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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<379>再建進む古豪の戦いやいかに コフィディス、モビスター 2021チーム展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 数回に分けてお届けしている2021年シーズンのトップチーム展望。今回はコフィディスとモビスター チームを見ていく。開幕からの勝利は1つながら、ここまで好調を維持しているコフィディスと、スペイン唯一のUCIワールドチームとして意地を見せたいモビスター。プロトン屈指の伝統チームであること、そして次のステージへのステップアップへと動き出している点が、両者の共通項として挙げられる。

体制を変えながらチームの浮上を目指すコフィディス(左)とモビスター チーム。ともに調子を上げて活性化する今季の戦いへ果敢に挑んでいる Photo: Cofidis, Solutions Crédits , BettiniPhoto

戦力整備が結果に直結 コフィディス

 例年と比較してもスタートダッシュに成功したイメージのコフィディスの戦いぶり。すっかりチームリーダーとなったクリストフ・ラポルト(フランス)が、ヨーロッパでのステージレース開幕戦であった「エトワール・ド・ベッセージュ」(フランス、UCIヨーロッパツアー2.1)の第1ステージで優勝。チームに今季初勝利をもたらしている。この大会では2日間リーダージャージを着用したほか、ステージ上位フィニッシュを連発。最終的にポイント賞を獲得し、彼自身にとっても快調な滑り出しとなった。

パリ〜ニースではクリストフ・ラポルト(先頭右)が2度のステージ2位。ビッグレースでの勝利も視野に入ってきている ©︎ A.S.O./Fabien Boukla

 チームとしての充実度の高さは、3月14日まで開催されていたパリ~ニースでも発揮された。丘陵地帯での上りスプリントだった第6、第8ステージでラポルトが2位に入り、個人総合ではギヨーム・マルタン(フランス)が6位。さらには、再三逃げに加わったアントニー・ペレス(フランス)が山岳賞争いで他に大差をつける“圧勝”。地元フランス開催の重要レースで、ホームチームとしての責務をきっちりと果たしている。

 決して派手さはないものの、着々と結果につなげることができている。戦力が整っていることが、何よりの証拠といえるだろう。

適所に配備できるエースクラスの充実

 1997年にトップシーンに参入し、今に至るまでツール・ド・フランスを筆頭にビッグレースでは常連。近年では、2018年にチームの再建プロジェクトがスタートし、内部の改革を断行。首脳陣が変わるとともに、より高いレベルで勝負できるチームづくりを進めている。その一端には、2020年シーズンのUCIワールドチーム復帰も挙げられる。

 そうした“血の入れ替え”は、少しずつ実を結びつつある。上位戦線で赤と白のジャージが目立つ機会が増えていることを見られるあたりは、レースを追う我々にとって最も実感しやすい部分だといえよう。

パリ〜ニースに臨んだコフィディスの選手たち。チームとして好調さが目立っている ©︎ A.S.O./Fabien Boukla

 その筆頭格となったラポルトは、純粋なスプリンターというにはスピードに劣るが、上り基調や混戦となったレース展開の中から抜け出すセンスはプロトン随一。前述の1勝に加えて、今年は大舞台での活躍も期待できるところまで力を伸ばしてきた。タイムトライアル能力も高く、コースレイアウト次第では短期間のステージレースでも総合争いに食い込めそう。

 グランツールでの総合成績は、マルタンに託される。すでにステージレーサーとしての地位は確立できており、今年狙うところはツールの個人総合トップ10入り。一昨年は同12位、昨年は11位としているが、あとは3週間を通して大崩れせず戦い抜くことができるかだけにかかっている。もっとも、昨年のツールでは大会中盤まで個人総合3位を走った経験もあり、マイヨジョーヌ戦線の空気感を知っているあたりはこの先の強みとなるだろう。

 3年前のブエルタ・ア・エスパーニャでは首位のマイヨロホを着たこともあるヘスス・エラダ(スペイン)も、もちろん元気。チームの浮沈のキーマンといわれた時期もあるが、力のあるメンバーがそろった今、ベテランとしてのリーダーシップ発揮が求められる。今季は今のところ、ワンデーレースを中心に調子を上げている段階だ。

エーススプリンター、エリア・ヴィヴィアーニの復調が待たれる。昨シーズンは未勝利。久々の勝ち星を挙げたい Photo: Cofidis, Solutions Crédits

 こうなってくると、待たれるのは絶対的エーススプリンター、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)の復調となる。大きな期待とともにチーム合流を果たした昨年は、まさかの未勝利。自身が望み、チームが応じる形でそろえたリードアウトマンの走りは堅実なだけに、あとは勝負を決める立場にあるヴィヴィアーニ自身のコンディションアップにかかっている。

 パリ~ニースでのアシストぶりが光ったシモン・ゲシュケ(ドイツ)や、経験豊富なネイサン・ハース(オーストラリア)といった選手たちも、チームを押し上げる貴重な存在として押さえておきたい。

