「全日本自転車競技選手権トラックレース大会」での結果
エリミネーションレース 第2位
スクラッチレース 第3位
4km個人追い抜き 第2位(予選は1位通過)
マディソン(新村候補生とペア) 第3位
オムニアム 第7位
昨年春に日本競輪選手養成所へ入所し、選手候補生となった窪木一茂選手(チームブリヂストンサイクリング)から、養成所生活のリポート第3回が届きました。卒業まであとわずか。最終仕上げに向けて数々のレースを重ねるなかで、トレーニングの手応えと、選手としての多くの学びを得ているそうです。
◇ ◇日本競輪選手養成所での生活もいよいよ終盤に突入しています。現在のところ、自分は怪我や落車事故等もなく、体調万全で競輪選手養成所での訓練に明け暮れています。
11月には全日本自転車競技選手権トラックレース大会が群馬県前橋市の「前橋グリーンドーム」で4日間を通して行われ、男子選手候補生は私窪木一茂、新村穣。女子選手候補生は吉川美穂、内野艶和(つやか)が競輪選手養成所の代表として参戦しました。
この大会の結果は日本代表強化指定選手への選手選考も兼ねられていたので、とても重要な大会という位置付けと、養成所での訓練の成果を試す場として挑戦してきました。
4人は、今までは有酸素能力を生かした中距離や長距離のレースを得意としていました。競輪選手養成所に入所してからは、当然ながら、短距離に特化した筋力・パワー・スピードのトレーニング内容を中心としてこの半年間を過ごしてきました。
トレーニングの具体例を挙げると、距離120kmを約4時間で走る練習がある時もあれば、短距離に特化した練習で25分休憩で距離100mを3回だけ全力疾走して走るといった感じで、内容が大幅に変わります。そのくらい短距離能力を上げるためには、短時間集中のトレーニングが必須になるのです。
競輪という“賭け”の対象である公営競技のレースと、オリンピック競技内容のトラックレース種目とでは全く内容が異なります。簡単にですが、私の大会結果もご報告します。
「全日本自転車競技選手権トラックレース大会」での結果
エリミネーションレース 第2位
スクラッチレース 第3位
4km個人追い抜き 第2位(予選は1位通過)
マディソン(新村候補生とペア) 第3位
オムニアム 第7位
新型コロナウイルスが流行している社会状況の中で、特別に競輪選手養成所からの外出を許可していただき、試合に臨ませてもらえた事は本当に有難いことでした。4人ともに今後の自転車競技生活に生かすことのできる大きな収穫が必ずあったと思います。
持久力に優れている選手が短距離に特化した専門的トレーニングに取り組んだとしても、有酸素能力の極端な衰えはあまり見られなかったように感じました。
選手それぞれに個人差というものは絶対にあるとは思いますが、これらの事が、今後ロードレースを主戦場に活躍してきた選手たちが競輪選手への転向を目指す上での参考材料になれば、ますます競輪や自転車競技の盛り上がりに貢献できるのではないかと思いました。
2021年1月に第3回目の記録会が「JKA250バンク」で行われます。養成所生活では全部で、6月、9月、1月と3回の記録会があり、今回が最後の記録会となります。その重要な記録会前の本番を想定した“予行練習”として、1kmとフライング200mのタイム測定を全候補生が行いました。
250mバンクでの走行は、自転車競技未経験者は走ったことがない人がほとんどです。記録会での「ゴールデンキャップ」(※)を獲得するチャンスも最後です。今回の試走記録会はそれぞれが力を試すということでも、みんな集中して取り組んでいたと思います。
(※年3回行われる記録会でのタイムによって訓練時にかぶる帽子の色が金・白・黒・赤・青の順で分けられる。金は通称「ゴールデンキャップ」といわれ、獲得1回あたり20万円が支給される)
自分は200m:11秒180、1km:1分6秒10というタイムでした。傾斜角度の厳しい250mバンクを上手に走れたこともあり、全体の“一番時計”を出すことができ、また養成所での訓練で力が付いてきていることが実感できて良かったです。また、この1kmのタイムは鉄の自転車で出したタイムの中では自己ベストの記録でした。
そして12月14、15日には2日間にわたって「日本競輪選手養成所119回生、第1回トーナメント大会」が開催されました。予選2試合、準決勝、決勝と計4レースが行われ、自分も「決勝へ上がる」という目標を掲げて臨みました。
初日の予選2試合の着順の合計で選抜される仕組みで、予選2試合の上位27人が準決勝へと進むことができます。自分は予選レース2着と1着で危なげなく準決勝へと進むことができましたが、後から振り返るとかなり緊張していたのだなと感じました。
