title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<381>愛すべきサイクルロードレース いま一度その楽しみ方を見つめてみよう

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 国内外のサイクルロードレースシーンを追ってきた「週刊サイクルワールド」。いよいよ、この第381回をもって終わりを迎えます。100回に到達したときには「次は200回を」と、200回に達した時には「これからは300回を」なんて思いを馳せてきましたが、Cyclistの更新終了とともに、この連載も幕を閉じます。そのあたりは後述するとして、ひとまずは直近のビッグレースの動向に触れておきます。

「週刊サイクルワールド」最終回もまずは直近のレースを振り返っておきたい(写真はボルタ・ア・カタルーニャよりイメージ) ©︎ A.S.O.

カタルーニャ、北のクラシック振り返り

 トップシーンは、本記執筆時点でクラシックレース路線とステージレース路線とが並行して進行中だ。昨年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、レースシーズンが一斉に中断したこの時期だが、今年は本場ヨーロッパに限ってはほぼ通常運行の趣き。大陸や地域によってはレース開催に慎重なところもあるが、UCIワールドツアーは2月以降ここまで、着々と進行を続けている。

 直前まで行われていたレースを振り返っておきたい。まず、3月22日から28日まで行われていたステージレース、「ボルタ・ア・カタルーニャ」。スペインに本格的なレースシーズンの到来を告げた戦いは、イネオス・グレナディアーズの独壇場となった。

ボルタ・ア・カタルーニャ第3ステージでアダム・イェーツが圧勝。リーダージャージを確保しそのまま総合を勝ち取った ©︎ A.S.O.

 ピレネー山脈に入った大会中盤で、アダム・イェーツ(イギリス)が圧倒的勝利を挙げると、チームメートのリッチー・ポート(オーストラリア)とゲラント・トーマス(イギリス)も追随。個人総合でトップ3までを固めて、後半戦は鉄壁のアシスト陣がプロトンをコントロール。そのまま総合表彰台を独占した。

 イネオス・グレナディアーズはこの大会へ、上位を占めた3人に加えて、リチャル・カラパス(エクアドル)も招集し、「仮想ツール・ド・フランス」としてレースに臨んでいた。本番ではライバルになるであろうタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)やプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)らは参戦しなかったが、ツールでは大会終盤の勝負どころとなるピレネーの上りを意識した走りを、カタルーニャでの1週間では実行した。

イネオス・グレナディアーズがボルタ・ア・カタルーニャ個人総合トップ3を独占した。左から2位リッチー・ポート、1位アダム・イェーツ、1人おいて3位ゲラント・トーマス ©︎ A.S.O.

 クラシック路線は、ベルギー北部のフランドル地方で展開中。24日に行われた「オキシクリーンクラシック・ブルッヘ~デパンネ」は集団スプリントで決し、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が優勝。UCIワールドツアーにおけるワンデーレース初タイトルを飾った。

 やはり地元開催のレースで力を発揮するドゥクーニンク勢。その2日後のE3サクソバンククラシックでは、カスパー・アスグリーン(デンマーク)が総距離にして60kmを独走する驚異的強さを発揮した。

 まず、フィニッシュまで67kmを残したタイミングで集団から飛び出すと、そのまま石畳区間をこなしていく。後方では、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が中心となって追走を図る。ドゥクーニンクのアシスト陣による徹底した抑えによって思うようにペースが上がらなかった追撃態勢だったが、残り12kmでようやくアスグリーンを捕らえた。

 7人まで減った優勝争いは、残り5kmでアスグリーンが再びアタック。先頭グループにあと2人チームメートが控えていたこともあり、迷いなく飛び出したデンマークチャンピオンジャージが、最終的にそのままフィニッシュまでリード。初優勝を決めた。

オキシクリーンクラシック・ブルッヘ~デパンネはサム・ベネットが優勝 ©︎ Luc Claessen/Getty Images
E3サクソバンククラシックではカスパー・アスグリーンが驚異的な強さを見せ勝利した ©︎ Tim de Waele/Getty Images