コフィディス 2020-2021 選手動向

【残留】
ピート・アレハールト(ベルギー)
フェルナンド・バルセロ(スペイン)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア)
シモーネ・コンソンニ(イタリア)
ニコラ・エデ(フランス)
エディ・フィネ(フランス)
ネイサン・ハース(オーストラリア)
ヘスス・エラダ(スペイン)
ホセ・エラダ(スペイン)
ヴィクトル・ラフェ(フランス)
クリストフ・ラポルト(フランス)
ギヨーム・マルタン(フランス)
エマヌエル・モラン(フランス)
アントニー・ペレス(フランス)
ピエールリュック・ペリション(フランス)
ファビオ・サバティーニ(イタリア)
ケニース・ファンビルセン(ベルギー)
アッティリオ・ヴィヴィアーニ(イタリア)
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)

【加入】
トム・ボーリ(スイス) ←UAE・チームエミレーツ
アンドレ・カルヴァーリョ(ポルトガル) ←ヘーゲンズバーマン・アクセオン
トマ・シャンピオン(フランス) ←ブールカン=ブレス アン(アマチュア)
ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク) ←ボーラ・ハンスグローエ
ルーベン・フェルナンデス(スペイン) ←エウスカルテル・エウスカディ
シモン・ゲシュケ(ドイツ) ←CCCチーム
レミ・ロシャス(フランス) ←NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス
シュモン・サイノク(ポーランド) ←CCCチーム
イエール・ワライス(ベルギー) ←ロット・スーダル

【退団】
ディミトリ・クレイス(ベルギー) →クベカ・アソス
ジェスパー・ハンセン(デンマーク) →リワルサイクリングチーム
マティアス・ルテュルニエ(フランス) →デルコ
シリル・ルモワンヌ(フランス) →B&Bホテルズ KTM
ルイス・マテマルドネス(スペイン) →エウスカルテル・エウスカディ
マルコ・マティス(ドイツ) →未定
ステファヌ・ロセット(フランス) →サンミシェル・オウベル93
ダミアン・トゥゼ(フランス) →AG2R・シトロエン
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー) →未定

得意の山岳で真価発揮へ モビスター チーム

 かたや、少々ゆっくりめに始動しているのがスペインの雄、モビスター チームである。

パリ〜ニースを走るモビスター チームの選手たち Photo: Vincent Kalut/BettiniPhoto

 本記執筆時点では今季未勝利。それでも、直近のパリ~ニースやティレーノ~アドリアティコでは力のある選手が少しずつ前方へと顔を出し始めており、ここからどうチームレベルを引き上げてくるかが見ものだ。例年、地元開催のボルタ・ア・カタルーニャ(3月22~28日)は上位戦線を走っており、今回もベストメンバーで臨む予定とあって、このあたりから結果を出し始めるのではないだろうか。

 昨年は、イレギュラーなシーズンだったとはいえ、チームとして2勝にとどまった。個人単位で見れば、エンリク・マス(スペイン)がツールとブエルタで連続して個人総合5位に食い込むなど、ビッグレースでも一定の成果を上げたが、これまで築き上げてきたものを考えれば、優勝争いを演じてこそのチームであることは確か。今年はチームのお家芸である、山岳での戦いを中心に勝機をモノにしていきたい。

“ポスト・バルベルデ”急務 世代交代とともに国際色豊かに

 1980年のチーム発足から、幾度かチーム名を変えながら現体制を迎えている。そうした中で、チームは過渡期に差し掛かっており、かつてほどの派手な活躍が潜んでいる要因とみることができる。

チームを牽引するアレハンドロ・バルベルデ。東京五輪へ高いモチベーションを保っている Photo: Luca Bettini/BettiniPhoto

 長年チームを牽引してきたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)は、4月に41歳となる。いまなおレース展開を読む勘は冴え、かつてほどの登坂力とスピードとはいかずとも狙ったレースできっちりまとめてくるあたりはさすが。彼自身はこれまで通り、アルデンヌクラシックを走り、その後はグランツールへとフォーカスし、加えて今年は東京五輪での金メダルも視野に入れる。40歳を超えても走り続けるモチベーションの1つが五輪だとしており、東京五輪後の動向は流動的であることを本人は認めている。

“ポスト・バルベルデ”の一番手と目されるエンリク・マス。グランツールでの好成績が求められる立場にある © PHOTOGOMEZSPORT2020

 ただ、いつまでもバルベルデに頼っているようだと、チーム状態は決して良いとは言えない。急務となる“ポスト・バルベルデ”に向けては、エンリク・マスと今季移籍加入のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)を擁立していくこととなる。エンリク・マスは前述の通り、昨年のグランツールでは連続して上位入りを果たしたが、ツールに関していえば序盤に苦戦をしながらも、尻上がりに順位をアップ。結果としてトップ5に入ったこともあり、修正力が評価された。3年前にはブエルタで総合表彰台を経験した逸材だけに、求められるものは必然的に高くなる。3週間通して高いレベルを維持できるかが最大のテーマになる。

