「私とCyclist」③安井行生さんCyclistはコンテンツの幅広さ、信頼できる情報の発信源だった

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 Cyclistの情報更新停止まであと2日となりました。連載執筆陣がCyclistとのかかわりを振り返る「私とCyclist」を3月31日までリレー連載します。第3回はインプレッションライダーの安井行生さんです。

情報の質を吟味する大切さ

 「3月末をもって更新を停止します」

 憔悴した様子の編集者から電話をもらったときは、さすがに驚きました。

Cyclistサイト終了告知 Photo: Masahiro OSAWA

 ここ数年で自転車メディアの在り方は変わりました。自転車界に限った話ではありませんが、ブログや各種SNS、YouTubeなどの普及によって、誰もが情報の発信者になれるような世界が来たからです。とくにこの1年は、自転車メディア激動の年。僕自身も、昨年「La route」という自転車メディアを立ち上げ、メディアとして成立させる難しさに直面しています。

 しかし、そんな時代だからこそ、情報の質は吟味しなければなりません。

 面白おかしく、刺激的で、耳目を集めるだけのタイトルが付けられた情報が溢れていますが、正しい視点に立って書かれた文章や、正確性が担保されている情報が全てではありません。

 そこをクリアできているのがメディアだと思います。もちろん、広告収入によって成り立つ商業メディアは色々なしがらみがありますが、そこに載っている情報は、幾重ものフィルターを通ってきた「嘘ではない情報」です。大手メディアにしかできない取材(大手メディアにしか発信できない情報)もたくさんあります。

視野が広がるのは求めていない情報に触れたとき

 また、「情報のごった煮」状態であることもメディアの魅力です。ネットでは「自分の興味のある情報」にしかリーチしないものですが、いわゆる大手自転車メディアでは、自転車に関する情報が一通り網羅されています。

 とくにサイクリストは、幅広い情報を扱っていました。トップページにいくと、新製品情報やインプレやレースレポートはもちろん、いわゆる文化系の記事もたくさんありました。

 そこには、「自分が求めていなかったが有益な情報」や、「疑問にすら思っていなかったことの答え」が載っていたりするものです。

 自分の視野が広がるのは、まさにそういう「求めていなかった情報に触れたとき」なんです。

ロードバイクの選び方の記事をオーダーして、「わざと間違えてみる」ことをオススメされるとは思っていもいませんでした。そんな意外性にあふれた記事をありがとうございます(by 担当編集者) Photo: Masahiro OSAWA

 色んなところで刺激的な情報がタダでたくさん得られるから、メディアなんか必要ないと言う人がいます。しかし、そういう時代だからこそ、ちゃんとしたメディアが必要なんです。

 だからサイクリストがなくなってしまうことは残念です。時代の流れや企業の判断は個人の力ではどうしようもありませんが、幅広く、信頼できる情報の発信源を一つ失ってしまったことは確かですから。

読者の皆さんに感謝

 最後に。サイクリストで記事を読んでくれた読者の皆さん、ありがとうございました。「サイクリスト、読んでます」と声をかけていただくことも多く、ライターとして幸せを感じる仕事でした。

 そして、編集部の皆さん、今までお世話になりました。編集部から依頼される文章のテーマは、今まで自分は書こうと思わなかったことや、考えもしなかったことも多く、楽しみながら、勉強させてもらいながら、毎回書かせてもらいました。自転車関係者が大集合する毎年の忘年会、楽しかったです(残念ながら昨年はコロナの影響でできませんでしたが)。

 サイクリストは閉鎖となってしまいますが、別の形で一緒に記事を作れる日が来ることを願っています。

 では、いつかまた。

インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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