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昼間岳の地球走行録<73>自転車旅の不安を吹き飛ばした魔法の言葉「ジャンボ!」

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 「ジャンボ、ケン!! ハバリ?」(こんにちは、ケン!! 調子はどう?)。これは、僕が通っていた中学校で使われていた英語教科書の、最初のページに出てくるケニアから来た女の子の言葉だ。これを見たとき、英語の教科書なのになぜスワヒリ語で話しているのだろうと思ったものだ。そしてなぜマイナーな言語をわざわざ登場させるのだろうと。そこからの会話がどういう風に続いていくかは覚えてないけど、なぜか英語の教科書でスワヒリ語を話す女の子のことだけはよく覚えている。

道路にスワヒリ語で「POLE POLE」と書いてある。ゆっくりゆっくりの意味だ Photo: Gaku HIRUMA

自転車旅再出発の地、ケニア

 そのような記憶があるからか、僕はアフリカに来てからもしばらく「ジャンボ!!」というのが恥ずかしかった。恐らく英語圏の人に面と向かって「This is a pen!!」(これはペンです)と絶対言わないように、スワヒリ語で初めて習った単語なので、なんとなく胡散臭い気がしたからかもしれない。当時はまさかアフリカで本当にスワヒリ語を連呼する日が来るとは夢にも思わなかったのだけど、エチオピアで自転車のフレームが折れて一時帰国を余儀なくされ、自転車旅の再出発の地に選んだのがケニアだった。

 一時帰国の影響で旅の感覚が全くなくなっている中で、いきなりアフリカのケニアから走り出すのにはとても不安だった。空港ですべての荷物と自転車を受け取れたことに安堵し、外に一歩踏み出した瞬間、その涼しさに驚いた。ケニアの首都ナイロビが高原地帯にあるとは聞いていたけど、赤道直下のアフリカでここまで涼しいとは思わなかったのだ。

 空港から目当ての宿まではタクシーを使って移動した。アフリカ独特のにおい、ほこりと排気ガスの入り混じった空気に、働いているのか休んでいるのか分からない人々。なぜか地べたに座る人も居れば、どこに向かうのかわからないが、何もない道路上を人々が歩いている。

 その風景を見ながら宿に向かっていると、言い知れない不安が襲ってきて、ナイロビ滞在中もずっとまとわりついていた。実は一時帰国後の再出発の地を決めるとき、アフリカを走ろうかどうか迷った。それは無知から来る単なる不安だったのだけど、治安や宿、野宿ができるかどうかなど心配は尽きなかった。

旅の不安とギャップ

 僕が泊まったナイロビのホステルは高い塀と分厚い門に守られれていた。まるで外とは別世界のように綺麗で、塀と門がまるで外の世界は危険だよといっているようで、なおさら自転車を漕ぎだす気分を重たくさせた。

ナイロビにあるホステル。欧米人が良く利用するらしい。アフリカに居るとは思えない空間だった Photo: Gaku HIRUMA
ホステルの大きな門と高い塀。安全地帯を出てペダルを漕ぎ出すことがとても不安だった Photo: Gaku HIRUMA

 それでもなんとか出発して自転車で走ると、今まで不安に思っていた印象とは全く違ったものを感じさせた。道行く人からスワヒリ語で「ジャンボ!!」と元気に挨拶してきてくれる。これがまぁ底抜けに元気で明るい印象を与えた。

 初めはその明るい挨拶にあっけにとられていたけど、そんな僕をよそにアフリカの人たちはとてもフレンドリーで、色んなところから声をかけてくれる。「ジャンボ!! マンボ!! ハバリ!!」(こんにちは!! 元気ですか!!)と声がかかると、こちらもつられて「ジャンボ!! ンズリ!!」(こんにちは!!元気です!!)と元気よく答えるようになっていった。

自転車で走っていると「ジャンボ!!」と元気よく声をかけられる Photo: Gaku HIRUMA

 多くの人が目があうと親指を突き出したグーのポーズか、親指と小指を出したアロハポーズをしてくれる。女の人もマサイの人もニコニコしながやってくれてとても格好いい。道路も綺麗で路肩も広い。交通マナーも悪くないし、誰も「マネーマネー」と言いながら追いかけてこない。一気にアフリカへの不安が吹き飛んでいく。

 ケニアの首都ナイロビのごちゃごちゃとした町を抜けると、穏やかな風景が広がっていた。小さな町にもレストランや商店などもあり、とても走り易かった。ケニアではスワヒリ語とともに英語も公用語になっているため、郊外の村でも英語でも簡単なコミュニケーションがとれて嬉しかった。

心配をよそにナイロビを出ると、すぐに穏やかな風景が広がった Photo: Gaku HIRUMA

 ローカルの小さい食堂ではスワヒリ語のメニューしかなかったけど、大抵主食とメインのおかずの牛肉か鶏肉かを選ぶ程度だったので、ある程度ご飯の名前を覚えればちゃんと食べたいのも食べれらたのも心強かった。

メニューはスワヒリ語表記だけのところも多いが、簡単に覚えられるので利用しやすい Photo: Gaku HIRUMA
ローカル食堂でもお米が食べられるのはサイクルストにとって嬉しい限りだ Photo: Gaku HIRUMA

 アフリカ走行の序盤は人々の陽気さ、スワヒリ語のパワーにかなり救われ、一気に楽しいものになった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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