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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<380>快調なシーズンインでグランツールに期待膨らむ バーレーン・ヴィクトリアス 2021チーム展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 数回に分けてお届けしてきた2021年シーズンのトップチーム展望は今回が最後。トリを飾るのは「赤の軍団」バーレーン・ヴィクトリアス。エースクラスの堅実な走りによって、どのレースでも上位進出が計算できるチーム力。そして、われらが新城幸也も重要な戦力としてシーズン序盤からフル回転。活性化するシーズンに向けて、楽しみが増す一方のチームの動向を見ていこう。

バーレーン・ヴィクトリアスの絶対的エース、ミケル・ランダ。ツール・ド・フランスの総合表彰台に向けて、シーズンインから好調な走りを披露している Photo: Marco Alpozzi - LaPresse

ステージレースでの好成績でチームの方向性が明確に

 2021年シーズンが始まって以来、出場するレースでは着実に結果を残している。勝利こそ、2月14日のツール・ド・ラ・プロヴァンス(UCIヨーロッパツアー2.Pro)第4ステージでフィル・バウハウス(ドイツ)が挙げた1つだけだが、ビッグレースでの上位進出や果敢な仕掛けから、赤基調のジャージが目立つ場面が多い。

ティレーノ〜アドリアティコで個人総合3位に入ったミケル・ランダ。個人タイムトライアルでもしのいで総合表彰台の一角を押さえた Photo: Gian Mattia D'Alberto - LaPresse

 シーズン序盤のハイライトは、ティレーノ~アドリアティコでのミケル・ランダ(スペイン)の個人総合3位。彼が得意とする山岳にとどまらず、丘陵ステージから攻めの走りを展開し、7日間の会期を通して上位戦線を走行。ステージ優勝には届かなかったものの、悪天候での消耗戦も乗り切り、総合表彰台の一角を確保した。特に、最終日の個人タイムトライアルでは、この日の順位こそ下位に沈んだが個人総合順位は死守。これまでグランツールでも、大会終盤のタイムトライアルステージで失速し総合表彰台を逃したケースがあるだけに、ライバルの追撃をしのいだこの大会の走りには満足している様子だ。

 同時期に開催されたパリ~ニースでは、新戦力のジャック・ヘイグ(オーストラリア)が個人総合7位。ここまでの戦いぶりからは、ステージレースを軸に成果を上げようというチームの方向性がしっかりと表れている印象だ。

グランツールとクラシックの相乗効果に期待

 昨シーズン、チームは要所でインパクト十分の走りを披露した。スプリントではバウハウスがサウジツアーでステージ2勝を挙げて、個人総合でも優勝。お家芸ともいえるグランツール路線では、ランダがツール・ド・フランスで個人総合4位となり、ジロ・デ・イタリアではペリョ・ビルバオ(スペイン)が同5位。ワウト・プールス(オランダ)もブエルタ・ア・エスパーニャで同6位と続き、チームが誇る総合系ライダーがきっちり結果を残した。

 今季も彼らが中心になる。すっかりチームの顔となったランダは、ツールの総合表彰台へ「今年こそ」の思いを強めている。山岳ステージでの鋭い展開の読みや、ここぞというタイミングでのアタックは、ビッグレースの総合争いを動かす大きな要素。今年のツールは、2ステージ合計58kmの個人タイムトライアルステージが控えるが、この局面をいかにクリアして山岳勝負に持ち込めるかがポイントとなる。また、コンディション次第ではジロへ参戦する可能性もあるという。

グランツールリーダーの1人、ペリョ・ビルバオ。得意としているジロ・デ・イタリアで上位進出を図る見込みだ =2020年10月22日、ジロ・デ・イタリア2020第18ステージ Photo: Yuzuru SUNADA

 ランダの強い意志にチームも応えようと、ツールへはビルバオとプールスもメンバー入りさせて総力戦に持ち込む構え。ビルバオに関しては、戦い方を知っているジロにも注力する意向で、状況次第ではこの大会でもランダとの共闘が考えられる。プールスは2月のUAEツアーで膝を痛めたのが不安要素だが、本記執筆時点で開催中のボルタ・ア・カタルーニャを走っており、けがの回復は順調とみられる。

 この3人に続く選手たちも充実。昨年のツールではランダと並んでトップ10(10位)に入ったダミアーノ・カルーゾ(イタリア)、同様にジロでトップ10入り(10位)したハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)、そしてヘイグと、実力者がそろい戦術の幅も広がっている。

スプリントやクラシックでの活躍が期待されるソンニ・コルブレッリ =ツール・ド・フランス2020第2ステージ、2020年8月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツールやステージレースの戦いにメドが立っているだけに、クラシック路線の選手たちも続くようになれば、チーム力の高さは確かだといえるだろう。いよいよ本格化する北のクラシックに向けては、スプリントも魅力のソンニ・コルブレッリ(イタリア)やベテランのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)に期待。ハウッスラーは2月末のオンループ・ヘットニュースブラッドで4位に入り好調。この冬はシクロクロス参戦で鍛えたこともあり、ロードでの強さが戻ってきた印象だ。