例えば、シューズカバーを履く際、なんとなくロゴが見えないように内側と外側を逆に履いてみたり、よく運動前にはコーヒーを飲むのですが、予選の日はレモンティーに変えてみたりと、何か試合だからといって普段しないことをやっていたように思いますし、走りに関しても予選では積極的なレースが出来なかったように思います。
2日目は、初日を終えてほどよく緊張がほぐれたのか、ウォーミングアップ時から身体も調子良く感じました。準決勝ともなれば、勝ち上がってくる候補生は在籍順位上位者が多く、苦戦しましたが…。
レースは400mバンクを4周して行われます。残り2周から先頭を誘導する先頭誘導員が抜けて、いよいよ駆け引きがスタートしました。
一旦自分が先頭に出るものの、後方から優勝候補の選手が一気に駆け上がり、ラスト一周400m前は一列棒状。自分は3番手となり、ラスト2コーナー過ぎから後続の選手が追い上げてきましたが、先頭の選手はスピードを加速して先行し続け、4コーナーまで順位変わらず。僕の後ろの選手がゴール前の直線で一気に先頭に出ようとしてきたその瞬間、3番手の自分も思いっきりペダルを踏み込んで、先頭4人が横一列で並走し、ゴール線を通過しました。
写真判定の結果は、自分が1着で、先頭を1周以上走り続けた優勝候補筆頭だった選手がまさかの準決勝敗退となり、自分は決勝レースへ進むことができました。決勝へ進むという目標はクリアできたので、思いっきりレースを展開したいと思い、気分を高揚させて最後のレースに挑みました。
決勝レースは5周競走で行われます。号砲と同時にスタートし、自分は一番前に出て先頭誘導員の真後ろに付けました。決勝では自分よりもダッシュ力が強い選手が多かったため、後方から攻めては積極的なレース展開をすることが難しいと感じたからです。
レースが進み、残り2周を切れば先頭誘導員を追い抜いてレースを進めることができます。僕は後ろの気配を感じながら走り続け、残り1周半を過ぎても後方の動きはなく、他の選手は風を受けないように位置してパワーを温存し、最後の捲り一発に賭ける戦法なのだと察知しました…。
後方から思いっきりかまされたら不利だと考え、1周半を過ぎたところで自ら先頭誘導員を退け、先頭で風を受けて自分のペースでレースを進める展開にしました。
ラスト一周の400mを過ぎるも後続には動きがなく、後ろを警戒しながら少しずつペースを上げて行きましたが、タイミングが遅かった…。2コーナーの所で後ろを見たら、後方から4人ほどの選手達が鋭いダッシュで自分の真横付近まで並んできていました。
「これはやばい!」と思い、自分も全力でペダルを踏み込むも、皆よりも加速が遅い僕は瞬く間に追い抜かれ、最後の3、4コーナー辺りではギリギリ内側で粘り続け、先頭から3番手付近をキープできていたように見えましたが、横並びに近い拮抗した状態で進み、そのままコース内側で身動きが取りにくい場所でのゴールとなった。
最後はなんとか内側で粘り続けて、3着以内に残ったかもしれないと思ったのですが、レース後の写真判定では7人ほどが横一列に近い状態でなだれ込んでおり、その中の7着という結果に終わりました。
レースを振り返ると、自分から先頭に出て自分のタイミングで仕掛けるチャンスを作り続けていたことは良かったと思うけれど、牽制状態のあの独特の雰囲気の中で、いや、あの雰囲気だからこそ、あえて先手の一歩を踏み出せる勇気が出せていたら極楽が待っていたのかもしれない、と悔しい結果となりました。
日本競輪選手養成所の所長である瀧澤正光先生が、競輪の走りについて教えてくれたことがあります。『一歩踏み出せば極楽』という言葉です。
今回の決勝レースでは、まさにその言葉通りだったと感じだので、今後のレースへと生かしていけるように毎日の練習から一所懸命自転車に向き合っていきたいと思います。
日本競輪選手養成所での生活も残り約2カ月弱となります。次第に一日一日の時間が過ぎるスピードが早く感じるという錯覚が起きています。卒業が待ち遠しいという気持ちの表れなのだと思います。
卒業までの残り時間、プロスポーツ選手である競輪選手になるために必要な事の多くを心残りなく養成所でしっかり学んで、無事に卒業できるように過ごしていきたいと思います。
1989年生まれ。福島県石川郡古殿町出身の自転車競技選手。ロードレースとトラック中長距離の国内トップ選手として活躍。ロードでは2015年の全日本ロードレース選手権を制し、2016年から2シーズンはNIPPO・ヴィーニファンティーニに所属して海外レースを転戦。2018年には全日本個人タイムトライアルでも日本一に輝いた。トラック競技では、中長距離種目において個人・団体ほとんどの種目で日本チャンピオン獲得経験のある第一人者。2016年のリオデジャネイロ五輪にはオムニアム種目で出場。2019年もポイントレースやマディソン、4km個人追抜き、4km団体追抜きでも日本チャンピオンに輝き、国内記録、アジア記録を更新。
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