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栗村修の“輪”生相談<201>50代男性「超軽量高剛性カーボンホイールに変えたのですが、うまく進みません」

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 いつも楽しくありがたいお話を読ませていただいている、50代男性です。

 最近、軽量高剛性アルミホイールから、トッププロも使っている超軽量高剛性カーボンホイールに変えたのですが、うまく進みません。確かに軽くて良く回るのですが、進みません。

 特に30km/hを超えたあたりから軽く回るのですが、進まないというか、すぐにバテて結局速く走れません。

 多分ペダリングが下手だからと思うのですが、軽いホイールをうまく使うための方法や練習法などありましたら教えて下さい。

(50代男性)

 高い、高性能ホイールに替えたのにうまく進まない。合理的に考えたら速くなるはずなのに…。サイクリストあるあるですね。

 思えば、自転車とは不思議な乗り物です。乗り物という点では自動車や飛行機と同じ機械なのですが、ひとつだけ特別なのは、エンジンが人間というややこしい存在であること。僕がこの連載で繰り返してきた通りです。

 ホイールをグレードアップした結果、速くなるはずなのに、なぜかそうではないと感じる。実際は速くなっていた、というオチもあり得るのが自転車の難しいところですが、そうではないと仮定して話を進めましょう。

 ペダリングも複雑な行為です。クランクに加わる力は360°一定ではなく、ペダルを踏みこむ位置だけグッと強くなっているはずですし、フレームやホイールもしなるでしょう。ペダリングの最中のロードバイクはとても複雑な挙動をしているはずです。

 このようにロードバイクは複雑ですが、全体としてひとつのシステムになってもいます。だから、ひょっとすると質問者さんのペダリングやフォーム、ポジションは軽量高剛性アルミホイールに最適化してしまっていて、だから超軽量高剛性カーボンホイールではあまり進まないのかもしれません。他にも、フレームとの相性もありえますよね。システムの一部だけを替えると、当然、他の部分には違和感が出てくるはずです。

アクセル全開にした運転者自身を痛めつけるのが人間というエンジンの悩ましい部分でもあります Photo: Yuzuru SUNADA

 そのシステムの中核にあるのが人間というエンジンなのですが、このエンジンはなかなか優秀でして、環境に順応することができます。一例を挙げると、キツイ走りに順応することを僕たちはトレーニングと呼んでいますよね。

 というわけで、質問者さんの症状は、単に新しいホイールに慣れていないせいかもしれません。もし客観的に確かめたいなら、パワーメーターや心拍計、サイクルコンピュータなどを駆使して、実際に速くなっているのか遅くなっているのかを計測するしかありません。まったく同じ条件・同じパワーで走ってみて、それでも遅くなっているなら、実際に「進まない」と言っていいと思います。でも、実は速くなっているかもしれませんよ。

 ただ、厳密な計測は難しいかもしれません。モチベーションや機材への慣れなどは数値化しにくいですから。

 以下、傾向としてのお話を書いておきますのでご参考にしてください。

◯ 一般的に軽量ホイールは剛性が下がりやすい

◯ 体重がありトルク変動が大きいペダリングをする方だと軽さのメリットよりもしなりによるパワーロスのデメリットが大きくなる

◯ 体重が軽くシッティングが多めでケイデンスが高い(トルク変動が小さい)ペダリングをする方であれば軽量ホイールのメリットを得やすい

 まずはある程度超軽量高剛性カーボンホイールを使ってみて、「ホイールの良さを引き出すペダリングをマスターする」というミッションを自らに課してみてはいかがでしょうか。

 というわけで、およそ8年にわたってみなさまからのご質問に答えてきたこの連載ですが、結局、同じところに行き着いてしまいました。人間というエンジンは、なんとややこしい存在なのでしょうか。その日の気分で出力が変わりますし、客観的な計測も難しい。

 でも、だからこそ自転車は面白いのかもしれません。あなた自身という非常にわがままなエンジンを手なずけ、なんとか速く、遠くまで走らせる。なかなか上手くいかないと思いますが、成功したときの喜びは何にも代えがたいものがあります。だから僕たちは自転車に乗っているんですよね。

 困ったエンジンです。でも、なんと愛らしいエンジンなのでしょう。言うことを聞くだけのエンジンじゃ、少し物足りないと思いませんか?

 みなさんも、たくさん悩みながら走り続けてください。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

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