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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<373>チームカラーを変えてビッグタイトル獲得へ アージェードゥーゼール、グルパマ 2021チーム展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 数回に分けてお届けしている2021年シーズンのトップチーム展望。今回は、伝統国フランスの雄であるアージェードゥーゼール・シトロエンとグルパマ・エフデジをセットで紹介。新型コロナ禍で各所が試行錯誤する中、レースの灯をともし続けるべくフランスではシーズンがスタート。両チームの主力ライダーたちも奮闘している。今季からはチームカラーが刷新され、目標へ新たなアプローチを施すあたりも探っていく。

伝統国フランスの雄、アージェードゥーゼール・シトロエンとグルパマ・エフエジ。ともに新たなチームカラーで今シーズンを迎えている Photo: AG2R Citroën Team, Groupama - FDJ

パレパントルがフランス開幕戦勝利 アージェードゥーゼール・シトロエン

 世界情勢と同様に先行きが不透明なレースシーン。各地で大会開催の延期が発表され、有力選手・チームが参加の意向を示していたスペインのレースも軒並み5月への時期変更を決めるなど、その状況は安定しない。そんな中、フランスでは開幕シリーズとして例年1月下旬から2月上旬にかけて行われる大会が予定通り開催されている。

フランス国内開幕戦グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイユでオレリアン・パレパントル(左端)がスプリンターたちを下して優勝を果たした Photo: Fred Machabert / ypmedias.com

 1月31日には、南仏を舞台にグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイユが開催された。フランスを拠点とするチームに加えて、UCIワールドチームも7つがエントリー。レースカテゴリーは1.1クラスながら、各チームのエースクラスも名を連ねた一戦は、約30人のスプリント勝負をオレリアン・パレパントル(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)が制した。

 24歳のパレパントルは、昨年のジロ・デ・イタリアでは個人総合16位と健闘し、今年は山岳やステージレースでエース候補の1人と目されている有望株。スプリントで得た思いがけないプロ初勝利に、「チームとして大きな野望をもっていたが、こんな形で実現できると思っていなかった。非常に特別なスプリントで勝つことができた」と喜んだ。

 チームは1月7日にクレモン・ヴァントゥリーニ(フランス)がシクロクロスで同国選手権を制するなど、シーズンを幸先の良い形でスタート。来る大きな目標へ弾みとなるスタートダッシュとなっている。

ファンアーヴェルマートとナーセンのコンビで石畳制覇へ

 アージェードゥーゼール・シトロエンにとっては、ターニングポイントとなるであろう今シーズン。フランスの大手自動車メーカー・シトロエン社がタイトルスポンサーに加わり、大幅な予算アップを実現するとともに、約10選手の入れ替えを断行。チームとしての方向性を変えていくこととなった。

アージェードゥーゼール・シトロエンに加入のグレッグ・ファンアーヴェルマート。目標はもちろん北のクラシックだ Photo: Vincent Curutchet / AG2R CITROËN TEAM

 これまでは、ロマン・バルデ(フランス、現チームDSM)を軸にグランツールでの結果を求めてきたが、バルデの離脱とともに今季からはクラシックレースを重視。その切り札となるのが、事実上解散となったCCCチームから移ってきたグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)だ。

 これまでにパリ~ルーベをはじめ北のクラシックを複数回制し、2016年のリオデジャネイロ五輪でも金メダルを獲ったクラシックスペシャリストは、3月に36歳となるがまだまだやる気十分。昨年まで幾度となく好勝負を繰り広げてきたオリヴェル・ナーセン(ベルギー)と、今年からタッグを組んでタイトル獲りに挑む。目の肥えたベルギーの自転車ファンの間でも人気の高い2人だが、ともに「チームの勝利」を最重視する姿勢を強調。チームプレーの中で、自らにチャンスがめぐってくれば勝ちにいくことになる。クラシックシーズンまでは同じレースプログラムが組まれる見込みで、まずは2月3日開幕のステージレース「エトワール・ド・ベッセージュ」(UCIヨーロッパツアー2.1)から連協強化に取り組んでいく。

アルデンヌクラシックの注目ライダー、ブノワ・コスヌフロワ。膝の故障を抱えているが春までには戻ってこれそうだ Photo: Vincent Curutchet / AG2R CITROËN TEAM

 一方のアルデンヌクラシックに向けては、生え抜きのブノワ・コスヌフロワ(フランス)が楽しみ。昨年はラ・フレーシュ・ワロンヌやパリ~トゥールで2位となって存在感を示したが、今季もワンデーレースでのタイトル獲得にチャレンジ。強力なアタックを武器にしており、現・世界王者のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の対抗馬としても期待が高まっている。現在は膝の故障のため離脱中だが、3月にはシーズン初戦を迎えられる見通し。クラシック本番には間に合いそうだ。

 クラシック戦線については、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)の加入で戦力に厚みが増している。昨年までのドゥクーニンク・クイックステップでは、石畳に丘陵に大車輪の働きを見せたが、これからはアルデンヌクラシックと1週間規模のステージレースにフォーカスすると宣言。2018年にはリエージュ~バストーニュ~リエージュを制し、実績・経験とも申し分はないだけに、クラシックに集中した時の強さは他チームに脅威を与えることになるだろう。

