ドイツ人サイクリストのMTB旅<4>箱根・富士山麓で温泉、ビール醸造所、山小屋!

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<3>地上150m!大阪平野を一望できる“道”

5月12日、土曜日

 午前7時15分、もう最初の仕事が待っていた。朝食に行く前に、和服を着て、サムライの刀で武装して、屋外で撮影を行う。これでは、温泉での朝風呂をゆっくり楽しむこともできない。

初めての浴衣(撮影 ヘッセン放送)初めての浴衣(撮影 ヘッセン放送)
パウル・シュミットの記念碑パウル・シュミットの記念碑

 その後、本当はもうひと寝入りしたかったが、9時には自転車で出発。芦ノ湖に沿って走り、箱根の船着場に向かった。そこには、パウル・シュミットの記念碑があるからだ。

 シュミットは1872年にベルリン近郊で生まれ、24歳で日本の地を踏んだ。上海出張中の1936年に63歳で亡くなるまで、約40年間を独身のまま日本で暮らした。ドイツにとって、対外貿易のパイオニアだ。

 1896年、東京でエルンスト・ライツ・ヴェッツラー社の輸入代理店となった「シュミット商会」を設立した。その後、満州において中国支店を設け、更にシンガポールでの取り扱いも手がけた。流暢な日本語を話し、日本の文化を評価し、貧しい人々を支援し、箱根の開発にも大きな役割を担ったので、日本人から非常に尊敬されていた。1971年、シュミットの社会的貢献を顕彰して祈念碑が設置された。彼は誰よりも日本通であり、日本の友人であり、日本において長年に亘る親密な“ドイツ大使”であった。

 私たちのソニーXperia(スマートフォン)が、次の目的地へのナビゲーションを開始した。船着場で何枚か写真を撮った後、トラックに自転車を乗せて出発。いつものように時間に追われ、急がなければならない。富士山麓の醸造技師、シュテファン・ラーガ氏と会う約束があるからだ。

「バイエルンマイスタービール」にて=富士宮市(撮影 ヘッセン放送)「バイエルンマイスタービール」にて=富士宮市(撮影 ヘッセン放送)

 ラーガ氏は16年間日本に滞在し、8年前に静岡県富士宮市で自分の醸造所「バイエルンマイスタービール」を開設した。日本でただ1人、ドイツ政府認定のブラウマイスター(ビール名人)、麦芽のマイスター、飲料機械のマイスター、酵母技術者の資格を持つ、本物のドイツビール醸造者だ。麦芽や生酵母はドイツから取り寄せている。

 ただ、ラーガ氏によると、日本における事業への投資は非常に高額で、将来性にも不安があるため、事業規模の拡大を断念したという。今後何年かの間に、大規模な地震や富士山の噴火が起こるとの予測がある、とも話してくれた。

 午後6時、後ろ髪を引かれながら、この素晴らしいドイツの雰囲気がある醸造所を後にした。次の大きなミッション、それは富士登山と、自転車でのダウンヒルだ。すでに醸造所で荷物を分別し、冨士山で必要なもののみ携行している。自転車で何キロか走ると、初めて富士山の姿がちらりと見えた。残念ながらほとんどの部分は雲に覆われていたが。

 スバルラインは18時に閉鎖されていたので、自転車で河口湖方面へとひた走る。計画では、五合目から佐藤小屋まで徒歩で約30分。登山を始めると、まだ雪が残っていた。今年の春は非常に寒く、雪が多く降ったのだという。

◇      ◇

 佐藤小屋は、ヒマラヤのような雰囲気(におい、温度、清潔さ…)をもつ非常に質素な山小屋だった。簡素な木製のベンチ、中央にある暖炉、マットレス、寝袋のある共用寝室…大阪で宿泊した近代的なスイスホテルとは正反対だ。

 山小屋では約24人の登山者と同宿になった。高度2,250メートル、気温は明らかに氷点下で、暖房もなかったが、戸外のトイレに設置されている衛生的な便座は電気で温められていた。

 私たちは移動の車の運転手に「ATMでお金をおろしたい」とはっきり伝えられなかったこともあって、手持ちのお金が少なかった。山小屋の宿泊代を払う際には、持ち金を全部集めた。この山の上では、カード払いは不可能だ。宿の主人と若干交渉した結果、お金は何とか足りた。そして、すぐに簡素なベッドに横たわった。明日の朝は早いから…。

レポート文・写真 ”Hinterländer Mountainbiker”(ヒンターランドのMTB乗り)
<5>富士登山ののち、「東京横浜独逸学園」で旅を語る

Hinterländer Mountainbiker(ヒンターランドのMTB乗り)
ドイツ・ヘッセン州、ヒンターランド出身のハラルド、ヨルク、マティアス、ウリ、ジギの5人から成る、MTBのグループ。1992年より、世界に散在するドイツ史を求め各地をMTBで訪れている。ヨーロッパのほか、中国、ブラジル、ナミビアを回り、今回は「日本に秘められたドイツ史をMTBで発見する旅」。

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