 アルデンヌクラシックに代表される丘陵レースは、ディラン・トゥーンス(ベルギー)が頼りになる。クラシックレースでの優勝経験はないものの、大事な場面でスマートに立ち回ってチャンスを広げるあたりはツールのステージ勝利でも証明済み。先ごろはパリ~ニースでまずまずの走りを見せており、来る“本番”での走りが楽しみになっている。

東京五輪へ意欲十分の新城

 そして、新城幸也の今後の動向にも期待が高まる。

2021年もシーズンインから全開の新城幸也。東京五輪に調子のピークをもっていくべく着々と仕上げている =ジロ・デ・イタリア2020第19ステージ、2020年10月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 3月に入ってからのシーズンインとなったが、パリ~ニース、ミラノ~サンレモでのメンバー入りは、チームの主力であることの証拠でもある。このところはスプリントトレインの牽引役として集団前方へ仲間を引き上げる動きも目立っており、層の厚いチームにあってレースを構築する貴重なピースになっている。

 すでに東京五輪ロードレースの日本代表にも内定しており、本番への意欲もたびたび口にしている。観る者としてはツール出場も願うところだが、こればかりはチーム事情がかかわってくる。とはいえ、ツール閉幕直後に五輪ロードレースが控えていることもあり、ビッグレース連戦で活躍する新城の姿は思いを馳せずにはいられない。大きな希望を抱きながら、この先の走りをチェックしていきたい。

バーレーン・ヴィクトリアス 2020-2021 選手動向

【残留】
新城幸也(日本)
フィル・バウハウス(ドイツ)
ペリョ・ビルバオ(スペイン)
サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)
エロス・カペッキ(イタリア)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
ソンニ・コルブレッリ(イタリア)
スコット・デーヴィス(イギリス)
フェン・チュンカイ(台湾)
マルコ・ハラー(オーストリア)
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)
ケヴィン・インケラー(オランダ)
ミケル・ランダ(スペイン)
マテイ・モホリッチ(スロベニア)
ドメン・ノヴァク(スロベニア)
マーク・パデュン(ウクライナ)
ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)
ワウト・プールス(オランダ)
マルセル・シーベルグ(ドイツ)
ディラン・トゥーンス(ベルギー)
ヤン・トラトニク(スロベニア)
ラファエル・バルス(スペイン)
スティーブン・ウィリアムズ(イギリス)
フレッド・ライト(イギリス)

【加入】
ジャック・ヘイグ(オーストラリア) ←ミッチェルトン・スコット
アフメド・マダン(バーレーン) ←バーレーンサイクリングアカデミー
ジーノ・マーダー(スイス) ←NTTプロサイクリング
ジョナサン・ミラン(イタリア) ←サイクリングチーム フリウリASD

【退団】
エンリーコ・バッタリーン(イタリア) →バルディアーニ・CSF・ファイザネ
グレガ・ボーレ(スロベニア) →未定
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス) →ドゥクーニンク・クイックステップ
イバン・ガルシア(スペイン) →モビスター チーム
ルカ・ピベルニク(スロベニア) →引退

今週の爆走ライダー−マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロ4年目を迎えたヤングクライマー。ルーキーイヤーから勝利を挙げるなど、着々とトップライダーへの階段を駆け上がっている。

ジロ・デ・イタリア2020第12ステージで逃げを試みたマーク・パデュン。この時はパンクに見舞われ、逃げ切り勝利のチャンスを逃してしまった =2020年10月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 困難に直面しても、前向きに日々を過ごしてきた。世界的なパンデミックでレース活動がストップした時には、国内情勢が落ち着かない自国には帰らず、拠点であるイタリアに残ってトレーニングの効率化を図った。プロ入り前には、戦闘が激化する地元を離れてイタリアでチーム探しに励んだこともあるなど、自らの力で道を切り拓いてきた。

 だから、先行きが不透明な中でもレースに臨める今がうれしくて仕方がない。オフシーズンの調整が遅れたこともあり、開幕以降ここまでは自身の成績は振るわないが、ティレーノ~アドリアティコでは逃げにトライするなど、チームオーダー通りの走りで首脳陣の評価を得た。目下のターゲットは、2年連続のジロ出場。昨年は第12ステージで勝ち逃げに乗ったが、残り30kmでのパンクで後退。トラブルさえなければ勝っていたのではないかと内心思っているという。だから、今年のジロではステージ優勝をノルマとして自らに課すことにした。

 実力を見出してくれたチームには感謝の思いでいっぱい。新型コロナ禍で給与の支払いが滞ったときには、「このチームなら必ず後払いしてくれるはず」とチームを信じるコメントが自国メディアでニュースになったほど。契約更新のオファーにも迷うことなくサインするなど、この先のキャリアも現チームで送る意志は強い。あとは、その思いをリザルトで表現できれば申し分なしである。

2021年もジロ・デ・イタリアにフォーカスするマーク・パデュン。ステージ優勝が最大の目標だ =ジロ・デ・イタリア2020第15ステージ、2020年10月18日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー チーム展望2020-2021 ロードレース 週刊サイクルワールド

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