 ステージレースの総合狙いがウィークポイントに挙げられそうだが、前述のパレパントルや、ツールでのステージ勝利が印象的なナンズ・ペテルス(フランス)、リリアン・カルメジャーヌ(フランス)、ベン・オコーナー(オーストラリア)の移籍組の奮起を待ちたい。また、23歳のヤーコ・ハンニネン(フィンランド)は次世代クライマーとして育成中とあり、覚えておきたい存在だ。

アージェードゥーゼール・シトロエン 2020-2021 選手動向

【残留】
フランソワ・ビダール(フランス)
ジョフリー・ブシャール(フランス)
クレモン・シャンプッサン(フランス)
ミカエル・シュレル(フランス)
ブノワ・コスヌフロワ(フランス)
ジュリアン・デュヴァル(フランス)
マティアス・フランク(スイス)
トニー・ガロパン(フランス)
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク)
ドリアン・ゴドン(フランス)
アレクシー・グジャール(フランス)
ヤーコ・ハンニネン(フィンランド)
ローレンス・ナーセン(ベルギー)
オリヴェル・ナーセン(フランス)
オレリアン・パレパンドル(フランス)
ナンズ・ペテルス(フランス)
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア)
クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス)
ローレンス・ワーバス(アメリカ)

【加入】
リリアン・カルメジャーヌ(フランス) ←トタル・ディレクトエネルジー
スタン・デウルフ(ベルギー) ←ロット・スーダル
アントニー・ジュリアン(フランス) ←シャンベリー シクリズムフォーマション(アマチュア)
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク) ←ドゥクーニンク・クイックステップ
ベン・オコーナー(オーストラリア) ←NTTプロサイクリング
ニコラ・プリュドム(フランス) ←VCヴィレフランシェ・ボジョレー(アマチュア)
マルク・サロー(フランス) ←グルパマ・エフデジ
ミヒャエル・シェアー(スイス) ←CCCチーム
ダミアン・トゥゼ(フランス) ←コフィディス
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー) ←CCCチーム
ハイス・ファンフック(ベルギー) ←CCCチーム

【退団】
ロマン・バルデ(フランス) →チームDSM
クレモン・シェヴリエ(フランス) →引退
シルヴァン・ディリエ(スイス) →アルペシン・フェニックス
アクセル・ドモン(フランス) →引退
アレクサンドル・ジェニエス(フランス) →トタル・ディレクトエネルジー
カンタン・ジョレギ(フランス) →B&Bホテルズ KTM
ピエール・ラトゥール(フランス) →トタル・ディレクトエネルジー
ハリー・タンフィールド(イギリス) →クベカ・アソス
ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー) →引退
アレクシー・ヴィエルモ(フランス) →トタル・ディレクトエネルジー

絶対エースのピノはジロでマリアローザに挑戦 グルパマ・エフデジ

 アージェードゥーゼール・シトロエンとならぶフランスの伝統チーム、グルパマ・エフデジは、これまで同様にグランツールをメインに据えて実力者を要所へと配置していくスタンスをとる。

グランツールメインの体制をとるグルパマ・エフデジ。チームの顔であるティボー・ピノ(左から2人目)はここ2年不運続きのツールを避けてジロ・デ・イタリアに集中する =ツール・ド・フランス2019第18ステージ、2019年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ、昨年とは一変するのがエースクラスのシフトチェンジ。絶対的な総合エースのティボー・ピノ(フランス)は、ツール制覇の野望をいったんストップして、3年ぶりにジロ・デ・イタリアへと戻ることに決めた。

 2017年には個人総合4位になるなど、ジロとの相性はまずまず。一度は「ツール特有のプレッシャーを避けたい」とイタリアのレースに注力していた時期もあるが、2019年からツールをターゲットにしてきた。ただ、その年は負傷によって悲劇的なリタイア。続く昨年も第1ステージでの落車がきっかけで数日後には完全に脱落。上位から遅れた日のレース後には「今後のキャリアにも影響する」といった旨のコメントまで残すほど落ち込んだ。

 数カ月経ち、目標を新たに今年を戦う決意を固めた。1月半ばに行われたチームプレゼンテーションでは、ジロのリーダージャージ「マリアローザ」への思いを語り、ツールでの失意から気持ちが切り替わっていることをアピールしている。

 もっとも、すでに発表されている今年のツールのルートは自らに向いていないといい、来年には自国での3週間の戦いに復帰したいとの意向を示している。まずはジロで結果を残して、来季への希望を膨らませたいところである。

デマールとゴデュの共闘でツール席巻へ

 今年のツールでは、平坦ステージでグルパマ・エフデジの名を聞くことが多くなるかもしれない。エーススプリンターのアルノー・デマール(フランス)がチームリーダーとして臨むことが内定し、チームも彼を全面的にサポートする。

