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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<374>ツール・ド・フランス2021出場チーム決定 アルペシンやフランス勢がワイルドカード射止める

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランスなどビッグレースの数々を主催するA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が2月5日、ツール2021年大会の出場チームを発表した。トップディビジョンのUCIワールドチーム19チームに加えて、セカンドディビジョンにあたるUCIプロチームから4チームを選出。アルペシン・フェニックスの初出場も決まった。今回は、ツール2021出場チーム決定の経緯と、参戦が見込まれる有力選手の動向を押さえていく。

ツール・ド・フランス2021の出場チームが決定(写真は2020年大会から) Photo: A.S.O./Pauline Ballet

2021年のみの特別措置で23チームがツール出場

 ツールをはじめとするグランツールは近年、18ないし19のUCIワールドチームは自動的に出場が決まり、残る枠を同プロチームが招待枠を争う形になっていた。UCI(国際自転車競技連合)の規定に基づき、スタートラインにつくことができるのは22チーム。2018年からは、1チームあたりの出走人数が8人に。それまでは9人が出走できたが、集団内での大規模なクラッシュを避けるなど安全性を向上させることを狙いに、出走人数を減らす措置をとってきた。

ツール2021年大会は23チームが出場する Photo: A.S.O./Pauline Ballet

 ただ、昨今の新型コロナウイルスによるレースシーンへの影響を考慮し、2021年シーズンに限り、グランツール出場チームを1つ増やして23チームとすることをUCIが決定。全出走人数も176人(22チーム×8人)から、184人(23チーム×8人)と拡大することとなる。

 今年限定の措置ではあるものの、この決定によってグランツール出場を目指すチームも、毎年出場チーム決定に頭を悩ませる主催者にとっても、大きな恩恵を受けられることになったといえよう。後述するが、今回のツール2021出場チーム決定に際しても、ワイルドカード(主催者招待枠)決定をスムーズにした印象だ。

 前置きが長くなってしまったが、決定した出場チームを見ていこう。まず、今季のUCIワールドチーム(19チーム)は問題なく出場が決定している。

マチュー・ファンデルプール擁するアルペシン・フェニックスが初のツール出場を決めた Photo: A.S.O./Gautier Demouveaux

 焦点となるUCIプロチームからの選出だが、昨年のUCIワールドランキングにおいて同プロチームで最上位(12位)にランクインしたアルペシン・フェニックスがUCI規定により自動的に決定。この規定では、同チームにワールドツアー全レースへの招待出場権が与えられており、実質“準UCIワールドチーム”としての色合いを持っている。

 これによって、例年であれば残る枠が2となり、「21番目と22番目のチームがどうなるか?」というところであるが、前述の措置により3チームを選ぶことができるようになった。この結果、B&Bホテルズ・KTM、アルケア・サムシック、トタル・ディレクトエネルジーの地元フランス勢が選出された。

アルケア・サムシックは地元ブルターニュでのツール開幕を迎える Photo: A.S.O./Alex Broadway

 前回大会で初出場だったB&Bホテルズ・KTMは、2年連続のツール参戦へ。今年のツール開幕地であるブルターニュ地方を拠点とするアルケア・サムシック、伝統チームであるトタル・ディレクトエネルジーの両チームは大会の常連。名実ともに見ても「順当」と受け取ることのできるチーム選出だが、例年と同様であればこれらのうち1チームが落選となるところだった。その意味では、前述したように今季限りの特別措置が順当なチーム選出を可能にしたといえるだろう。

 いよいよ決定したツール2021全出場チームは下記の通り。なお、グランツール出場チームを23とする対応は、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャにも適用される。

ツール・ド・フランス2021 出場チーム

●UCIワールドチーム
AG2R・シトロエン(フランス)
アスタナ・プレミアテック(カザフスタン)
バーレーン・ヴィクトリアス(バーレーン)
ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
コフィディス(フランス)
ドゥクーニンク・クイックステップ(ベルギー)
EFエデュケーション・NIPPO(アメリカ)
グルパマ・エフデジ(フランス)
イネオス・グレナディアーズ(イギリス)
アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ(ベルギー)
イスラエル・スタートアップネイション(イスラエル)
ロット・スーダル(ベルギー)
モビスター チーム(スペイン)
チーム バイクエクスチェンジ(オーストラリア)
チーム ディーエスエム(オランダ)
ユンボ・ヴィスマ(オランダ)
クベカ・アソス(南アフリカ)
トレック・セガフレード(アメリカ)
UAE・チームエミレーツ(UAE)

●UCIプロチーム(2020年ワールドランキング最上位による権利獲得)
アルペシン・フェニックス(ベルギー)

●UCIプロチーム(主催者推薦)
B&Bホテルズ・KTM(フランス)
アルケア・サムシック(フランス)
トタル・ディレクトエネルジー(フランス)

出場が期待される選手は? 昨年の激闘の再現あるか

 出場チームが出そろい、これからはさまざまなレースを経てツール本番を目指す選手たちの動向も見ていきたいところ。すでに、一部の有力選手の参戦も見込まれる状況となっている。

 選手自身、または所属チームの首脳陣、その他関係者のコメントなどを総合し、現状でツール出場が有力視される選手たちを挙げてみたい。

前回大会で激闘を演じたタデイ・ポガチャル(右)とプリモシュ・ログリッチ。ともに2021年大会への出場意向を表明している Photo: A.S.O./Alex Broadway

 昨年、マイヨジョーヌをかけて激闘を演じた現王者のタデイ・ポガチャル(UAE・チームエミレーツ)、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)の両スロベニア人ライダーは出場が濃厚。再度の頂上決戦なるか。

