title banner

三船雅彦の「#道との遭遇」<11>紀伊半島を国道371号線の「未知の道」で縦断 道路整備が進む和歌山で残された酷道の魅力とは

by 三船雅彦 / Masahiko MIFUNE
  • 一覧

 長距離のエキスパートでプロサイクリストの三船雅彦さんが、全国の道を普通と違った走り方で紹介する連載「#道との遭遇」。今回は紀伊半島を国道371号線で一気に縦断します。関西のサイクリストには比較的メジャーな「371号線」も、南側は「未知の道」が多く、酷道も多いとのことです。

串本で見る海はご褒美のような景色だった Photo: Masahiko MIFUNE

スタートは「選手時代に使った」キレイな道

 紀伊半島を縦断する国道は前回紹介した国道168号と169号、そして今回紹介する国道371号。紀伊半島をぐるっと回る国道42号をどういう扱いでカテゴリー区分するかはその人次第だが、私的には上記3つが紀伊半島縦断3本セットだ。でもまとめたからと言って何も得しないが。

 169号は南では168号と共有区間があり、熊野付近で42号に入ってから南下が一般的なルートだと考えると168号以外はちょっと3つまとめるほどでもない。371号も南の方では林道が実質迂回路とされているので、そう考えると現時点で紀伊半島縦断は国道168号だけが現実的とも言える。

 371号は河内長野から高野山そして護摩壇山あたりまでは、わりと紅葉の季節を中心に車の往来もあり、関西サイクリストの中でも比較的メジャーな道路だろう。しかし龍神以南となると、途端にSTRAVAグローバルヒートマップでも走行履歴が薄いことでもわかるように、サイクリストの往来はあまりない「未知の道」である。

 これはせっかく371号を走るんだから、これはコンプリート大作戦だろ!と深夜に河内長野を出発。やはり起点から終点まで、って言うのが個人的には気持ちいい。が、さっきも言ったようにそもそも分断国道なのでコンプリートはしないのだが。

国道371号の起点は河内長野の七つ辻 Photo: Masahiko MIFUNE
ここまで書かれると自転車だとウキウキしてくる Photo: Masahiko MIFUNE

 371号は酷道。それを素直に受け入れられないほどにスタートからの道はキレイだ。ちなみに起点の七つ辻付近は、現役の最後に所属していたマトリックス時代の本拠地で、よく通った懐かしい場所。自宅から50km以上自走した練習後に再び自走で帰ったのが懐かしい。最初の紀見峠はきついというほどではない。大阪南部から奈良・和歌山方面に抜けるなら、この紀見峠もしくは紀見トンネルが一番緩いのかもしれない。橋本に降りて紀ノ川を越えるとここからが酷道第1章だ。高野山へのルートなのに、なんと道路なのに車での通行を推奨していない。大型車は走行不可能。これはなかなかひどい。と言いながら喜んでいるが。

紀見峠を越えるとそこは和歌山県だ Photo: Masahiko MIFUNE

「何かあってもきっと高野山が守ってくれる」?

 今回は夜中に橋本から高野山を通過。もしかしたら明るいうちだと景色の見え方は違ったかもしれないが、夜中だとある意味恐怖心は見えない怖さだけで、見える恐怖はない。まぁ「もし何かあってもきっと高野山が守ってくれるだろう」と解釈しペダリングしていく。

 本当は横に誰か立っていたり、足のない人が横で私よりもいいロードで並走していたかもしれないが、それも見えないのだと思えば怖がりようがない。そもそも見えているものが、他の人に見えているのかということになってくると怖がる基準すら難しくなり、そんなことを考えていると怖がっている暇に前に進もうとなってしまうのだが。

高野山へと向かうルートは大型車通行不可能な酷道だ Photo: Masahiko MIFUNE
高野山と言えば大門。夜のライトアップは美しい Photo: Masahiko MIFUNE

気温4℃、上花園神社入口で仮眠

寒さからか空腹からか睡魔が。上花園神社入口で少し仮眠 Photo: Masahiko MIFUNE

 高野山でコンビニをあてにしていたら実は24時間営業ではなく、お腹空かせて到着したのに閉まっていた。あまりのショックにライトアップされた大門を撮影しに行く。空腹のショックかここでこともあろうか371号に戻らず勢いで国道480号で下ってしまった…また次の機会に高野山から花園まで371号を走りに行かねば…。

 高野山から護摩壇山までは元々の高野龍神スカイラインを走っているが、以前は花園経由で箕峠が正規ルート。せっかくなのでトレースしていったが、朝方の低温で上に登るのも寒いし、さてさて…と考えているうちに眠気が…で、上花園神社の入り口で体育座りでひとまず仮眠。小一時間、気温4℃の中で爆睡し再スタート。登っているうちに夜は明けてくる。まぁ理想的なタイムスケジュールだ。夜明けの時間は気温が下がる。その時にスカイラインだと風が抜けて寒いし、箕峠の森の中なら気温はそれほど下がらない。何よりも風が抜けない。

箕峠からは高野龍神スカイライン。現在は国道だ Photo: Masahiko MIFUNE
夜明けを楽しみつつ箕峠へ Photo: Masahiko MIFUNE

 SR600で何度も来ている「ごまさんスカイタワー」で少し止まって太陽の光を浴びる。これだけで体感温度はまったく違う。って爬虫類みたいだな。ちなみに箕峠、ここで気になったのは箕峠の頂上から先、高野龍神スカイラインだったので旧道はどこなんだ?ということ。

