイツ王者

 まず、3月18~24日に開催されたツール・ド・ノルマンディ(UCI2.2、フランス)の第5ステージでリック・ツァベル(ドイツ、ラボバンク・デベロップメントチーム)が優勝。“ツァベル”でピンときた方、大正解! そう、往年のスプリンター、エリック・ツァベルの息子だ。父・エリックはツールのポディウムで息子を抱いて登場することが多かったが、その子が20歳となった今、将来を嘱望されるスプリンターとして走っているのである。

 年々ステータスが上がっているツール・ド・台湾(UCI1.1)は3月18~24日に開催された。最終第7ステージでは、今シーズンにシマノレーシングへ移籍した吉田隼人が待望のスプリント勝利。また、1級山頂ゴールの第5ステージではツガブ・グルメイ(エチオピア、MTN・キュベカ)がエチオピア人としてはUCIレース初優勝の快挙を成し遂げた。グルメイは総合でも2位に食い込む有望なクライマーだ。同時に、前回このコーナーで触れたように、前進するチームの姿勢を台湾でも示す形となった。

 今をときめくスター選手も、若き日は小さなレースで大活躍しプロでの飛躍につなげている。このようなレースから、いずれビッグになる選手が現れることだろう。そう期待しながらチェックしていくと、サイクルロードレースがよりおもしろくなるはずだ。

今週の爆走ライダー: トマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

ヴォクレールの果敢にアタックする姿勢は見る者を熱くさせる(ツール・ド・フランス2012)ヴォクレールの果敢にアタックする姿勢は見る者を熱くさせる(ツール・ド・フランス2012)

 前段で独走勝利について触れたが、ヴォクレールも先日、単独での逃げを敢行。勝利をほぼ手中に収めながら、残り数十メートルで逆転を喫してしまった。

 3月20日のドワーズ・ドア・フラーンデレン(UCI1.1、ベルギー)は、クラシックにたびたび登場する石畳を通過するレース。残り6kmでヴォクレールがアタックし、15秒に開いた差を維持しながら残り1kmを通過。しかし、最後の最後に8人の集団に飲み込まれ、5位に沈んだ。

 ヴォクレールのアタックはいつも、レース展開の中で決定的な動きでありながら、結果的には失敗に終わることの方が多い。それでも、失敗や負けを恐れずに常にチャレンジする姿勢は、プロトンのシンボルにふさわしい。新城幸也ら有力な同僚を率いる姿が“社長”とも形容されるチームの顔は、これからも幾度となくトライし、われわれを熱くさせてくれることだろう。

アシストに貢献したチームメートの新城幸也と山岳賞ジャージのヴォクレール(ツール・ド・フランス2012)アシストに貢献したチームメートの新城幸也と山岳賞ジャージのヴォクレール(ツール・ド・フランス2012)

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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