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つれづれイタリア〜ノ<最終回>8年の歩みの総集編 さようなら。そしてまたお会いしましょう

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 2013年にスタートしたこのコラムは残念ながら今回で終わりを迎えます。まずはこの場を借りて、私のたどだどしい原稿と長文を添削し、修正していただいた編集者の皆様に感謝の意を表したいと思います。今回はこのコラムが始まったきっかけ、そしてこの8年間の自転車界の歩みについて書きたいと思います。最後のコラムになりますが、最後までお付き合いください。

cyclistで約8年間連載をもったマルコさん Photo: Naoi HIRASAWA

Cyclistとの出会い

 Cyclistとの出会いは2012年秋。私は栃木県宇都宮で行われていたジャパンカップ会場にいました。もともと私が勤めていた教育機関が発行していたウェブマガジンの記事を書くため、さまざまな取材を現地で行なっていました。プレスルームで仕事をしていると、Cyclistのスタッフに声かけられました。まだ知名度のなかった媒体でしたが、「マルコさんは面白そうですので、何か投稿してみませんか」という簡単な誘いからCyclistとの関係が始まりました。

 イタリアと日本を自転車で繋げられればいいなと思い、「イタリア人プロ選手が多く、ファンは少し話したいだろう。イタリア語ミニ講座はどうですか?」と提案したら、あっさりと採用されました。そして2013年1月から「今日の自転車イタリア語」というコーナーがスタートしました。

 しかし、イタリア語というニッチな内容だけでつまらないと感じて、おまけとしてイタリア文化やイタリア自転車界にまつわる簡単な話も一緒に載せてみました。その名はまさに「つれづれイタリア〜ノ」。36回で「今日の自転車イタリア語」が終わりましたが、「つれづれイタリア〜ノ」は単独コラムとしてここまで続くとは私も想像できませんでした。そしていつも編集者の厳しい指摘を受けながら、本格的にジャーナリストをライフワークにするとは全くの想定外の出来事でした。

イタリアと日本の自転車界の8年間の歩み

 この8年間の間、イタリアと日本の自転車業界は大きく変わりました。まずはイタリアの例をみてみましょう。

 2013年にグローバル化の波はイタリアの自転車業界を飲み込もうとしていました。イタリアのプロチームは、国内のビジネスを重視するローカルスポンサーに支えられましたが、2009年に発生したリーマンショックの影響で、イタリア経済は大きな打撃を受けていました。

 さらに2010年に誕生したチーム スカイ(イギリス)は、想像のできないほどの豊富な資金を武器に、ツール・ド・フランスをはじめ、多くのレースで圧倒的な力を見せていました。

 結果として2012年にLiquigas(リクイガス)がメインスポンサーから降板し、2013年にイタリア籍を持つワールドツアーチームは、LAMPRE(ランプレ)のみとなりました。そのランプレも2017年にスポンサーを降板し、2018年からイタリア企業をメインスポンサーとするワールドツアーチームは消滅しました。

かつてペーター・サガン(スロバキア)も所属したリクイガス・キャノンデール Photo: Yuzuru SUNADA

 プロの世界は、今まで体験したことのない非常事態です。イタリア人選手と経験豊富なスタッフのディアスポラ(離散)が始まりました。ここからイタリアは自転車王国の威信をかけて、どのように過去の栄光が取り戻せるかという動きは活発になってきています。新規のレースの誕生や中断されたレースの復活など、具体的に自治体も支援に乗り出しています。

チームNIPPO、プロチームに昇格

 大門監督が率いるチームNIPPO。1985年に創設されたこのチームですが、日本人選手とスタッフの育成をモットーにヨーロッパに拠点を置き、主にUCIコンチネンタルチームとして活動してきました。2015年にUCIプロフェッショナルコンチネンタルチーム(現プロチーム)に昇格するという出来事は大きな話題になりました。

2015年にコンチネンタルチームに昇格したNIPPO・ヴィーニファンティーニ。石橋学、山本元喜、黒枝士揮の若手日本人が3人加入した(2015年撮影) Photo: Yuzuru SUNADA

 大門監督から声がかかり、私もチームプレゼンテーションやジロ・ディタリアなど、チームが活躍する大きな舞台に同席することができました。普段、経験できないような夢のような体験であり、みんなに共有するため、何度も記事にしました。

自転車に対する意識の変化

 イタリア国内における自転車に対する意識の変化についても、多くの記事を書きました。実はイタリアは自転車王国でありながら、自動車王国でもあります。近年までの国策は、高い収益が得られる自動車を中心とした道路づくりや街の整備が進められてきました。しかし、イタリアでも道路の幅は狭く、自動車ユーザーからしますと自転車は邪魔者でしかありませんでした。

 一方、環境汚染や渋滞がもたらす生活環境の悪化、肥満や体力の低下などといった健康被害が社会問題となり、公共交通手段を始め、自転車を人間的な生活を送るために必要なアイテムだという意識が高まってきています。その取り組みを何度も紹介し、イタリアへ帰国する度にその変化に驚いています。

新型コロナウイルスと自転車

 そして2020年新型コロナウイルスが到来し、世界の秩序を根底から変えました。ヨーロッパで未知のウイルスの前に医療がパンクし、ロックダウンという非常事態が発生しました。レースの中止、企業の倒産などが続き、今でもイタリア国内に暗い影を落としています。

 しかし、皮肉なことに自転車は再び注目を集めています。密集を避ける乗り物として、国が購入補助金に乗り出した結果、自転車の購入を求めた人たちによってショップの前に長蛇の列ができるほどでした。現在イタリアで手頃な自転車の在庫がなく、欲しくても買えないという「非常事態」が起きています。

最後に

 実はこのコラムで紹介した内容は、自分で全て決めてきました。好き勝手放題を許してくれた編集部の勇気に脱帽です。でも一つだけの信念を潰していませんでした。より多くの人に自転車の魅力を伝え、自転車が好きになるきっかけを作ればいいなという思いを噛みしめていました。

 Cyclistという素晴らしいサイトが無くなることで多くの人は悲しんでいると思います。違う形でまたみなさんに会えると思いますが、Cyclistの復活を心から祈っています。長い間、ありがとうございました。

Marco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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