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昼間岳の地球走行録<74>サイクリストには分かりづらい、コロニアル都市の迷路のような地下道

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 中南米には、スペイン植民地時代の面影を色濃く残す、コロニアル都市と呼ばれる街が数多く存在する。その風景はまるでヨーロッパのようだった。コロニアル都市の多くは世界遺産になっており、その街並みはとても綺麗に保存されていた。ただそれを知ったのは実際に見たからであって、メキシコを走る前は中南米にこれほどヨーロッパのような風景が広がっているとは思わなかった。

グアナファトの中心部への入り口はトンネルだ。地下道は迷路のようになっている Photo: Gaku HIRUMA

中南米に多く存在するコロニアル都市

 正直に言うと、中南米にはコロニアル都市が多いので、慣れてくるとそこまでコロニアル都市の風景に心を動かされることは少なくなる。それでも一番最初に訪れたメキシコの都市サカテカスの感動は忘れられない。

 サカテカスを目指して走っているとき、町まであと5キロの標識があったのに全く町がありそうな気配はなく、山の中の坂道をひたすら上っていた。ようやく尾根に出てサカテカスの町の全貌がつかめた。すり鉢状の山を囲むように町が発展しており、すり鉢の一番下がセントロと呼ばれる町の中心らしかった。セントロに下るのはいいのだけれど、物凄い傾斜で更に歴史を感じさせるゴツゴツの石畳が敷かれていた。

歴史を感じるゴツゴツした石畳は、フルパッキングの自転車にはとても辛い Photo: Gaku HIRUMA

 海外では石畳で舗装された道路がある町は珍しくないのだけど、これほどまでに歴史を感じるものは初めてだったので、下るのに躊躇してしまう。地元の人にこの先が本当にセントロで間違いがないか確認して、いざ下り始めるも、石畳のせいで案の定自転車が壊れるのではないかというほどガタガタして、思いっきりブレーキを引いても、なかなかスピードが緩まらず、何度も足で止めながら慎重にセントロへと降りて行った。

サカテカスの街並み。こんなヨーロッパのような町がメキシコにあるとは思わなかった Photo: Gaku HIRUMA

 やっとたどり着いたサカテカスの中心部は、石畳も先ほどのゴツゴツしたものとは打って変わって、艶々するほど美しかった。暖色系に彩られた昔ながらの石造りの建物がひしめくように立ち並び、とりわけ建物2階部分のバルコニーがヨーロッパらしさを醸し出していた。

 日本にも古い街並みがあるけれど、それとは全く別で、どちらかというとテーマパークのように、突然メキシコにヨーロッパの街並みが現れるといった感覚だった。商店も景観を壊さぬように、上手に建物の中に納まっている。そうした初めてのコロニアル都市を経験してからさまざまなコロニアル都市を訪れた。


イチオシはメキシコ・グアナファト

 カラフルな町や真っ白な町など、本当にさまざまな都市があったけれど、なかでも最も印象的だったのは、メキシコのグアナファトだった。

 グアナファトもかつては銀山で栄えた町というだけあって、山の中の盆地に造られていた。中心地に近づいてくると、ポップな配色のカラフルな可愛らしい家が増えてきて期待が高まる。ところが、中心に向かうメインの道路は、トンネルに入っていく。こんな中心地の近くにトンネルがあるなんて非常に珍しい。

カラフルなグアナファトの街並み。街を縫うように坂道と細い路地が延びている Photo: Gaku HIRUMA

 実はグアナファトは、昔の鉱山の地下水路や坑道などが無数にあり、それを今は道路として利用している非常に珍しい都市だった。それも近代的な無機質なコンクリート製ではなく、石造りのトンネルだ。トンネルの中はオレンジ色の照明で照らされてなんとも幻想的な雰囲気だった。天井部分には所々にアーチで支えられていて、歴史を感じさせる。

石造りでアーチになっているトンネルは歩道も多く、歩いて散策するのも楽しい Photo: Gaku HIRUMA

 ところがこの地下道は、初めて走るサイクリストには物凄く道が分かりづらい。まるで迷路のように至る所に地下道が延びている。時折空は見えたりして、どうやらようやくセントロ付近にいるとわかっても、今度は地上に上がる道が階段しかなかったりする。

 ただ、焦燥感はなかった。むしろこの迷路を十分に楽しんだ後で、ようやく地上に出るスロープを見つけた。そこは本当にセントロのど真ん中の広場に通じる通路で、いきなり喧騒の中に飛び込んで驚いた。

薄暗い地下道を抜けてようやく中心地にたどり着いた。車もなく皆がくつろぐ姿はまるでタイムスリップしたかのようだった Photo: Gaku HIRUMA

 色鮮やかな建物、薄暗い地下道からいきなり輝くばかりの太陽のもとに出て、車のない広場には大勢の人がでて、思い思いに楽しんいるのを見るとまるで自分がタイムスリップでもしてきたかのような感覚になる。

 ポップな色のコロニアルな建物と、街を縫うように坂道と細い路地が延びている。突然地下通路に降りる階段があったりと、これほどまで散歩を楽しめる町はほかにないと思う。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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