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昼間岳の地球走行録<70>僕らを英雄のように歓迎してくれた、自転車大国コロンビア

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 コロンビアを走るにあたって一番不安だったのは治安だった。僕がコロンビアを走ったのは2010年だが、その数年前まで、コロンビアの治安は南米最悪と言われるほどで、旅する人が少なかった。しかし2010年には治安は改善され、観光客もたくさん訪れるような国に変わっていた。

コロンビアで初めて上るアンデスの山々は非常に厳しかった Photo: Gaku HIRUMA

アンデス山脈でガラリと変わる環境

 ただ、僕は警戒して友人のサイクリストと一緒にコロンビアを走ることに決めた。安全になってきたとはいえ、ペアランの方が少しでもリスクを減らせると思ったからだった。

 コロンビアの中でも観光地は政府も力を入れて治安の維持に努めていたので大丈夫かもしれないが、郊外で襲われてしまえば元も子もない。僕らは街中よりも郊外で襲われないかと心配していた。コロンビアには普段は普通に仕事をしている人が、週末、特に日曜日になると、バイト感覚で山賊になるという、嘘か本当か分からない話を聞いていたからだ。

 そのため、僕らは土日は走らないようにしようとか、野宿をせずに極力宿を使おうと決め、走り始めはかなり警戒していた。実際に走り始めてみるとそれが完全に杞憂だったことが分かった。その理由は平日はもちろん休日になると本当に沢山のサイクリストに出会ったからだ。コロンビアは自転車大国と聞いていたけど、本当だった。

コロンビアでは平日はもちろん、休日にもなると本当に沢山のサイクリストに出会った Photo: Gaku HIRUMA

 僕はパナマからヨットでコロンビアに入国した。港のあるコロンビアの都市カルタヘナからはしばらくは平地を走り、特に中米と変わらない雰囲気だと思たけど、アンデス山脈に入ってから環境がガラリと変わった。

 山中のこぢんまりとした町で買い出しをしているだけなのに、荷物を満載にした自転車に乗る僕らを見て、まるで偉業を成し遂げた地元の英雄が凱旋したかのように手厚く迎えてくれた。

 町の人から「どこから来た?」「どこへ行くんだ?」「アラスカから来てアルゼンチンへ行く!?」「それは本当か!」「凄いな!」と絶え間なく質問が飛んでくる。小さな町でも自転車好きが沢山いるのだから当然週末は、本当に物凄く多くの人がサイクリングを楽しんでいた。

 ひとたびアンデスに入ればコロンビアはもうずっと山の中を上ったり下ったりの山岳国家だ。こんな環境で幼いころから自転車に親しんでいれば、自転車競技でコロンビアの選手が強いと聞くのも頷ける。

商店で休憩していると、毎回人だかりができる。みな自転車が好きだ Photo: Gaku HIRUMA
山岳国家コロンビア出身の自転車選手が強いというのも頷ける Photo: Gaku HIRUMA

 地元のサイクリストはアンデスの山々の厳しさを身をもって体感しているから、僕らのような荷物を満載にしたサイクリストが現れたら、尊敬を込めて皆が「すごいな!頑張れよ!」と声をかけてくれる。

ひとたびアンデスに入れば、後はずっと山の中を走る Photo: Gaku HIRUMA

 アンデスの道の厳しさに少しでも止まって休もうなら、ここぞとばかりにサイクリストがどんどんと集まってきて質問の嵐になってしまう。こちらとしても「アラスカから来てアルゼンチンへ行くんだ」と高らかに言っている手前、そうやすやすとは休めなくなってしまったくらいだった。小さな山奥の町でも、路上でも僕らを英雄のように迎えてくれたのは世界でもコロンビアくらいで、大好きな国のひとつになった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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