 その他総合系ライダーでは、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)らもツールを目指す意向を表明。さらには、イスラエル・スタートアップネイションに移籍し再起をかけるクリストファー・フルーム(イギリス)も、5度目の王座を狙って大会へと乗り込む意気込みだ。

 今大会閉幕直後に控える東京五輪を見据えての出場というパターンも多く見られそうで、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)、サイモン・イエーツ(イギリス、チーム バイクエクスチェンジ)あたりがその筆頭格。

前回マイヨヴェールに輝いたサム・ベネットも同賞2連覇をかけて参戦する見込みだ Photo: A.S.O./Pauline Ballet

 ポイント賞「マイヨヴェール」候補となるスプリンターでは、前回大会で同賞を獲得したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、勝利量産の期待が高まるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。そこに割って入りたいアルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)、マイヨヴェール奪還を目指すペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も参戦の意向。昨年の大活躍が印象的なワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)も、強力チームにあってメンバー入りが内定している。

2018年のツール覇者であるゲラント・トーマス。3年ぶりの頂点を目指してフランスへと乗り込む公算だ =ツール・ド・フランス2018第20ステージ、2018年7月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 こうした中、いくつかの興味深いトピックも飛び込んできている。プロトン最強チームの1つ、イネオス・グレナディアーズは2018年大会の覇者であるゲラント・トーマス(イギリス)を軸とした編成で挑む公算が高いことを、チームプリンシパルのデイヴ・ブレイルスフォード氏が明かしたのだ。加えて、昨年のジロを制したテイオ・ゲイガンハート(イギリス)、その前の大会で勝っているリチャル・カラパス(エクアドル)もが並ぶトリプルリーダー体制に。

 個人タイムトライアルステージが2回あり(第5、第20ステージ)、大会第1週には横風が吹き荒れることが予想される区間も走る今大会。トーマスにとっては得意とするシチュエーションが待つこともあり、チーム最大目標のレースを引っ張っていくことになった。さらには、昨年のツール個人総合3位のリッチー・ポート(オーストラリア)が山岳アシストとしてメンバー入りする見込み。関連して、2019年大会を制しているエガン・ベルナル(コロンビア)はジロ、移籍1年目のアダム・イエーツ(イギリス)がブエルタをそれぞれ担当する。

1月31日のUCIシクロクロス世界選手権を制したマチュー・ファンデルプール。夏はツールと東京五輪にフォーカスする ©︎ UCI

 そしてもう1人、ツール参戦への大きな期待が寄せられているのが、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)。こちらは、チームマネージャーのクリストフ・ロードホーフト氏がファンデルプールの出場予定を明言。チームとして、ブルターニュの丘陵地帯やスプリントステージが控える大会序盤戦にフォーカスを当てていくといい、その絶対的なリーダーとして彼を勝負させたいとの考え。ファンデルプールは東京五輪をマウンテンバイク種目で出場する見込みで、ツールよりも五輪に重きを置く姿勢を明かしていたが、2つの“本番”に向けてどのように調整していくか注目だ。

 ツール・ド・フランス2021は6月26日、フランス北西部・ブルターニュ地方のブレストで開幕する。

今週の爆走ライダー−ジェイク・スチュワート(イギリス、グルパマ・エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン初戦となったエトワール・ド・ベッセージュでは、最終日の個人タイムトライアル10位の好走もあり、個人総合4位フィニッシュ。予想外の上位進出に、「シーズン序盤でこれだけの結果を残せて自信になった」と喜ぶ。

エトワール・ド・ベッセージュで個人総合4位に入り新人賞を獲得したジェイク・スチュワート Photo: Groupama - FDJ

 もっとも、脚質的にはスプリンター寄り。この大会でも2回のトップ10フィニッシュをしていたが、タイムトライアルで総合順位を上げるとは思っていなかったという。「走るたびに発見がある」という21歳は、また1つ、自らのストロングポイントを見つけた。

 イギリスはウエールズ出身。他の同国選手と同じように、ジュニア時代はトラック競技で力を養った。年代別の国内王者に就いたこともあるが、年を追うごとに高まる競技レベルに、「何人もで代表入りを争うようなシチュエーションが怖くなってしまった」。選手層の厚い国ゆえの悩みを打破するべく、選んだのは現チームの下部組織だった。

 そこでも厳しい目にさらされた。自国の関係者からは「プロになりたいならイギリスでサポートを受け続けるべきだ」と迫られることさえあった。ただ、「信念を曲げることはなかった」という2年間で、トップチーム昇格にふさわしい実力と可能性を身につけてみせた。今ではイギリス人ライダー数人が彼を追うようにして下部組織入り。「多くのイギリス人ライダーとは異なる歩みだけれど、それも決して間違いではない」と証明できたことが、何よりもうれしい。

 チームでは、スプリントのほか、短い上りやパヴェへの適性を評価される。昨年は10月に開催された北のクラシックだが、チームは彼をメンバー入りさせるために大急ぎでプロ契約した経緯があるほど。本人は1月からトップチームへ昇格するつもりでいたから、思わぬ展開にびっくりしてしまったとか。

 当初は23歳でのプロ入りを考えていたというが、順調すぎるほどのレベルアップに自らの想定より2年ほど前倒しでキャリアは進行中。これからは、レースを通じて経験を積みながら、チャンスがあれば勝負していくつもり。同時に、チームの主要言語であるフランス語も鋭意勉強中。こちらは、「走り以上に課題は山積みだよ」とのことだ。

首脳陣からの期待も高いジェイク・スチュワート。スプリントやクラシックでビッグリザルトをつかむ日も近そうだ Photo: Groupama - FDJ
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

この記事のタグ

UCIワールドツアー ツール・ド・フランス2021 ロードレース 週刊サイクルワールド

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