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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<375>ジロ・デ・イタリア2021出場チーム決定 コンタドール氏運営チームが初出場を決める

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 前回お届けしたツール・ド・フランス2021出場チーム決定に続き、5月に開催されるジロ・デ・イタリア2021年大会に挑むチームも出そろった。同大会を主催するRCSスポルトが2月10日に発表し、その中には19のUCIワールドチームに加えて、アルベルト・コンタドール氏が運営に携わるイタリア籍のエオーロ・コメタら4つの推薦出場チームも明らかに。そこで今回は、イタリアでの3週間に臨む全23チームをおさえるとともに、先ごろ発表された開幕数ステージの解説をしていく。

ジロ・デ・イタリア2021に出場する全23チームが決定。5月8日のトリノ開幕へ向けて各チームの準備が加速していく Photo: Gian Mattia D'Alberto/LaPresse

イタリア籍の3チームがワイルドカード選出

 ジロもツールと同様に、近年は18ないし19のUCIワールドチームの自動的な出場決定をベースに、残る枠をセカンドディビジョンにあたるUCIプロチームが主催者推薦を待つ形が通例。本来であれば22チームがスタートラインにつく資格を得るが、2021年シーズンに限って出場チームを1チーム増の全23チームとする。(前回の本コーナー参照

ワイルドカードはイタリア勢3チームが選出された(写真は2020年大会よりイメージ) Photo: Gian Mattia D'Alberto/LaPresse

 そうした条件のもと決定したジロ出場チーム。もちろん、今季のUCIワールドチーム(19チーム)はスムーズに出場が決定。加えて、昨年のUCIワールドランキングにおいてセカンドディビジョンチームとして最上位(12位)に入ったアルペシン・フェニックスもUCI規定に基づき自動的に出場が決まった。

 残る3つの枠は、主催者が選出する権限を持つ。選出されたのは、バルディアーニ・CSF・ファイザネ、エオーロ・コメタ、ヴィーニザブ・KTM。いずれもイタリア籍のチームが数少ない席をゲットした。

 バルディアーニ・CSF・ファイザネは、イタリア開催のワールドツアーレースでは常連チーム。ジロでもおなじみで、これまでは若い選手を次々と大会へ送り込んでいたが、今季からはジョヴァンニ・ヴィスコンティ、エンリーコ・バッタリーン(ともにイタリア)といった実績十分のベテランが加入して戦力アップ。メインスポンサーのバルディアーニヴァルボーレ社が、大会に出資していることも選出への大きなプラス要因になっている。

かつてのジロ王者、アルベルト・コンタドール氏が運営に携わるエオーロ・コメタが初出場を決めた Photo: EOLO-Kometa

 エオーロ・コメタは、今季からUCIプロチームに昇格。セカンドディビジョン1年目にしてジロ出場権をつかんだ。チームの母体となっているのは、脳卒中の認知と予防意識を高めることを目的に活動する「アルベルト・コンタドール財団」。脳の血管奇形が原因でレース中に倒れた経験を持つアルベルト・コンタドール氏が立ち上げた財団は、啓発活動と並行してヤングライダーの育成にも取り組む。過去にはエンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)を輩出しているが、チームとして大舞台へ挑戦するのがこれが初となる。2回のツール制覇をはじめとして7度グランツールの頂点を経験するコンタドール氏が運営に携わり、レース中の指揮を執るのがこれまたジロを勝った実績のあるイヴァン・バッソ氏。かつて大会を盛り上げた名選手が指揮官となって帰ってくる姿は、大いに注目が集まるだろう。なお、メインスポンサーのエオーロ社も大会への出資を行っており、こちらも選出に好影響を与えていたといえそう。

 ヴィーニザブ・KTMもジロでは常連。これまではなかなかビッグリザルトを得るところには至っていないが、今年こそはステージ優勝を実現したいところ。ストーブリーグ(移籍市場)では大幅なメンバー入れ替えを断行し、スプリンターのヤコブ・マレツコ(イタリア)らが加わっている。

ジロ出場を狙っていたアルケア・サムシックは惜しくも選外。総合エースのナイロ・キンタナはツール・ド・フランスにフォーカスすることを表明した Photo: Team Arkéa Samsic

 かたや、出場を望みながら選外となったチームの存在も。ナイロ・キンタナ(コロンビア)を総合エースに挑む姿勢を明らかにしていたアルケア・サムシックは、ジロ出場を逃してグランツールに関してはツールに集中する方針へ。2014年以来の個人総合優勝をもくろんでいたキンタナも、この決定を受けてツールにフォーカスすると宣言した。

 2017年以来4年ぶりの出場を狙っていたガスプロム・ルスヴェロも選出ならず。今年は、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)とイルヌル・ザカリン(ロシア)が加わり、戦力的には楽しみがあったが、グランツール参戦はお預けに。

 そして、イタリアチームの代表格の1つであるアンドローニジョカトリ・シデルメクも落選。この決定に怒りを表しているのが、チームマネージャーのジャンニ・サヴィオ氏。特に矛先を向けているのがヴィーニザブ・KTMの選出に関してで、自身のチームが2019年にはステージ1勝、2020年は再三の逃げを試みたことに対し、ヴィーニザブ・KTMはジロに出たところで何もしていないと指摘。また、同チームから禁止薬物陽性者が出ていることにも触れ、「不公平なシステムの中で取り組まなければいけないのなら、私はこの仕事を続けるべきかどうか疑問に思う」とコメント。これまでの大会への貢献度と今回の決定とが釣り合っていない悔しさを露わにしている。