 このレースでは追走実らず、さらにはバイクトラブルもあって苦杯を嘗めたファンアールトだったが、28日に開催されたヘント~ウェヴェルヘムで完全リベンジに成功した。

 3回通過のケンメルベルグ、2回通過のモンテベルグといった名所を含む10の登坂セクションを含んだ250kmのレースは、スタートから75kmほど進んだところでメイン集団が急激なペースアップ。海風を利用してプロトンの分断を図ると、そこに残ったのは20人ほど。当初先行していた3人を労せずキャッチすると、そのまま逃げの体制に移った。

 優勝候補に挙げられる選手の多くがこのグループに入ったが、対応できなったのがドゥクーニンク勢だった。エーススプリンターのベネットだけが先頭に加わったが、アシスト陣が後方に取り残され、不利な状況に追い込まれた。

 レース後半の登坂セクションでさらに勢いづいた先頭グループは、少しずつメンバーをふるいにかけ、7人で優勝を争うことに。そのままスプリント勝負に持ち込み、最後はファンアールトがジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)、マッテオ・トレンティン(イタリア、UAE・チームエミレーツ)らを振り切って、北のクラシック初制覇を果たした。

ヘント〜ウェヴェルヘムを制したワウト・ファンアールトは北のクラシック初優勝 ©︎ Getty Images

 このレースでは、ファンアールトをお膳立てしたネイサン・ファンフーイドンク(ベルギー)の働きも光った。残り16kmでのアタックでベネットらスプリンター数人を振るい落とし、フィニッシュ前2kmではシュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)の攻撃をすぐに察知。ライバルの動きを封じ、ファンアールトのリードアウトまで務める大車輪の働きだった。

 なお、レース開催が進む一方で、新型コロナウイルスの陽性者が数例出ており、チームや主催者の慎重な判断が求められる状況は続いている。ボルタ・ア・カタルーニャでは、スタッフに陽性者が出たアルペシン・フェニックスが開幕前に欠場を表明。開幕後には、エキポ・ケルンファルマから症例が出て、大会途中での撤退を余儀なくされている。

 また、E3サクソバンククラシック前のPCR検査で、ボーラ・ハンスグローエの所属選手に陽性者が出たため、チームごと出場を断念。ベルギー当局の基準に基づき、次戦のヘント~ウェヴェルヘムへの参戦も禁じられる事態になった。

原点に立ち返って

 さて、「週刊サイクルワールド」の執筆も終わりが近づいてきました。連載開始が2013年3月なので、丸8年書き続けてきたことになります。後にも先にも、このコーナーが筆者の「代表作」となることは間違いないでしょう。そう思えるくらいの連載期間・回数をいただきました。

いま一度、ロードレースの楽しみ方を確認してみよう(写真はイメージ) ©︎ A.S.O.

 このコーナー、そしてCyclistでの思い出は「私とCyclist」を読んでいただければと思います。レースやイベントの会場で「いつも読んでいます!」と声をかけてもらったり、こんなしがないジャーナリストでも写真やサインを求められたりと、回を追うごとに「週刊サイクルワールド」が読者のみなさんに与えている影響力を実感する8年間でした。我ながら「すごいことをしてきたな」と、ただただ思うばかりです。

 本記の締めに、サイクルロードレースの楽しみ方をまとめておきます。これからレース観戦しようという方には予習として、目の肥えた方には復習や原点に立ち返るきっかけとして、読んでいただければと思います。

1. レースを観よう

 ツール・ド・フランスでも、ワンデーレースでも何でも構いません。まずは1レース、1ステージ。入口は何でも良いと思います。友人に勧められたから、テレビCMで放映告知をしていたから、何となく気になったから…。そのうち、スピードや選手間の駆け引き、そして優勝争いの壮絶さを実感できるようになるはずです。

2. 好きなレースを見つけよう

 観ていくうちに、どのレースが権威あるものなのか、歴史あるものなのかが分かるようになっていきます。今ではウェブでいくつも情報が得られます。何なら、「週刊サイクルワールド」過去分を読み漁ってみてください(笑)。その結果、やっぱりツールが一番と思うのか、クラシックが好みになるのか、はたまたまったく違うレースのとりこになるのか。それはあなた次第!

