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つれづれイタリア〜ノ<152>本当にレースを楽しんでいますか? イタリアにおける市民レースの新しいあり方

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 最近レース疲れしていませんか? サイクリングイベントに出ても物足りなさを感じませんか。実はイタリアでも同じ現象が起きています。今回、レースに感動を忘れた人々のためにイタリアの最新の取り組みを紹介します。

ワイン畑の中を疾走する「プロセッコ・サイクリング」の参加者  © Prosecco Cycling

ユニークなイベント内容が話題の「プロセッコ・サイクリング」

 新型コロナウイルス感染拡大を防止するために始まった厳しいロックダウン以前のイタリアでは、ツール・ド・おきなわ級の大型市民レースが年間200大会以上も開催されていました。何万もの人が参加する「ノヴェ・コッリ」や「ラ・ピナレッロ」、「マラトーナ・デ・ドロミテ」を頂点に、春から秋にかけて毎週末は何らかの市民レースが開催されていました。

 イタリアの市民レースにも豪華な優勝金が出るので、みんな本気です。しかし、過剰な競争がもたらす影響で事故が増え、新しい機材の購入で出費が増し、レースに参加する人々の間に疲れが出始めてきています。

 一方のサイクリングイベントはレースモードを捨て、美味しいものと美しい景色を楽しみながら参加できます。一回目の参加は楽しいですが、だんだんワクワク感が薄まり、何か物足りない。ここでうまくレースとサイクリングイベントをミックスし、ユニークな開催方法を次から次へ打ち出している自転車イベントが注目を集めています。それが毎年9月に開催される「プロセッコ・サイクリング」というレースです。

特徴的な3つのルール

 今年で17回を迎える「プロセッコ・サイクリング」レースは、イタリアを代表するスパークリングワイン「プロセッコ」の産地、ヴェネト州コネリアーノ・ヴァルドッビアデネ地域で開催される大会です。コースは市民レースとしては短めの100km。ユネスコに登録されている景色の中で走り、エイドステーションでワインが飲める人気の高いレースです。大会のルールには3つの特徴があります。

「プロセッコ・サイクリング」スタートの様子  © Prosecco Cycling

特徴その1:レース区間と非レース区間を設ける
 コース上で設けられた3つのヒルクライム区間のみのタイムで優勝を争います。スタートから5時間内にゴールラインを切れば、他の区間は自由に走っても良いということです。個人優勝のほかにチーム優勝のトロフィーもあります。

ヒルクライム区間のワンシーン  © Prosecco Cycling
ヴァルドッビアデネ の景色。2019年にユネスコの世界遺産として登録されました  © Prosecco Cycling

特徴その2:チーム戦を設ける
 各チームの結束力を高めるため、最低10人から構成されたチーム戦も行われます。チーム戦とは、3つのヒルクライムの合計タイムのほか、レーススタートから4時間45分以内に最初のチーム員から最後のチーム員までの間に、30分以内にゴールラインを通過し、最も多くの参加者を通過させたグループに贈られます。

チームゴールを果たしたグループ。みんなでゴールすれば、喜びは2倍  © Prosecco Cycling

 みんなで走ろう! みんなでチームジャージを見せよう! みんなでゴールラインを切ろう! という概念から生まれたカテゴリーです。

 優勝トロフィーのほか、最高級ランクのプロセッコワイン(Conegliano Valdobbiadene Prosecco Superiore DOCG)が贈られます。

“エル・ディアブロ”悪魔ことクラウディオ・キャプッチをゲストに向ける大会の様子 © Prosecco Cycling

チーム戦で与えられるプロセッコワインの本数

1位:66本
2位:60本
3位:54本
4位:42本
5位:30本


特徴その3:ビリーチーム賞を設ける
 2021年から新たな賞が設けられました。それが「ビリーチーム賞」。3つのヒルクライム区間で最も遅い10人のメンバーの平均値の合計が最も悪かったチームが、この特別賞を獲得します。チームには、ワインの供給と地元産の巨大なサラミ(ソプレッサ)が報酬として与えられます。そのほかマリア・ネーラ、黒色の記念ジャージも10人分贈られます。

ビリーチームに与えられる巨大なサラミ、ソプレッサ。ヴェネト州にしかないです  © Prosecco Cycling

 マリア・ネーラとは、遅くても完走できた! えらいぞ! の意味を込めてもっとも遅い完走者に贈られるジャージで、名誉のあるジャージです。もともと戦後のジロ・ディタリアで生まれ、2019年に復活。当時NIPPO Vini Fantiniに所属していた初山翔選手も2019年に獲得したジャージです。

 イタリアの市民レースは変化し、戦う場所としてだけでなく、人と人をつなぐ場所としてシフトを試みています。2021年の大会は新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で参加人数は2500人に制限されていますが、来年以降、元通りに戻るだろうと期待されています。そしてワインを片手にゴールラインを切る多くの人たちを見ながら、仲間と「乾杯」と言える感動をみんなが心待ちしています。

それぞれの思いでゴールを切る参加者。みんなが笑顔  © Marco Favaro
ゴールで抱き合う参加者。新型コロナウイルス感染拡大の影響で見られなくなった光景です  © Marco Favaro

 さて、次回は最後のコラムとなります。みなさまに感謝の気持ちを込めて、8年間続いた日本とイタリアの自転車の歴史を振り返りたいと思います。

Marco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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