 喜びと怒りとが交錯した今回の出場チーム決定。選出されたチームは大会へ向けて準備を進めていくこととなる。

ジロ・デ・イタリア2021 出場チーム

●UCIワールドチーム
AG2R・シトロエン(フランス)
アスタナ・プレミアテック(カザフスタン)
バーレーン・ヴィクトリアス(バーレーン)
ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
コフィディス(フランス)
ドゥクーニンク・クイックステップ(ベルギー)
EFエデュケーション・NIPPO(アメリカ)
グルパマ・エフデジ(フランス)
イネオス・グレナディアーズ(イギリス)
アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ(ベルギー)
イスラエル・スタートアップネイション(イスラエル)
ロット・スーダル(ベルギー)
モビスター チーム(スペイン)
チーム バイクエクスチェンジ(オーストラリア)
チーム ディーエスエム(オランダ)
ユンボ・ヴィスマ(オランダ)
クベカ・アソス(南アフリカ)
トレック・セガフレード(アメリカ)
UAE・チームエミレーツ(UAE)

●UCIプロチーム(2020年ワールドランキング最上位による権利獲得)
アルペシン・フェニックス(ベルギー)

●UCIプロチーム(主催者推薦)
バルディアーニ・CSF・ファイザネ(イタリア)
エオーロ・コメタ(イタリア)
ヴィーニザブ・KTM(イタリア)

10年ぶりのトリノ開幕

 出場チーム決定に先んじて、2021年大会の序盤3ステージの発表も行っている。

 今年の開幕地はイタリア北西部のトリノ。大会史上3回目の開幕地選出で、1度目はイタリア統一100周年だった1961年、2度目は同150周年にあたる2011年、そして今回は同160周年を記念する意味も込めての大会開幕となる。

ジロ2021年大会はトリノで開幕する ©︎ RCS

 開幕からの3ステージは、トリノが位置するピエモンテ州をめぐる。第1ステージは、トリノの街を走る9kmの個人タイムトライアル。続く第2ステージは、ストゥピニージからノバラまでの173kmで、平坦ステージにカテゴライズ。第3ステージはヴィエラからカナーレまでの187kmで、起伏の富んだコースレイアウトになるという。加えて、大会終盤の第20ステージでピエモンテ州へと戻り、ベルバニアがスタート地点になる。

 ちなみに、ベルバニアは現・個人タイムトライアル世界王者のフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)の出身地。このほどのトリノ開幕決定にあたってビデオメッセージを寄せ、昨年に続くジロ出場を明言。優勝が期待される第1ステージへの意欲も示し、「ピンクジャージ(マリアローザ)を再び獲りたい」と述べている。

 ジロ2021年大会は、5月8日に開幕する。

今週の爆走ライダー−フィリッポ・コンカ(イタリア、ロット・スーダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、今年のジロで王座を狙うことを宣言したエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)らビッグネームの参戦で盛り上がったツール・ド・ラ・プロヴァンス(フランス、2月11~14日に開催)。白熱した戦いは、この2人に先着したイヴァン・ソーサ(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)の個人総合優勝で幕を閉じたが、各賞に目を向けると、トップシーンに飛び込んだばかりの若い選手のチャレンジも感じられる結果になった。

ツール・ド・ラ・プロヴァンスで山岳賞を獲得したフィリッポ・コンカ。プロデビュー戦で大きなアピールに成功した(写真はトレーニングキャンプ時のもの) © Facepeeters

 山岳賞を獲得したフィリッポ・コンカはその1人で、プロ初レースで山岳リーダーの座をゲット。同賞争いのライバルが途中でリタイアしたことも関係したが、「夢のようなプロデビューになった」と好結果を素直に喜ぶ。ジャージを確かなものにするべく、最終日も逃げにトライをしたが、あまりに速いレーススピードに大苦戦。同賞2位の選手との接戦をモノにできるかは最後まで分からなかった。それだけに、劇的なジャージ獲得はこの先のキャリアを考えても大きな思い出の1つになると胸を張った。

 1998年生まれの22歳。昨年までは自国の育成チームで走り、アンダー23(23歳未満)版のジロでは2年連続の個人総合5位。今回の活躍も含めると、クライマーとしての期待が高まるが、本人は「純粋なクライマーを目指すには(年齢的に)遅すぎると思う。それよりは、山岳逃げのスペシャリストを目指していきたい」。理想は、イタリアの先輩であるアレッサンドロ・デマルキ(イスラエル・スタートアップネイション)や、チームメートのトーマス・デヘント(ベルギー)。同年代の多くが将来のグランツールレーサーやクラシックハンターを目指す中、“逃げ屋”になりたいという自らの考えが異端であることは理解している。

 それでも、周りに左右されず自らの信念のもとキャリアを形成していく。地元開催のストラーデ・ビアンケ(3月6日)のメンバー入りを目指しているが、「まだどうなるか分からない」。1週前に開催されるオンループ・ヘットニュースブラッド(ベルギー)が、ストラーデ・ビアンケのメンバー入りをかけたテストレースになる見込みだ。

 チームメートのステファノ・オルダーニ(イタリア)とは、ジュニア時代からの友人。プロ入りにあたっても、現チームの良さを教えてくれたのは1歳年上の彼だった。チームメートとなり、今ではルームシェアをしながらレースシーズンに臨んでいる。

将来は山岳逃げでグランツールのステージ優勝を狙いたいというフィリッポ・コンカ。チームメートのトーマス・デヘントが最高のお手本だという © Facepeeters
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ジロ・デ・イタリア2021 ロードレース 週刊サイクルワールド

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