昨シーズン後半に勝利を量産したアルノー・デマール。2021年シーズンは3年ぶりにツール・ド・フランスに臨むことが決まった =ジロ・デ・イタリア2020第11ステージ、2020年10月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 イレギュラー化した昨年のレースシーズンにあって、デマールは8月から10月にかけて14勝と勝利を量産。なかでもジロで挙げた4勝は大きなインパクトで、ポイント賞も文句なしの受賞。ツールで同賞のマイヨヴェールを狙うかは流動的だが、まずはステージ優勝に重きを置いてスタートラインにつく。強力なリードアウト陣との完成度の高い連携を再び見せることができるか。デマール本人は、本番に向けたアプローチを変えることなく臨めば再度の大成功も可能だと自信を見せている。

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで大活躍のダヴィド・ゴデュ。いよいよツール・ド・フランスで総合エースに昇格を果たす ©PHOTOGOMEZSPORT2020

 加えて、ツールでは総合狙いにダヴィド・ゴデュ(フランス)が挑戦。これまではピノの右腕として、ときにレースを決定づける好アシストも見せてきた24歳は、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝を挙げ、個人総合でも8位と健闘。すっかり総合エースにふさわしい実力者となり、地元ブルターニュ開幕のツールでリーダーの1人に任命された。

 また、今年はシュテファン・キュング(スイス)も責任ある立場になる。タイムトライアルではワールドクラスとなって久しいが、もう1つ得意とする石畳でもそろそろタイトルが欲しいところ。昨年はヘント~ウェヴェルヘムで5位となっているが、今年もシーズン序盤の走り次第ではツール・デ・フランドルやパリ~ニースといったビッグレースでも優勝候補に挙がってきそう。

 上位進出が計算できるエースを、堅実なアシストたちが支えるチーム体制。ステージレースからワンデーレースまでオールラウンドにこなすヴァランタン・マデュアス(フランス)は次期エース候補の1人で、彼らが確たる地位まで成長できれば、より戦力に厚みが増すことになる。

グルパマ・エフデジ 2020-2021 選手動向

【残留】
ブルーノ・アルミライル(フランス)
ウィリアム・ボネ(フランス)
アレクシス・ブルネル(フランス)
ミカエル・ドラージュ(フランス)
アルノー・デマール(フランス)
アントワーヌ・デュシェーヌ(カナダ)
ダヴィド・ゴデュ(フランス)
ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク)
ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)
シモン・グリエルミ(フランス)
イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア)
シュテファン・キュング(スイス)
マチュー・ラダニュ(フランス)
オリヴィエ・ルガック(フランス)
ファビアン・リーンハルト(スイス)
トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン)
ヴァランタン・マデュアス(フランス)
ルディ・モラール(フランス)
ティボー・ピノ(フランス)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス)
アントニー・ルー(フランス)
マイルズ・スコットソン(オーストラリア)
ロマン・シーグル(フランス)
ラモン・シンケルダム(オランダ)
バンジャマン・トマ(フランス)

【加入】
マッテオ・バディラッティ(スイス) ←イスラエル・スタートアップネイション
クレモン・ダヴィ(フランス) ←グルパマ・エフデジ コンチネンタルチーム
アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー) ←CCCチーム
ラルス・ファンデンベルフ(オランダ) ←グルパマ・エフデジ コンチネンタルチーム

【退団】
キリアン・フランキーニー(スイス) →クベカ・アソス
マルク・サロー(フランス) →アージェードゥーゼール・シトロエン
レオ・ヴァンサン(フランス) →CCエトゥプ(アマチュア)

今週の爆走ライダー−アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマ・エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 1月中旬に行われたチームキャンプで、新しい仲間との初顔合わせ。おおよそ1週間の共同生活は「良い印象しかない」と振り返る。

グルパマ・エフデジに今季加入のアッティラ・ヴァルテル。チームの雰囲気の良さを感じている Photo: Groupama-FDJ

 なにより、チーム全体のプロ意識の高さに驚かされたという。「これが20年以上第一線で戦うチームなのかと思わされた」。国籍関係なく家族の一員として扱ってもらえたこともうれしい。

 昨年所属したCCCチームが事実上解散となり、次の環境を探すにあたって重要なファクターとなったのがレースプログラム。どれだけ自分を信じてくれているかを、どんなレースを走らせてもらえるかで判断したかった。その中でも群を抜いていたという現チームからのオファー。予定通りいけば、昨年に続いてジロを最大目標とする。

 ハンガリーは決して自転車先進国とは言えないが、「年々サイクリングへの注目度は増している」とのこと。これからは、自らの走りによって関心を引き寄せていきたいと意気込む。自国開催のツール・ド・ハンガリーで個人総合優勝を果たすなど、昨年は大仕事もやってのけたが、もっともっと活躍して「ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のように国のスーパースターになりたい」との野望も口にする。

 そんな未来に明るい22歳だが、目下のテーマは「フランス語を覚えること」。キャンプ中、「何となく雰囲気で分かることが多かったけど、ハンガリー語と発音がまったく違っていて、こちらからは何も伝えることができなかった」のだとか。コミュニケーションをとれるようになって、チームの一員である意識をさらに強めたい。

昨年のツール・ド・ハンガリーで個人総合優勝したアッティラ・ヴァルテル。地元のレースで大仕事を果たした Photo: Tour de Hongrie
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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