 一方のロペスは、クライマーとしてはプロトン屈指の力であることは証明済み。グランツールの総合表彰台も経験しているが、頂点に立つにはタイムトライアルをいかにクリアするかがカギになる。加入1年目の今年はエンリク・マスとツールで共闘する見通しで、コンディションもフランスでの3週間にピークが来るよう調整する。昨年のジロ・デ・イタリアで激しい落車に見舞われ、けがの回復をしばらく優先してきたが、4月にはレースシーンに戻ってくる予定になっている。

若手から中堅へと移りつつあるマルク・ソレル。今シーズンの走りが今後のキャリアにも影響を与えそうだ © PHOTOGOMEZSPORT2020

 数年にわたって有望株として名が挙がるマルク・ソレル(スペイン)が今年、どんな方向性でシーズンを送るのかも気になるところ。グランツールで総合を狙うと目された昨年は、ツール、ブエルタともに上位進出を逃した。ブエルタではステージ勝利を挙げており、力があることは実証している。グランツールよりは1週間程度のステージレースへの適性が高いのではといった見方もあるが、28歳となる今シーズンの走りが重要な指標となってきそう。

 さらには、進む世代交代の象徴となる若い選手たちの成長にも期待。パリ~ニースでは、マッテオ・ヨルゲンセン(アメリカ)が奮闘し、個人総合で8位に食い込んだ。山岳路線だけでなく平坦系の強化も進んでおり、今季加入のイバン・ガルシア(スペイン)は北のクラシックでトップタレントとなる可能性を秘める。これまで自国ライダーが多かったチーム編成も、情勢の変化に合わせて国際色豊かに。上りに強いグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア)は即戦力の1人に数えられる。

モビスター チーム 2019-2020 選手動向

【残留】
フアンディエゴ・アルバ(コロンビア)
ホルヘ・アルカス(スペイン)
エクトル・カレテロ(スペイン)
ダリオ・カタルド(イタリア)
ガブリエル・クレイ(イギリス)
イニーゴ・エロセギ(スペイン)
イマノル・エルビティ(スペイン)
ユーリ・ホルマン(ドイツ)
ヨハン・ヤコブス(スイス)
マッテオ・ヨルゲンセン(アメリカ)
ルイス・マス(スペイン)
エンリク・マス(スペイン)
セバスティアン・モラ(スペイン)
マティアス・ノルスゴー(デンマーク)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)
アントニオ・ペドレロ(スペイン)
ホセ・ロハス(スペイン)
エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア)
セルジオ・サミティエル(スペイン)
マルク・ソレル(スペイン)
アルベルト・トレス(スペイン)
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
カルロス・ベローナ(スペイン)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)

【加入】
イヴァン・ガルシア(スペイン) ←バーレーン・マクラーレン
アブナー・ゴンサレス(プエルトリコ) ←テレコム・オンクリマ・オセスコンスト(アマチュア)
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア) ←アスタナ プロチーム
グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア) ←ボーラ・ハンスグローエ
ゴンサロ・セラーノ(スペイン) ←カハルラル・セグロスRGA

【退団】
エデュアルド・プラデス(スペイン) →デルコ
ユルゲン・ルーランツ(ベルギー) →引退
エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン) →アンドローニジョカトリ・シデルメク

今週の爆走ライダー−アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 パリ~ニースで獲得した山岳賞は、しばし抱えていたモヤモヤを晴らす良い薬になった。

昨年のツール・ド・フランスでの悪夢を払拭し、パリ〜ニースでの山岳賞を獲得したアントニー・ペレス ©︎ A.S.O./Fabien Boukla

 話は昨年の8月にさかのぼる。自身4度目のツール出場を果たし、持ち前の積極性で大会序盤のステージをこなしていた。第3ステージでは逃げに入り、着々と山岳ポイントを獲得。このステージを走り切れば、マイヨアポワに袖を通すことも決まっていた。

 そんな彼に事件が起きた。パンクトラブルでチームカーへと下がったのち、集団復帰を図っているところで他チームの車両と接触。その勢いで、コース脇の岩壁に飛ばされてしまったのだ。2本の肋骨を骨折し、肺も損傷。膝と背中には数十針縫合するほどの切り傷ができた。

 いまも背中に残る傷跡は気になることがあるという。どこかコンプレックスのように感じてしまうこともあった。それでも、パリ~ニースでマイヨアポワへのリベンジができ、悪い記憶は払拭できるような気がしている。

 実は、ツールでの負傷後に入院していた病院のベッドで、「マイヨアポワへのリベンジはパリ~ニースで」と心に決めていたのだとか。戦前から、山岳賞の意味合いが他の選手とはまったく異なっていた。ジャージ争いのライバルと点差が広がっても、ポイント獲得に執着していたのは、そんな理由からなのだ。

ツール・ド・フランスでのクラッシュ後、パリ〜ニースでの山岳賞にフォーカスしていたアントニー・ペレス。強い意志がジャージ獲得への執念となった ©︎ A.S.O./Fabien Boukla
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー チーム展望2020-2021 ロードレース 週刊サイクルワールド

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