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三船雅彦の「#道との遭遇」<12>370kmのウォーミングアップで走った「冠山」 国道から林道へと名前を変える崖っぷちのルート

by 三船雅彦 / Masahiko MIFUNE
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 長距離のエキスパートでプロサイクリストの三船雅彦さんが、全国の道を普通と違った走り方で紹介する連載「#道との遭遇」。今回は2018年に行われた「内灘サイクルロードレース」に参加する際、ウォーミングアップを兼ねて家からレース会場まで370kmほど自走したときのエピソードを振り返りつつ、岐阜県と福井県の県境にある冠山(かんむりやま)を紹介します。冠山には国道417号線が通っていますが、県境が近くなると林道冠山線へと名前を変えるそう。そして福井県側の道はところどころガードレールのないポイントがあるそうです。

横山ダムから徳山ダムへの道 Photo: Masahiko MIFUNE

内灘ロードに参加するときの楽しみ

 現役を引退してからはブルべやマスターズカテゴリーでシクロクロスを楽しんでいるが、少しだけロードレースにも出場している。「ロードレースもされるんですか?」とよく勘違いされているようだが、元々本業??はロード選手。ホントはそっちの人なんですよ!

 ロードレースの中でも、エディメルクス輸入代理店のフカヤさんが大会に関わっている「内灘サイクルロードレース」(以下、内灘ロード)への参加は毎年楽しみにしている。

 内灘ロードはアマチュア時代に住んでいたオランダのようにド平坦のレースだ。よく平坦だから簡単とか、集団だし落車が多い、という声を聞く。オランダのアマチュアレースを走ったことのある人ならわかると思うが、オランダのレースで集団ゴールなんて、まずない。そんなのは快適な気温で風がないときに、どこかのチームがスプリント合戦にしたくてスピードコントロールしたときに可能性があるくらい。

 しかしアマチュアレースで組織的な動きはほとんどないし、そもそもオランダで無風なときはない。青空なのに立っていられないほどの強風なんていうことならいくらでもあるが、無風ならそれはきっと異常気象だ。

 だから内灘ロードに出るときはオランダのアマチュアレースを思い出して前で展開し、とにかく風を利用して攻撃していくことを心がけている。個人的には若い選手たちにそれをやってほしいのだが、はるか先のゴールを見据え、集団で勝負したいのかみんな消極的だ。しかし「アタックは決まらない」そういう心理が動くときこそ、アタックは決まるとお手本を見せるべく、寿命を縮めて走っている。

 その内灘ロードに出るのにひとつだけこだわりがある。それは家から自走することである。家のある関西からレース会場の石川県内灘町まで自走すれば370kmほど。個人的にはいいウォーミングアップだと思っている。ただ普通に家から自走しても面白くないので、どこを通って会場まで行くか、レース前から検討している。そのようなことを考えているとふと気づく。「レースの展開とか何にも考えてなくて、いつも自走のルートばっかり考えてるやん」と。

廃道になってもおかしくないルート

 2018年の内灘ロードに参加した際は、前から気になっていた「冠山」を経由していこうと決めた。冠山とは岐阜県と福井県の県境にあり、国道417号線が通っているのだが県境では国道が繋がっておらず、林道冠山線がそのかわりに接続されている。

 しかし林道が繋がっているからと車で通ろうとしたら度肝を抜かれる。福井県側は崖っぷちに道を繋げているが、ガードレールがあちこちない。いや、正確には落石で吹っ飛んでいるか、崖下の方に落ちている。ガードレールが落ちていなくても崖の下に落ちそうで、自転車で福井県側に下っていると確認する余裕なんかないし、目に入ってこない。入ってくるのはコントラストがおかしくなりそうな崖下の景色…。

 夕方まで仕事をしてそのまま自走で内灘町を目指したスケジュール上、滋賀県境を通るのは真夜中になる。「横山ダムや徳山ダムを真夜中に走るのはどうよ」と思ったので道の駅「夜叉ヶ池の里さかうち」で仮眠。ほんのりと薄明るくなってから横山ダムを見つつ冠山を目指した。

京都から走り続けて横山ダムで夜明け Photo: Masahiko MIFUNE

 徳山ダムの名前の由来はダムに沈んでしまった徳山村からきている。ダム問題の引き金になったとも言えるもので知っている人も多いことだろう。

 実際にダムを上ってから冠山入口まで走っていると、元々は遥か下に道があったはずで、トンネルでバイパス化されているといっても、正直なところ見える景色に違和感を覚える。道が沈んでしまうから道を上に作り直そう、という思惑の通りの形をしていて、旧道好きからすると、なにか周波数の違う電波をずっと体に感じずにはいられない。そのような違和感、不気味な感覚を持ちつつ国道終点ポイントへ。ここから林道冠山線だ。

冠山を望みながらのヒルクライム Photo: Masahiko MIFUNE
いよいよ林道区間へ Photo: Masahiko MIFUNE

 岐阜県側からは道も比較的キレイで思ったほどの難易度ではない。それは拍子抜けするような感覚で、気がつくと頂上。山の上に徳山ダムを作っているのだし、そこからはそれほど標高差はなくて当然だろう(その分滋賀県からダラダラと上り続けたが)。ちなみに冠山峠の標高は1050m、徳山ダムからのバイパスでだいたい450m、なので高低差は600mほどだ。でも実際走ってみると、そんなに高低差を感じない。冠山峠から岐阜県池田町への下りは先にも触れたように、まさしく「酷道」だ。

 救いだったのは、林道冠山線を暗いうちに通過しようという計画を立てなかったことだろう。何事もないように細心の注意で走ってはいるが、レースで使う機材は別便で会場に送っておいてよかった。池田町を通過し、石川県まで走ってコンビニ休憩をしたとき、ただ睡魔が襲ってきただけではなく、心からも疲れていたのだろう。腰を下ろした途端に寝落ちしてしまった。

市町村合併に伴い、徳山村も藤橋村も現在は揖斐川町となった Photo: Masahiko MIFUNE

 現在、国道417号は急ピッチで岐阜県と福井県をトンネルで繋げており、2020年11月に県境を突き抜ける第2トンネルが完成した。まだ開通は未定のようだが、2022年には走れるよう国に要望しているとのことだ。もしかするともう冠山峠は片側だけを冠山の登山用に残して、管理上廃道になってもおかしくないと思っている。今年、内灘ロードに出場する際は、再度冠山峠経由で行くとするか…。

三船雅彦(Masahiko MIFUNE)

元プロロード選手で元シクロクロス全日本チャンピオン。今でもロード、シクロクロス、ブルべとマルチに走り回る51歳。2019年は3回目の『パリ~ブレスト~パリ』完走を果たす。今年は新型コロナウィルスの影響でイベントがことごとく中止。その腹いせ?に関西圏の道を走り回っている。「知らない道がある限り走り続ける!」が信条。

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