山下晃和さんの実走リポート<中編>満天の星空を眺め、亜熱帯の極上未舗装路を走る 沖縄やんばるグラベルキャンプツーリング

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 旅サイクリストの山下晃和さんが沖縄でグラベルロードに乗り、キャンプツーリングに挑戦、全3回の記事でその旅の過程を振り返ります。第2回目はキャンプとグラベルライドのお話。キャンプ初心者に向けたハウツーは必見です。

到着した名護バスターミナル近くにある球場は、プロ野球チームの北海道日本ハムファイターズのキャンプ地。今年は新型コロナウィルスの関係で無観客キャンプになって立ち入り禁止に Photo: Akikazu YAMASHITA

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飛行機輪行からバス輪行で一気にやんばるへ

 前回は沖縄にどうしても行きたかった理由について書いたが、今回はいよいよ空港からやんばる地域へと移動する。やんばるは漢字だと山原と書き、名護以北、亜熱帯の植生が広がる自然豊かなエリアのことをいう。

 空港からやんばる地域の名護までの距離は約70kmだ。クロスバイクで走っても5時間くらいで着く。4年前も仕事でも何度か走ったことがあったので、バスにて輪行することに。空港のインフォメーションセンターで時刻表見ると、新型コロナウィルスの関係でバスの便数がかなり減っていた。少し待つことになるが、ちょうどお昼ごろに名護バスターミナルまで行く高速バスがあると分かり、空港のコンビニで買ったポーク玉子おにぎりを頬張った。沖縄では定番だが、本州だとなかなかお目にかかれない。

 空港前は、プロ野球のキャンプの最中だったので球団の旗がはためいていた。春を通り越して、夏のような気候が気持ちいい。日中は20℃近いので、長袖のシャツくらいで過ごしやすく、東京で厚着をしていた日々がウソのようだ。

 衣類が少ないと自転車キャンプは圧倒的にラクだ。キャンプを始めるのであれば夏が一番いい。分厚い寝袋も必要なくなり、マットだけで寝られるし、日が長いのでランタンやヘッドランプなどの電池を要するものも小さくて済むからだ。

 自転車も荷物も解体せずにバスの下の大型の荷物置き場に積載できる。終点の名護バスターミナルまでは約1時間半。北に向かうバスでは進行方向を向いて左側が海景色。うっかり反対側に座らないように気をつけたい。

自宅の扉から出て約6時間でやんばるの森に

 名護バスターミナルから予約をしている乙羽岳森林公園キャンプ場までは約11km。ほぼ上りになるので約1時間はかかるものの、飛行機輪行すると自宅から約6時間で、やんばるの森の中のキャンプ場に到着する。

名護市にあるお店。以前は巨大なハンバーガー屋さんだったキャプテンカンガルーは移転したらしく、タコライス屋専門店になっていた Photo: Akikazu YAMASHITA
こちらのメニューはスペシャルタコライス900円。味もボリュームもスペシャルだ Photo: Akikazu

 真冬の東京からまるで夏のようなモリモリの森に一気にワープする感覚は不思議だ。自分の愛車で自分が好きなキャンプ場に1日で行けるのは、自転車旅ならではの特権だろう。モーター付きのバイクや車も持っているが、さすがに1日でここまで来るのは不可能である。

タピックスタジアム名護の裏にはビーチになっていて、その横には砂混じりの未舗装路があって、相棒のグラベルロードのキャノンデール「トップストーン2」も喜んでいる。南国な雰囲気 Photo: Akikazu YAMASHITA
今回の相棒はトップストーン2。乙羽岳森林公園キャンプ場まではほぼ上り。キャンプ道具が満載だとそこそこハード。それでもギヤ比がカンペキなので坂道もじわじわと進んだ Photo: Akikazu YAMASHITA

インターネットで予約、決済できるお手軽キャンプ場

 キャンプ場は本部町と今帰仁村の境界にある。そのうえ山の頂上にあるのためアクセスはハード。荷物は極力少なくしたい。シングルバーナーや焚き火などの火器類はいっさい持たず、夜ご飯はスーパーでお弁当やお惣菜を買ってキャンプ場で食べることにした。

キャンプ場に着くやいなやパーゴワークスのニンジャテントを立てる。前室用のポールを忘れたので、その辺に落ちていた木の棒で張り綱を引いて対応した Photo: Akikazu YAMASHITA

 シングルバーナー、クッカーなどの調理器具セットを持ちたいという人も多いが、初心者キャンパーは、(気温が低いときを除いて)持っていかない方がいい。燃料となるOD缶は飛行機では預け荷物でも、持ち込み手荷物でも禁止されている。現地調達が必要になったり、金属製品は積載時にナイーブになったり、コンパクトに収納したりが難しいからだ。

 ここのキャンプ場は受付はあったが、管理人は常駐ではないようだった。インターネットで予約してクレジットカード決済。結局、着いたときに電話で話しただけで誰も来なかったので、気楽でいい。

キャンプ場は芝生はほとんどなく、土。木々に囲まれているのでハンモックでも大丈夫そうだった。各所に椅子やテーブルが置いてあるので、持参する必要もない。温かいシャワーも出て、シャンプー、ボディソープ付きは感動した Photo: Akikazu YAMASHITA

 新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、今後もこうしたキャッシュレスでセルフチェックインのキャンプ場が増えるだろう。沖縄にもキャンプブームが来ているようで、平日なのにほかに3人ほどソロキャンパーがいたのには驚いた。

