産経新聞・MSN産経ニュース連載コラム【from Editor】より歩道はだれのもの

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 少し春めいてきて、気分がいいと御堂筋を歩いて出勤する。運動不足解消が一番の目的だが、すし詰めの地下鉄から解放され、ぶらぶら歩いているだけで得をした気になる。そんなささやかな楽しみを台無しにするのが、マナーの悪い自転車の存在である。

 後ろから突然、「チリリン、チリリン」といらだたしげにベルを鳴らされたり、スピードを落とさないまま歩行者のすぐ横をすり抜けたり。携帯電話をしながら走る〝猛者〟までいる。大通りを避けて脇道に入れば、歩道のあちこちには違法駐輪の自転車。歩行者にとっては〝無法地帯〟と化しているといってもいいだろう。

 確かに自転車は、燃料も要らないし、温暖化ガスも出さない。運動不足になりがちなサラリーマンの健康増進にも役立つだろう。通勤交通費の削減にもつながるとあって、自転車通勤を認める企業がいま増えている。

 こうした自転車ブームに水を差すつもりはないが、負の側面を無視できないのも確かだ。自転車側が加害者になる事故が増加している。平成23年の交通事故件数を10年前と比較すれば、クルマ対歩行者の事故は7万2千件弱から約5万5千件と2割以上減っているのに対し、自転車対歩行者の事故は1807件から2801件と5割も増えている。

 大阪では23年5月、自転車の飛び出しが原因でタンクローリーが歩道に突っ込んで2人が死亡し、事故を誘発したとして自転車の男に重過失致死罪で実刑判決が下された。自転車の危険運転が社会問題となるなか、警察庁は先月、悪質な違反を繰り返した自転車の運転者への安全講習を義務づける道路交通法改正試案を公表。受講しない場合は罰金刑も検討するという厳しい姿勢を打ち出した。

 免許制度のない自転車への罰則付きの義務には賛否両論あるだろうが、大いに議論したらいい。その際には、自転車で事故を起こした場合に〝落とし穴〟があることも忘れないでほしい。

 自動車ならば自賠責保険が義務づけられているが、自転車では保険の加入は任意である。しかし、いったん加害者になれば被害者への損害賠償責任を問われ、裁判で5千万円以上という高額の支払いを命じられるケースも出ている。「たかが自転車の事故」ではすまないのである。

 この現状を頭に入れるだけで、歩道をわが物顔で走る自転車はずいぶん減ると思うのだが‥‥。(大阪経済部長 佐藤泰博)

MSN産経ニュースより)

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