SankeiBiz【埼玉発 元気印】より光る自転車ホイールで事故防止 テクニカルフィット

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 西武鉄道池袋線入間市駅から車で約15分。「テクニカルフィット」は小さな作業場を備え、住宅地の一角にある。今年2月、埼玉県が新しい事業展開や技術開発により飛躍を目指す中小企業を表彰する「渋沢栄一ビジネス大賞」の「ベンチャースピリット部門」で、見事、大賞に輝いた。どんなものを作っている会社なのか。

テクニカルフィットが開発した自転車用ホイールライトユニット「RayTrek(レイトレック)」テクニカルフィットが開発した自転車用ホイールライトユニット「RayTrek(レイトレック)」

「ありそうでない」

 約500の企業の設立や育成にかかわり「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一(1840~1931)。埼玉県は県出身の渋沢の精神を受け継ぎ、創造性や独創性に富んだ企業を表彰している。

 同社の受賞理由は、自転車のホイールに光を蓄える特殊なテープを張り付け、乾電池やハブダイナモを電源とした発光ダイオード(LED)で照らして光らせる装置「RayTrek(レイトレック)」を開発したことだ。どの自転車にも取り付けられ、止まっていてもホイール全体という広い範囲で光り続けるため、暗い夜道でも遠くから存在を知らせることができるのが特徴だ。

 グリーンとブルーの2色を展開し、安全性だけではなく、ファッション性も兼ね備えている。ありそうでなかった商品といえそうだ。

 街中でおしゃれに乗りこなす人が増えるなど、世間では自転車ブーム。県民1人当たりの自転車保有台数が全国1位で、県土が平坦(へいたん)なことなどから現在、埼玉県も「自転車王国」のPRに力を入れており、3月20日には自治体としては初めてメーカーや関連企業を集めて自転車見本市を開いたほどだ。

ヒット商品狙う

 ただ、同社はもともと、液晶パネル関連装置や機械の洗浄装置、静電気除去装置などを手がけており、自転車関連部品はおろか、一般ユーザーが店頭で手に取れるものはほとんど扱ってこなかった。今回、このような商品を開発したのは、やはりブームを受けてのことなのか。

 「それもありますが、やはりタイミングですね」と小林智明社長はいう。実は、着想したのは2年ほど前のこと。実績が乏しく、資金調達にも苦労していたころだ。当たり外れが激しい装置製造を続けるためにも、コストが低く、消費がコンスタントにある業界でヒット商品がほしかったという。そこで、ブームが来た自転車業界に目をつけた。事故が多発し、安全面の重要性が叫ばれ始め、商品として成立する可能性を感じた。

 「事故が起きるのは、互いの存在を認識していないことが原因。ライト1個では点にしか見えないが、2つの車輪をその形に光らせれば、誰もが自転車と認識するはずでは」

 実はこうしたアイデアはすでに存在していたが、商品化されることはなかった。最近、LEDの価格が下がってきたことも「タイミング」となり、製品化への追い風となった。

 「先端産業で新しいものをつくると巨額の開発費がかかり、うちのような小さな会社には難しい。どの商品も、隙間を埋めていくように既存技術の組み合わせに独自の一手間を加えて価値を生み出すという考え方でやっている」と小林社長はいう。

 国内での自転車の販売台数は約900万台で、うち70%以上が3万円以下の安価なもので、プロ仕様のものに乗る層は5%ほどという。「この間にいる、おしゃれと安全の両方を求める自転車愛好家に気に入ってもらえたら」。小林社長はこう期待を込める。次の「組み合わせ」と「タイミング」がどんな形になるか、渋沢栄一も楽しみにしているだろう。(安岡一成)

【会社概要】
▽本店所在地=埼玉県入間市東町7-19-7
▽営業所=東京都練馬区石神井町4-1-8-204
▽創業=2009年7月17日
▽資本金=300万円
▽従業員=3人
▽事業内容=液晶・半導体関係の製造装置の開発、製造、販売など

□ ■ □

既存技術の組み合わせで新たな価値 小林智明社長

テクニカルフィットの小林智明社長テクニカルフィットの小林智明社長

 --「技術」が入った社名の由来は

 「『何にでも合わせる』ことを社名に込めた。既存のものを組み合わせて新しいものをつくり、新しい価値を生み出す。組み合わせも一つの技術だと思う。『いいものを高く売る』だけが技術ではない」

 --その考えに至った理由は

 「自分が液晶テレビ製造にかかわっていたころ、1台50万円で売っていた。アジアメーカーの急成長で価格競争に巻き込まれた結果、今は5万円。先端技術を集め1000億円以上も投資して作ったものが、テレビ台より安く売られているのを見て、『価値』とは何だろうと考え始めたのがきっかけだ」

 --だから起業した

 「年配の方々から聞かされる『これまでは』『普通は』では、完全に世界から置いて行かれるとの危機感が強くなった。自分の考えで動けるチームを作る必要があると考え独立した」

 --現在の会社の状況は

 「まだ軌道には乗っていないが、ここ半年くらいでようやく“材料”はそろってきた。厳しい資金繰りだったが、情報を求めて他業界の人と会う中で、いくつかの基礎技術に出合ったがその一つがレイトレックだ」

 --埼玉県から表彰された

 「ただ、売り上げの5%程度だ。90%が装置や設備の製造だが安定した利益が出にくく、隙間を埋めるため、不況に強くて小物で、単価が安いものを探して、やっと商品化できた。自転車への意識が高いヨーロッパ市場の方が適している。海外からお金を稼いでくることも企業の目的の一つだったので、この製品には可能性を感じている」

 --どんな会社を目指すか

 「同業他社との戦いを避けるため、業種をまたいで組み合わせ、1つの業界しか知らない会社では決してまねできないものをつくる。『あの会社は変なことばかりやっているよな』と話のネタにされる存在になりたい」

 
【プロフィル】小林智明
こばやし・ともあき 入間市で育ち、群馬県の関東学園大学経済学部を卒業。自動車部品の販売会社、装置開発会社などを経て、2009年テクニカルフィットを設立、代表取締役社長。37歳。埼玉県出身。

□ ■ □

≪イチ押し!≫「レイトレック」 1日40分、1カ月使用可能

自転車のホイール全体を光らせる「Raytrek」の全パーツ自転車のホイール全体を光らせる「Raytrek」の全パーツ

 配線でライト4個とつながった本体に単4電池3本を入れると、全体の重さは200グラム程度。充電池よりもアルカリ電池の方が発光量が多く、1日40分の使用で1カ月間は持つ。暗闇に放置しても数時間は光っているという。

 ベビーカーや車いすへの転用も考案中。また今年は、日本で起こったブームが起こりやすい台湾でのテスト販売に乗り出す予定だ。

 2月から、レイトレックを標準装備した自転車をイオン・イオンバイクでテスト販売している。商品単体では、同社のホームページ(http://technicalfit.net/)や「アマゾン」でネット販売している。

 4980~5980円(発送料別)。問い合わせは、テクニカルフィット((電)03-6322-1097)まで。

SankeiBizより)

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