 1975年に田辺市から橋本市の区間が国道371号に認定。1982年に河内長野から橋本が繋がり、2003年になってから高野龍神スカイラインが編入されている。ちなみに高野龍神スカイラインは1980年に完成しているので、どうやら護摩壇山を越える国道は元々なく、ここも分断されていたのだろうか。

 高野龍神スカイラインも最初はブナ林など自然への影響も懸念されたことを考えると、ここに大金を投入して一般国道の建設をおこなったとは思えない。この編入されたことで箕峠は国道から外されたのだが、どうも箕峠から先、旧料金所までは旧道というものはなかったのではないだろうか。

高野の山々が素晴らしい Photo: Masahiko MIFUNE

おばちゃんの気分次第で開いてるお店

 ただでさえ分断酷道なのでルート上の最高標高地点である護摩壇山を分断していたとしても不思議ではないし、龍神スカイラインのピークは約1300メートル、龍神までは800mほどを一気に急降下。冷気が溜まってはいるが天界よりはるかにマシだ。で、ここでお腹が空いていることを思い出した。早朝なら国道425号との共有区間の終わるところの古久保商店さんが8時には開いていたし、晩もおばちゃんの気分次第で夜9時頃まで開けているらしい。このあたりネットでは出てこない情報、実際に買い物して直接喋って情報収集するしかない。

国道425号と分岐。酷道コラボだ Photo: Masahiko MIFUNE
林道に入っても国道と変わらない… Photo: Masahiko MIFUNE

 最近の和歌山県内の道路の整備は目を見張るものがあるが、おかげで酷道は減少傾向。371号もきれいな道路の横に旧道が見え隠れして、そちらに進路を変えるときもあるが、中には既に走行自体を制限していたり、跡形もなくなっていることもある。旧道に民家や農地などがない場合は、そのまま廃道になってしまう可能性が高い。

こういう看板を見ると酷道らしさを感じずにはいられない Photo: Masahiko MIFUNE
苔の生えた道。まさしく酷道 Photo: Masahiko MIFUNE

 龍神から南下すると飲食に関して期待はできない。商店も少なくなり、「ここはパスして次でいいか」と通過すると、もしかするとそこが最後の商店かもしれない。ということで強く買っておくことを推奨する。なぜならば、私は通過して腹ペコで串本に到着したからだ(笑)。地図を見ての通り後半は直線区間がほぼないと言えるほどに曲がりくねっている。そのうち進む方角すら麻痺してくるのだが、約60kmにわたって道幅の狭い曲がりくねった道は、地図を見ながら走っていると、海までの距離はそれほどではないのに、自分の位置はそれほど進んでいかない。気が遠くなる感覚というのはこういうことだろうか。

 途中で本山谷平井林道を共有区間としていて、国道371号としては実は河内長野から串本に辿り着くことはできない。しかしこの林道はなかなか曲者で、今回も通行止め看板こそなかったが「通行できます、係員の指示に従ってください」の看板はあったものの、本当にいいの?というレベルだった。係員もいなかったし。落石でグラベルか?と思ったので、ロードで通過するなんて思わないから規制もゆるかったのかもしれないが。だいたいベースの交通量がほぼないので規制する意味も都会とは違うのだろう。

分断部分は通行止めだったが、通行止めでなくても通行できないのだが Photo: Masahiko MIFUNE
串本でようやくコンプリート Photo: Masahiko MIFUNE

 本山谷平井林道のピークは標高700mちょい。串本に向けては一気にダウンヒル!と思いきや、海までは遠い。古座川の一枚岩のあたりでは既に踏まないと進まない。ここだけの話、もうそろそろ海岸線もこっちにやってきてくれよ、と思っていた。予定よりも時間押していたし…。本山谷平井林道では森の匂いを感じながら走っていたが、古座川の、標高を下げたときにふと潮の香を感じる。ここで感じる風はほのかに海風。

 串本町に入るとゴールはもうすぐ。夜中に出発して半日以上走り続け(途中仮眠したが)ようやく完結する壮大なライドだったと感じるのだが、実は371号自体は200km強(旧道含む)。本山谷平井林道は17km。全部足しても250kmにも満たない。距離以上に達成感や疲労感、そして満腹感?も半端ない。

 走ったログを改めて見てみると、168号以上に高い山々をかわしながら、ひたすら南下しているのがわかる。これはまさしく酷道の軌跡だ。この分断国道も今後どんどんバイパス化が進み、いつの日かトンネルが開通してこんなバカな縦断ライドが伝説となる日が来るかもしれない。もう私の人生で二度と371号を縦断することはないだろう。そう思うとより一層感慨深さが増していく。

 あ、やっぱ今度は春にも走ろうかな…。

三船雅彦
三船雅彦(Masahiko MIFUNE)

元プロロード選手で元シクロクロス全日本チャンピオン。今でもロード、シクロクロス、ブルべとマルチに走り回る51歳。2019年に3回目の『パリ~ブレスト~パリ』完走を果たす。2020年はイベントがことごとく中止になり、その腹いせ?に関西圏の道を走り回った。「知らない道がある限り走り続ける!」が信条。

この記事のタグ

ブルベ ロングライド 三船雅彦の「#道との遭遇」

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

Cyclist CLIP

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載