山下晃和さん選出・サイクリストへお勧め図書㉕ロマン溢れる自転車キャンプのお供におすすめ 猪野正哉氏著「焚き火の本」

  • 一覧

 Cyclist執筆陣を中心に、サイクリストにおすすめ図書を紹介する本企画。モデル兼トラベルライター兼スポーツトレーナーの山下晃和さんがオススメする1冊は、昨今のキャンプブームを牽引するかのごとくテレビ、ラジオ、雑誌で引っ張りだこの“焚き火マイスター”こと猪野正哉さんの『焚き火の本』(山と渓谷社刊)です。昨秋発売されたばかりの新刊で、山下さんも「ここまで焚き火について丸々一冊にまとめている本は珍しく、おそらく内容の濃さは日本一」と太鼓判を押します。

『焚火の本』(猪野正哉著、山と渓谷社刊)。表紙から“焚き火心”がくすぐられる美しい炎のカタチ Photo: Akikazu YAMASHITA
◇         ◇

焚き火があれば季節を問わずに楽しめるキャンプ

 新型コロナウィルスが国内で感染拡大し始めてから、およそ1年。その間にキャンプブームが加速し、その影響を受けて、自転車とキャンプをテーマにした旅フェス「BIKE&CAMP FES2020」も例年より多くの来場者で賑わった。

 そんなキャンプブームのさなか、最近一際目につくようになったのが「焚き火台」だ。11月に開催した「バイク&キャンプ」も夜~早朝は寒さに見舞われたが、特設テントサイトでは焚き火台を囲みながら暖をとっているキャンパーたちの様子が多く見られた。

 最近はソロキャンプブームでコンパクトな焚き火台が増えており、そうした流れもあって自転車キャンパーが気軽に焚き火を楽しめる機会も増えてきている。炎があれば季節を問わず(関東近郊や標高が低いエリア限定だが)キャンプを楽しめるし、むしろ焚き火目的でキャンプをするというニーズも増えている。

私がトレーニングを教えている生徒さんは焚き火の写真を見て、「目の奥まで暖かくなる」という表現をして、とても良い言葉だと思った Photo: Akikazu YAMASHITA

「焚き火」の全てを知るベストな一冊

 この本の著者である猪野正哉さんはファッション誌『メンズノンノ』の専属モデルをやっていた経歴があり、当たり前だが身長が高く、スラッとしていてかっこいい。個人的にアウトドア関係の仕事でご一緒させてもらうことも多く、2019年の「BIKE&CAMP KANTOU」ではゲストとして焚き火について語ってもらったこともある。

 現在は、主に焚き火マイスター、アウトドアプランナーとして活動されており、ライターとしての活動の他、テレビ、雑誌、WEBなどで焚き火のセッティング等のコーディネートまで手掛ける。さらに、焚き火好きが高じて、千葉県に「たき火ヴィレッジいの」という焚き火専用のキャンプサイトを作ってしまったほどだ(※一般開放はしていない)。

 その‟猪野ワールド”が満載の同著は焚き火の魅力、そして焚き火の知識が凝縮された一冊。私もアウトドアスキルや焚き火スキルをより深く学びたいと思い、手に取ったところ、初心者向けの最低限のマナーなども書かれてあって非常に読み応えがあったので、キャンプ、そして焚き火が気になっているサイクリストにもぜひ一読してもらいたいと思った。

“How to”だけじゃない読み応え

 第一章が始まる前に、まず焚き火の美しい写真があり、焚き火がしたくなるはじまりの言葉がある。そして焚き火がなぜ魅力的なのか、といった説明が続く。そもそも焚き火台を使うことが日本独自の文化がであること。また直火で焚き火をやると地面から熱が伝わり、テントの下から暖かくなるということ等知らないことが書かれていて驚いた。いつかできる環境があれば体験してみたい。

 第二章では、焚き火で用いる道具類の説明があり、ここでも猪野さんらしい選び方で紹介されている。さらには薪の木の種類の違いや薪を一晩燃やすための束の目安、着火の方法も。場合によっては着火剤を用いたり、文明の利器を使ってもいいという説明もあって安心した。

 これはキャンプ経験が浅い人によくあることだが、ついついブッシュクラフト(自然の物を用いてキャンプをすること)のような麻紐、葉っぱ、松ぼっくりなど自然にあるもので火をつけたいと思ってしまいがちだが、牛乳パックや新聞紙など便利な物は使った方がいい。初心者であれば、その方がキャンプ自体を楽しめるからだ。もちろん、ベテランキャンパーであれば自然界にある物をあえて使うというのも楽しいと思う。

知っておいてほしい、焚き火の後始末

 第三章と第四章では、火の育て方から焚き火で作る料理やお酒のことなどが書かれている。焚き火で炊くご飯は美味しいし、焼いた肉も野菜もしかり。肉の脂が真っ赤に燃えた炭に落ち、ジュージューと音を立てれば自然と心が踊る。これは一度経験した人なら分かるはず。キャンプ場の緑広がる絶景で、また川のせせらぎをBGMに味わえたら、さらに美味しく感じるのは間違いない。

「BIKE&CAMP FES2020」の出展メーカーブースの焚き火 Photo: Masato KAMEDA

 この章の中にある「消えかけの焚き火の温度がどのくらいなのか?」の項目は目からウロコだった。これを理解すれば、調理に最適な熾火(炎が上がらずに温度が高い状態)にしたり、暖をとるために炎を上げるようにして一晩中周りを暖かくしたり、思いどおりに火をコントロールすることができるだろう。

 第五章は消火と後始末について。実は一番知っておいてほしいのはここである。キャンプ人口の増加に伴い、マナーが悪い人も増えたと嘆くキャンプ場管理者は多い。自転車キャンプの場合、荷物をミニマムにまとめるためにどうしてもゴミの問題が生じる。無料で引き取ってくれたり、有料でもゴミ袋代だけで安価で受けてくれたり、キャンプ場によって決まったルールがあるので、自己判断で燃えカスや食べカスを処理することは控えてほしい。

寒い夜には自転車キャンパーであれど焚き火が心温まる=「BIKE&CAMP FES 2020」 Photo: Masato KAMEDA

 前述の通り、焚き火がマスターできれば、真冬の自転車キャンプツーリングも何ら問題なくなるだろう。この「焚き火の本」には、焚き火をしたくなる魅力、火をうまく育てるためのノウハウ、知っておくと色々と美味しい‟プラスα”の知識が楽しみながら学べる内容になっている。

 美しい写真が多くムック本のように楽しめるので、自転車キャンパーはもちろん、これからキャンプデビューをしたいと考えているサイクリストにはぜひ読んでもらいたい一冊だ。

 後編では、私が自転車キャンプにおすすめしたい焚き火台と、東京都心部でも焚き火が楽しめるスポットを紹介したいと思います。

<後編につづく>

山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

この記事のタグ

サイクリストへお勧め図書

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

Cyclist CLIP

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載