山下晃和さんの実走リポート<後編>グラベルキャンプツーリングのアイテム選びとコツ
旅サイクリストの山下晃和さんが沖縄でグラベルロードに乗り、キャンプツーリングに挑戦、全3回の記事でその旅の過程を振り返ります。最終回はグラベルキャンプツーリングをするにあたり、どのような点を意識してアイテムを選び、荷造りしたのか。そして沖縄ならではの食について紹介します。
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沖縄やんばるグラベルツーリングの最終回は、自転車キャンプのコツや沖縄ならではの食について書きたい。
同じキャンプ場に2日間滞在することはあまり好きではないが、今回はグラベルを走ったり、長い距離を楽しんだり、荷物を置いておく場所にしたり、有意義だった。
また、山の上だったので、毎度スーパーへ買い出しに行くだけでトレーニングになるのもいい。
キャンプ場には自動販売機があったので、飲み物はそこで買えた。沖縄ではよく飲まれているさんぴん茶の缶もあった。
キャンプアイテム選びのコツ
今回の持ち物は、とにかく軽量化を意識した。パーゴワークスのニンジャテント、クラミットのインフレータブルマット、ナンガのスリーピングバッグ、これらがキャンプに必要最低限の3種の寝具。季節や趣向によってハンモック、ツェルト、タープなどに変えてもいいし、マットやスリーピングバッグも、夏ならばもっと軽いものでいい。
次に、暗い中での行動するのに必要な明かり類もあると便利だ。ソーラーパフLEDランタン、Knogのヘッドランプ。最後は生活に必要な衣類、スクラバウォッシュバッグ(防水バッグや着替えの入れ物として)、身支度用ポーチ、カギ、輪行バッグ、最小限の工具、スマホ充電器。トータルで9.4kgだった。スクラバウォッシュバッグは洗濯ができるバッグなので長期の旅にはオススメだ。
バイクパッキングのコツ
撮影のための一眼レフカメラとカーボンの三脚等の撮影機材が2kg近く追加されたが、それがなければさらに軽量化できた。撮影機材以外をうまくRESTRAPのサドルバッグ 、フレームバッグ、フロントバッグに詰めていく。衣類はスタッフサックに入れずそのままに押し込むほうがいい。
また、金属パーツなどの重い荷物を身体に近いところに詰めると、走行中にバッグ類が振られなくて済む。今回は、フロントバッグにテント、サドルバッグに寝具、衣類などを入れた。小さくても意外と重たいスマホの充電池類は、フレームバッグに入れる。走るときはここに財布、スマホ、日焼け止めなどもインする。

キャンプツーリングのギア選びで1番気になるのはテントのポールの長さだ。これが短ければフロントに積むこともできるが、長いとフレームにくくり付けるか、サドルバッグ に入れなくてはならない。
例えば、モンベルのムーンライト1テントはポールがかなり長いので、ドロップハンドルにマウントしたフロントバッグには入れられなかったが、ニンジャテントのポールは短めなのでフロントバッグに積載できる。使いたいテントによってハンドルの方を広くする手もある。これらは出発前に実際に自宅で積載してみて、試行錯誤を重ねて、自分の優先したいものから逆算して揃えていくといい。
帰りは名護から那覇まで自走
行きはバス輪行で来たが、帰りは自走にした。せっかくパッキングしたので、そのまま走行感を検証しながら走る。乙羽岳森林公園キャンプ場からは下りの連続、風が出ていたので少し肌寒かった。ブロッコリーのような山々をぬっている道は異国情緒たっぷりだ。名護の中心地まで来たら国道58号線を南下。右手には海が見えるので気持ちがいいが、車がやたらと多い。
県民が利用するメインの道だから仕方ない。もし、帰り道にもグラベルがあれば走ろうと思っていたが、民家に繋がっていたり、紹介していいか確認が取れなかった道が多かったので、あとは自分の目と足で確認してほしい。
途中、恩納村にある老舗フードコーナーであるシーサイドドライブインでサンドイッチを買って、海を眺めながらランチにしようと寄ったが、混んでいたので先を急ぐことにした。

沖縄の食事処はたくさんあるので心配することはない。沖縄そば、ちゃんぷるー、ハンバーガー、タコス、スパムおにぎり、ポーク玉子おにぎり、ステーキ、パン、サーターアンダギー、黒米など、本州ではお目にかかれない食べ物もある。沖縄そばは、中華麺に和出汁で作る日中合作の文化。名護と那覇でも少し違う。ハンバーガーやステーキなどの豪快な料理は、米軍の駐在員の影響で入ってきたアメリカの文化。それらが入り混じって、沖縄らしさを作っていて、とても面白い。また、前回書いたコーヒーも奥が深い。
恩納村から18kmある北谷の「GOOD DAY COFFEE」を目指すことにした。午後2時半がラストオーダーなのでギリギリになりそうだったが、グラベルロードのポテンシャルを試すにはちょうどいい。ギアを上げて、ペダルを踏んだ。読谷から嘉手納基地までの58号線は、じわじわと上りが続くうえにお店がなく、景色が変わらないので単調だ。キャンプ道具満載のバイクパッキングスタイルはそこそこキツイ。美味しいアイスコーヒーを想像して頑張った。
お店に着いたのは13時頃。なんとか間に合った。「自転車でまわっているんですか?」と店員さんに声をかけられて嬉しかった。急いだせいで、汗だくだ。ここではお目当てのGOOD DAY BREAKEYを注文。お店の外の席には外国人のお客さんが楽しそうにランチをしていた。北谷は近隣に米軍ハウスも多く、駐在員が多く住むエリアなのだ。近くにはフードトラックも出ていて、美味しいだけでなくボリュームもすごい。ここのエリアのお店はサイクリストにはありがたい。エネルギーチャージポイントに最適だ。

北谷から那覇までは下り基調になる。車通りがさらに多くなるので慎重に走り、手信号等は忘れずに。那覇の市役所がある中心地と空港までは4.5km。羽田空港と違って簡単にアクセスできるのでスムーズだ。いつもなら一番最後の便で東京に戻るのだが、新型コロナウィルス関連で飛行機の便数も減っているので1本前の飛行機しか取れなかった。なので夕焼けが美しい空港は次回にお預けだ。
3日目の距離は、羽田空港から自宅までの距離を足して約110km、全工程で271km走った。今回のようにキャンプを利用して、人が密に集まるようなところへは寄らず、なるべくマスクを着用して、海、山などの自然を見ながらお弁当でも買ってのんびりするツーリングであれば、感染拡大も心配ない。ぜひ、緊急事態宣言が解除されたら、飛行機輪行を利用したやんばるキャンプツーリングにトライしてみてほしい。きっとカラフルな沖縄に癒されるはずだ。
ーおわりー

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net。