 午後7時頃になり、すぐ上にある展望台に行くと今帰仁村の夜景が見られ、テン場(テントを張った場所)の上には満天の星空が広がっていた。山のキャンプ場は静寂が心地いい。海のキャンプは潮騒が心地いい。沖縄にはどちらのキャンプ場も存在する。

キャンプ場の上にある展望台から眺める今帰仁村の夜景 Photo: Akikazu YAMASHITA

 1日目の走行距離は自宅から羽田空港も足して46km。久々にキャンプ道具満載の自転車を漕いだので、あっという間に夢の中へ。

グラベルキャンプツーリングはその土地の自然に出会える

 2日目は、やんばるのグラベルロードへ。さらに北上し、国頭村の田嘉里(たかざと)という場所を目指す。国頭は沖縄本島の最北端の辺戸岬がある。村域の95%が森林に覆われた、やんばるの中心部だ。本島最高峰の(標高503m)与那覇岳や比地大滝などのパワースポットもある。かつて春先に雑誌の取材で来たときに全身ブヨに刺されて発熱した苦い思い出もある。手つかずの自然が多い証拠だ。

衣類などの荷物やキャンプ道具はテントの中に入れておいて、身軽で出発 Photo: Akikazu YAMASHITA

 名護のサイクリングガイドでもある宮里さんに教わった通り、バス停から東に曲がり、進んで行くと沖縄らしい亜熱帯の森に抜けるグラベルがあった。スマホで検索するなら「やんばる酒造」と入れるといい。その先の田嘉里川沿いに続くルートだ。

 グラベルツーリングは、舗装路だけのツーリングとは違って、その土地ならではの自然に出会えるのがいい。知人の家に遊びに行ったら、いつも玄関先でさようならをしていたところ、床の間まで入れてもらえるような感じだ。

屋我地のキャンプ場横にあるビーチ。沖縄の海の透明度はすごい Photo: Akikazu YAMASHITA
亜熱帯ならではの植生と美しい砂利道を進む。2月なのにTシャツ一枚で走れるのは最高だ Photo: Akikazu YAMASHITA

 また、凸凹の道で暴れる車体を人馬一体となってコントロールする楽しさもある。心肺機能、脚の筋力と共にバランス感覚や積載の技術も必要になる。そこにキャンプも加われば、サバイバル能力も身につくだけではなく、旅の審美眼が養われる。

石がそれほど大きくなく走りやすい極上のグラベル。キャノンデールのトップストーンはこういったグラベルに最適なバイク。もう少し太いタイヤにしたらキャンプ道具もさらに積載できる Photo: Akikazu YAMASHITA
田嘉里川沿いに走っていくと、最後はベンチとテーブルのある広場に出た。58号線沿にコンビニがあったので、沖縄のおにぎりとさんぴん茶を買って、持ってくるべきだった Photo: Akikazu YAMASHITA
往復で3kmくらい。さほど長くはないが、さらに奥に進むとこんな素敵な場所が。水の流れる音に癒された Photo: Akikazu YAMASHITA

 極上のグラベルを走ったあとは国頭村からぐるっと東側まで回って、カフェ「HIRO COFFEE FARM」のある東村までおよそ32km自転車をこぐ。途中で石山展望台という峠を越えるので初心者にとっては少々ハードかもしれない。車通りが少なくて急角度で上がっていくので、ヒルクライムが好きな人はチャレンジしてほしい。

日本とは思えない赤土に埋もれたパイナップル畑。かつて自転車で旅をしたパラグアイに似ている Photo: Akikazu YAMASHITA

 高江という地名に入るとお店の看板が見えてきた。ピンク色の可愛らしい建物が目立つ。過去に何度か訪れたときは、台風で建て直しをしていたり、たまたまお休みだったり、入ることができなかったので、数年越しの夢が叶った(行く前に電話をした方がいいかもしれない)。

 沖縄は国内でも珍しくコーヒーが栽培できる地(コーヒーベルトという赤道に近くて肥沃な土地がある地域に限定される)で、農園も点在している。国産コーヒーは希少価値が高いので、都内ではなかなか飲めない。

沖縄らしい青空に映えるピンクの建物。沖縄カフェ巡りライドも楽しいはず Photo: Akikazu YAMASHITA
HIRO COFFEE FARMで待望の一杯を飲む。疲れが吹っ飛んだ Photo: Akikazu YAMASHITA

 ここのオリジナルのコーヒーは、ブラジルの豆に10%の沖縄産の豆がブレンドされているらしい。2種類の味があった。濃い方を選んだものの、苦味がほとんどなくお茶のようにスッキリしていて優しい。

 沖縄北部、中部に個人経営のカフェが多く、山の上や街の外れにあるところは絶好の自転車スポットだ。自転車でカフェ巡りツーリングもいいだろう。

 キャンプ場に戻る頃にはすっかり夜になっていた。2日目の走行距離は118km。荷物がないとグラベルロードはそこそこのスピードが出る。峠越えをしなければもっと距離が伸ばせたはずだ。今度200kmに挑戦してみよう。

キャンプ場に戻ると、辺りは真っ暗になっていた。フレームバッグにKnogのヘッドライトを入れておいて正解だった
テントからの眺め。あとはダラダラと過ごして身体を休めるだけ Photo: Akikazu YAMASHITA

ーつづくー

山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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