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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<3>前進することを示した“アフリカ自転車界の春” 雪の「ミラノ~サンレモ」を終えて

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 雪の影響による途中ニュートラル走行、距離短縮、コース変更…と大波乱に見舞われた「ミラノ~サンレモ」。そんな中でも、優勝を争った7選手はそれぞれ持ち味を発揮し、堂々たる戦いぶりを見せてくれましたね。

【レースレポート】雨と雪に見舞われたミラノ~サンレモ ツィオレクが初優勝

アフリカ自転車界に春がやってきた!

 今シーズンは悪天候の影響でキャンセルとなるレースが多い。2月下旬の「クールネ~ブリュッセル~クールネ」(UCI1.1、ベルギー)をはじめ、2月から3月にかけて6レースがキャンセルとなっている。自然条件には逆らえないが、ファンはもちろんのこと選手や関係者、そして多大な時間をかけて準備してきた主催者やスポンサーにとっては悔しさでいっぱいだろう。

大雪に見舞われた2013年のミラノ~サンレモ大雪に見舞われた2013年のミラノ~サンレモ

 3月17日のミラノ~サンレモもキャンセルになっておかしくない状況だった。きっと“ミラノ~サンレモだったから”実施し、選手たちもそのタイトルを目指して走ったのだろう。あの場にいたすべての選手や関係者が勇者として称えられるべきだ。

ミラノ~サンレモのゴール前、スプリントで、ツィオレク(中央)がサガン(左)をかわしたミラノ~サンレモのゴール前、スプリントで、ツィオレク(中央)がサガン(左)をかわした

 レースは既報の通り、ゲラルト・ツィオレク(ドイツ、MTN・キュベカ)が優勝。アフリカ大陸初のプロコンチネンタルチームとして話題のMTN・キュベカは、これがシーズン3勝目。うち2勝がツィオレクで、まさにエースとしての走りをまっとうしている。

 チーム名にある「キュベカ(Qhubeka)」とは、南アフリカ共和国南東部で話されるズールー語で「前進」「進歩」「続行」の意味を持つ単語だ。自転車を通じて生活環境や地域社会の改善を図るプロジェクト名でもある。選手たちは「前進」することを自らの走りで実行し、ビッグタイトルを手中に収めた。

 サイクルロードレースは、個人競技でありつつ、チームスポーツという側面を持つ。勝者として名が残るのはツィオレクだが、MTN・キュベカの勝利でもあるのだ。まさに、このスポーツのグローバリゼーションを象徴するレースとなったのではないだろうか。

 ミラノ~サンレモは、イタリア語で「春」の意がある“ラ・プリマヴェーラ”とも呼ばれるレース。それにはほど遠い、まるで冬に逆戻りしたかのような天候の中、アフリカ自転車界にはしっかりと春が訪れた。

グランツールレーサーがスペインに集結

 今週から次々とクラシックレースが開催される一方で、スペインでは3月18日からカタルーニャ地方を1周する「ヴォルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ」がスタート。第3、4ステージに超級山岳ステージが設けられる高難易度のレースには、ブラッドリー・ウィギンス(イギリス、スカイ プロサイクリング)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)らが挑む。

昨年のツールではチームで勝利へ突き進んだウィギンス(ツール・ド・フランス2012)昨年のツールではチームで勝利へ突き進んだウィギンス(ツール・ド・フランス2012)
今年コンタドールはどのような走りを見せるのか(ティレーノ~アドリアティコ2012)今年コンタドールはどのような走りを見せるのか(ティレーノ~アドリアティコ2012)

 さらに、4月1日からのバスク地方1周レース「ヴェルタ・シクリスタ・アル・パイス・ヴァスコ」には、アルベルト・コンタドール(スペイン、チーム サクソ・ティンコフ)、カタルーニャからの連戦となるライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)らが参戦。

 有力選手たちの傾向として、それぞれの方法で目標とするグランツールから逆算し、この時期のステージレースを調整に充てている。誰が勝つかはもちろんだが、コンディションやアシストとの連携など、リザルトだけでは計ることのできない部分もチェックしておきたいところだ。

今週の爆走ライダー: ゲラルト・ツィオレク(ドイツ、MTN・キュベカ)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ミラノ~サンレモでツィオレクが見せたポッジオからゴールまでのレース運びは、クレバーそのものだった。ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリング)とファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レイディオシャック・レオパード)を交互にマークし、最後は自分のタイミングでスプリントに臨んで勝利を射止めた。

クレバーなレース運びでミラノ~サンレモの勝利を収めたツィオレククレバーなレース運びでミラノ~サンレモの勝利を収めたツィオレク

 ビッグチームで2番手、3番手のライダーでいるよりも、多少チーム力が落ちてもエースでいることの方が選手にとってプラスに働く場合がある。ツィオレクにはそれがピッタリと当てはまる。昨年までは、集団スプリントで勝機を見出そうとする意識が強いように感じていたが、今のチームでならば勝ち方の幅も広がりそうだ。

 18歳でドイツチャンピオンとなり、翌年には世界選手権U23ロードでアルカンシエルを獲得。順風満帆に見えたTモバイルチームでのプロデビューも、マーク・カヴェンディッシュの台頭で活躍の場が限られ、移籍を繰り返したものの、その後もなかなか勝利には恵まれずにいた。

 それでも、筆者にはかつての鮮烈なイメージが消えることはなかった。だから、MTN・キュベカ入りが決まったときには、その決断が不思議に思えたし、数カ月後にこのような結果を残すとは思ってもみなかった。もっとも、本人はチーム理念やサポート体制に感銘を受けて移籍を決意したのだという。このチームで走るのは彼にとって必然だったのだろう。

 黄色と黒のジャージが躍動するシーンは、今シーズン、もっと見られて良いはずだ。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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