3. お気に入りのライダーを見つけよう

 レースの好みが見えてくると、その開催時期を基点にシーズンを追えるようになります。すると、目的となるレースの優勝候補や目立つ選手たちも分かるようになってきます。そんな中から、応援したいライダーがきっと見つかることでしょう。単純に強いからでも良いですし、アシストしている姿が印象的、いつか勝てる選手になるだろうから…といった理由でももちろんOK。本気で応援できるようになれば、大勢の集団内でもどこに位置しているかが見分けられるようになるはずです。

4. 戦術を覚えよう

 レースを追いかけ続けると、結局ここへと行きつきます。「応援していた選手が何で負けたのだろう」、ときには「フィニッシュまでまだまだ距離があるのに何でペダリングを緩めちゃったの!?」なんて思うことも。エースとアシスト、逃げ、アタック、トレイン…レースを構成するいくつもの要素を知れば、よりロードレース観戦が楽しくなるはずです。

 …はい、これでみなさんもロードレースマニアの仲間入り!

 今もなお新型コロナウイルス感染拡大の影響が出ているロードレースシーンですが、本来であればヨーロッパだけではなく全世界であらゆるレースが開催されています。日本国内でも2021年シーズンが始まりました。この競技を追っていくと、案外身近で熱いレースが行われていることに気が付きます。そこにあるドラマや人間模様をダイレクトに感じられる、それがこの競技の魅力であり、すごさでもあります。

これからもサイクルロードレースの感動を一緒に味わっていきましょうね!(写真はイメージ) ©︎ A.S.O.

 またどこかで、ロードレースの楽しさを共有できればうれしいですね。筆者はこれからもジャーナリストとして歩んでいきます。この先、みなさんへどんな感動を伝えられるでしょうか。期待して待っていてください。ご愛読ありがとうございました。

今週の爆走ライダー−フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ここまで13勝を挙げ、今年も最強チームの名にふさわしい活躍を見せるドゥクーニンク・クイックステップ。クラシックシーズンに入り、複数選手がタイトルを獲得するなど、その勢いはとどまることを知らない。

好調ドゥクーニンク・クイックステップの立役者の1人、フロリアン・セネシャル © Wout Beel

 勝利量産を図るタレント軍団の一員として、すっかり欠かせない存在となったのがフランス人ライダーのフロリアン・セネシャル。現チームでの生活も4年目を迎え、完全に軌道に乗った印象だ。

 E3サクソバンククラシックでは2位。アスグリーンが飛び出してからは、ゼネク・スティバル(チェコ)とのコンビで、ライバルのアタックを次々と食い止めた。追走グループのペースを巧みに乱して、周りの消耗を誘うことに成功。最後は2位争いのスプリントまで制して、ワン・ツーフィニッシュを完成。とにかく、チームに貢献できたことがうれしかった。

 パヴェや悪コンディションには絶対の自信がある。走りの基礎は、9歳で始めたマウンテンバイク。ジュニア時代には年代別のパリ~ルーベで勝っているし、2012年にはトレーニーとして加わったこのチームでトム・ボーネンのアシストも経験した。

 だから1年でも早くプロ契約を結びたかった。下部組織にいてもトップチーム昇格がかなわないとあれば、オファーのあった他のチームへ。コフィディスで4年間走ったのち、“古巣”である今のチームに加わったのもそんな事情からだ。「正直、もうこのチームで走ることはないと諦めていた。だけど、(チームマネージャーの)パトリック・ルフェヴェルは僕のことをずっと見てくれていたんだ。誘われたときは、このチャンスを二度と逃すまいと思ったよ」。

 ワンデークラシックで見せる彼の走りは、もはや一流そのもの。貢献度の高まりとともに、ビッグタイトル獲得への期待も膨らんできた。チームがレースを支配することも多いだけに、あとは流れ次第でチャンスがめぐってくることだろう。

 「チャンスがあることは自覚している。チームが僕を信頼してくれていることも分かっている。だからこそ、いつかは勝ちたいと思っている。勝てるとすれば、少人数のスプリントになった時じゃないかな」。今のところ、北のクラシックは全レースメンバー入りの予定。大仕事を果たす瞬間は、すぐそこまで迫っているかもしれない。

E3サクソバンククラシックではチームプレーに徹しながらも2位を確保。フィニッシュではガッズポーズのフロリアン・セネシャル ©︎ Tim de Waele/Getty Images
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

この記事のタグ

UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

Cyclist CLIP

スペシャル

自転車協会バナー

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載