title banner

昼間岳の地球走行録<71>ボリビア・ウユニ塩湖で贅沢なキャンプ 360度の地平線が広がる絶景

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
  • 一覧

 今ではウユニ塩湖と言えば知らない人がいないくらいの世界有数の観光地となっているが、僕がウユニ塩湖を知ったのは、旅に出てからだった。きっと多くの人が「ウユニの鏡張りの美しい風景の中を走ってみたい」と思うように、僕もそう強く思った。

塩の結晶が造り出す幾何学模様の六角形。自転車で走るとサクサクサクという一定のリズムで崩れてく塩の振動が心地よかった Photo: Gaku HIRUMA

ギリギリ乾期に間に合う

 ところが、自転車でウユニ塩湖を走れるのは乾季のみだ。本来、ウユニ塩湖の乾季は6月から10月ごろまでと言われているが、通常は12月頃まで乾季を楽しめるとのことだった。僕が走ったのは1月中旬。すでにボリビアの首都ラパスでは雨季に入り、雨が降っていたけど、幸いなことにウユニではまだ雨は降っていないとのことだったので、ギリギリ乾季のウユニ塩湖を走れそうだった。

 通常は首都のラパスからそのまま南下するルートを取れば、ウユニ塩湖の脇を横切ることになり、すぐにウユニ塩湖に入れる。しかし僕は雨季が迫りくる時間の関係で、ラパスからバスと電車を乗り継ぎ、一旦ウユニの町まで行くことにして、そこから北上をしてウユニ塩湖を目指すことにした。

 ただ実はウユニ塩湖を走るかどうかはとても迷った。ラパスでは午前中いい天気でも、午後から急に雷雲が発生し、大雨になることも珍しくなかったからだ。ウユニ塩湖のど真ん中で雨に降られたら、本当に致命的だ。それでもやはり憧れのウユニ塩湖走行を諦めきれず、走ることに決めた。

 ウユニの町からウユニ塩湖までは約25km。町を出ると幹線道路がどれかも分からないくらい荒野が広がっていた(2011年当時)。地元の人に聞いて幹線道路を見つけるも、道路が洗濯板のようにデコボコな状態(コルゲーション)だったため、まともに走れなかった。

世界的な観光地だが、2011年に走ったときの道路はまだ未舗装のガタガタ道だった Photo: Gaku HIRUMA

 仕方なくそのコルゲーションを避けるためにジープが路肩を走行してできたジープロードを進んだ。ジープロードも砂深くてまともな道ではなかったが、なんとかウユニ塩湖へ辿り着いた。

 目の前に広がるのは、ただただ白く輝く広大な塩湖。轍以外は塩の結晶が浮き上がり、六角形の幾何学模様が延々と続いている。浮き上がった塩の結晶を踏むと、サクサクと簡単に崩れていく。これを自転車で走るのがなんとも気持ちがいい。

 自然とは面白いもので、塩の結晶がほぼ同じ大きさで六角形になっていて、自転車で結晶を踏む度に一定の「サクサク」という音が聞こえ、手や身体に感じる振動はとても心地良く感じられた。ウユニには雨季には水が張るため、もちろん道路も標識すらない。ウユニ塩湖に着いたらまず西にある塩のホテルを目指せと言われていたけど、そのような建物は一切見えなかった。

ウユニ塩湖入り口付近。塩の採掘などが行われていたが、目指す塩のホテルは全く見えなかった Photo: Gaku HIRUMA

 ウユニ塩湖はとにかく、思っていたよりずっと広大だった。見渡す限り塩湖が広がり、それ以外本当に何もなかった。山の形を頼りにしようと思っていたけど、その山すら地平線の彼方にうっすらと見えるだけ。それもそのはずで、ウユニ塩湖の広さは、なんと琵琶湖の12倍の広さを誇る1万2000平方kmもあり、最大高低差わずか約50cmで、世界で最も平らな土地とされている。

 ウユニ塩湖を出るときに分かったが、ツアーなどで良く使うメインの轍があるらしかったのだが、入るときはとにかく轍が無数に延びており、どの轍を辿ればいいのか分からなかった。それでもなんとか地平線の彼方に本当に豆粒ほどのなにかが見えて、それを頼りに恐る恐る進む。とにかく景色が変わらない。

 あたりが真っ白で遠近感もなくなるため、走っても走ってもなかなかそれは近づいてこなかったけれど、どうやら目当ての塩のホテルだと分かったときは、本当にホッとした。途中、出口の場所だけは覚えておこうと何度も何度も振り返りながら走った。塩のホテルを目指したけれど、目印にしただけで特にホテルには用はなかった。

なんとか辿り着いた塩のホテル。売店や軽食も取れるし、もちろん泊まれる Photo: Gaku HIRUMA

 ここまでくると、塩の白さがより一層と増していた。そこから塩のホテルが見えなくなるくらい走り、轍を避けてテントを張ることにした。暮れゆく世界を眺めながら、足元にいくらでもある塩で夕食を作る。いつもと代わり映えのないパスタだったけど、この日の塩味は本当に格別だった。

 見渡す限り人も、人工の建物すらない。広大な塩湖の真ん中なので、動物も小さな虫すら住んでいない。満月近くの静寂の世界。風が止むと、大自然の中に居るのに全くの無音になるという感覚は初めてだった。静寂と月夜に白い塩湖が怪しく浮かび上がり、この世の風景とはとても思えなかった。

ウユニ塩湖で贅沢なキャンプ。大自然のど真ん中なのに全く生き物の気配すらなく、全くの無音という不思議な空間だった Photo: Gaku HIRUMA
パスタを作るのに使うのはもちろん足元に無限にあるウユニの塩だ。塩にも鮮度があるのかは知らないが、採れたての塩はとても美味しい Photo: Gaku HIRUMA

 午前4時、月が沈むころ、テントから出てその満天の夜空に驚いた。顔を上げなくても、目線の高さにまでびっしりと星が輝いていた。一生分の流れ星を見たのではないかというくらい、流れ星を見た。

いつもは素早く撤収する野宿も、この日ばかりは昼前までゆっくりとキャンプを楽しんだ Photo: Gaku HIRUMA

 正直に言えば、ウユニ塩湖走行は、実は思ったより華がない。初めは大興奮で走り出すものの、景色が変わらな過ぎて途中で飽きてしまうのだ。それでも、苦労して辿り着いたこの世の風景とは思えない世界でキャンプできたことは、自分の人生の中でもとても貴重な経験だった。大満足でウユニの町に戻り、塩まみれになった自転車のメンテナンスは欠かさずに行った。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

この記事のタグ

旅サイクリスト昼間岳の地球走行録

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

Cyclist CLIP

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載