米山一輝さん注目・2020年のニュース「2021年新リーグ開始」をめぐり国内ロードリーグが分裂 プロ化と実業団で揺れた連盟

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 『Cyclist』と関わりのある執筆者が選ぶ「今年の注目ニュース」。元ロードレース選手のライター、米山一輝さんが選んだのは、国内ロードリーグの分裂劇。一体何が起きて、これからどうなっていくのでしょうか。

2021年は国内ロードレースのトップリーグが、Jプロツアーとジャパンサイクルリーグに2分割されることに © JBCF / © JCL

コロナ禍でさまざまな問題が露わに

 コロナ禍に揺れた2020年は、新型コロナ自体の脅威だけでなく、各国やさまざまな組織がそれぞれ抱えていた各種問題が一気に露わになる、そういう年だったように思います。それでかどうか分かりませんが、日本のロードレース国内リーグもちょっと大変なことになっています。これまでJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)でまとまっていた国内リーグが、2つに分裂することになってしまいました。

 思い返せば昨年末の同じ企画でも、新リーグに関することを注目ニュースとして取り上げ、不安と期待が混じりつつも前に進もうじゃないか、という締めをしたのです。しかしそれから1年後の現在、事態は思わぬ方向へと進んでいます。

 ざっくり説明をすると、JBCF内で2021年の新リーグ発足を進めていた片山右京前理事長がその任を解かれてしまい、JBCFから離れる形で新たなリーグ運営会社を立ち上げ、宇都宮ブリッツェンをはじめとする地域密着型プロチームの多くが、新リーグであるジャパンサイクルリーグ(JCL)に移ることになりました。一方のJBCFは新リーグ構想を凍結するとともに「選手ファースト」の新理念を打ち出しています。国内トップチームのなかでも、古くからの“実業団”色の強いチームはJBCF側に残り、国内トップシーンは分裂・分断する形になったのです。

JBCFはレースの「見せる化」から転換へ

 分裂の大きなきっかけになったのは前理事長の更迭劇ですが、これには新リーグ準備にかかわる過大な投資がJBCFの財務状況を急速に悪化させたことが原因の一つとしてあるようです。JBCFでは毎年の決算を公開していますが、2019年度は現金資産が2018年度の約3千万円から約1千万円と、その額を大幅に減らしています。年々減額傾向にあるはずの補助金に大幅な積み増しがあったことで破綻は免れていますが、かなり綱渡りであったことがうかがえます。

 JBCFはその名称の通り実業団リーグが前身であり、大元は自転車関連企業の部活動の場であったそうです。今で言うならブリヂストンやシマノの自転車部が競っていたところ。その後、自転車関連以外の企業チームも参戦するようになり(今で言うなら愛三工業)、企業だけでなくクラブチームが加わり(今ならFIETSとかイナーメ信濃山形とか)、カテゴリーの整備も相まって大幅に登録者数とレース数を増やしました。昔のレースは1カテゴリーのみで、日本代表クラスの選手と選手登録したばかりのレースビギナーが、一つのレースでヨーイドンしていたんですよ…っと昔話はほどほどにして。

 参加者数とレース数が増えて盛り上がったところで登場したのが、宇都宮ブリッツェンなど地域密着型の独立プロチームです。そして実業団スポーツの退潮傾向から、国内のエリート(成年)レースの多くを担うJBCFが、トップリーグのプロ化を図る方向に行くのは、自然な時代の流れと言えるでしょう。

2019年にJBCFが片山右京前理事長のもと発表した「2021年新リーグ開始」は、連盟分裂という結果に Photo: Masahiro OSAWA

 しかし実のところ、JBCFを支えていたのは「レースを走る人本人」、つまり人数の多い下位カテゴリーの選手たちで、トップリーグのレース単体では赤字という構造です。トップリーグの「見せるレース化」、つまりJプロツアーを盛り上げてスポンサーを獲得し、トップリーグ単体で採算軌道に乗せようという試みは長く続いていますが、知る限りうまくいっていません。この構造を改革できないまま、トップリーグに集中した投資を続けることに、連盟全体として「待った」がかかったということです。

 連盟内ではプロリーグ化を強く望む地域密着型チーム以外にも、上記の通りさまざまな成り立ちのチームがあります。とにかく前に進めることで軌道に乗せたいと思うチームと、ある程度の安定性・継続性を担保しておきたいチームと、連盟内で意見が分かれる結果となりました。単純に数だけで見た場合、JBCF内でどちらが主流になるかは想像に難くありません。

分裂により理念は純化

 そうして分裂してしまった国内リーグですが、筆者は外野の人間として、それほど悲観することはないのではないかと考えています。

 まずJBCFの方は、エンタメ要素を一旦排することで、ロードレースを本格的にやってみたいアマチュアにとっての環境は向上するでしょう。Jプロツアーの全体レベルの低下は免れませんが、逆にエリートツアーとJプロツアーのレベル段差が小さくなり、ステップアップしやすくなるかもしれません。また、来年のレースはクローズドサーキットがほとんどになるようですが、連盟の継続性に対する不安は払拭できるでしょう。

 一方の新リーグ(JCL)の方は、結果的に地域密着型チームだけが集まったことで、リーグ内の意思や行動の統一が図れるでしょう。自転車ロードレースの真の国内プロリーグを創設するというのは、かなり困難な仕事であることは間違いありませんが、独立系地域密着型チームの存在意義にかかわる部分なので、強いモチベーションで当たっていくでしょう。

JCLはレースの集客力と収益性の確保がカギに Photo: Ikki YONEYAMA

 分かれてみると、それぞれが目指すものがハッキリして、整理されたように思えます。トップリーグの2分割はねじれ状態ですが、これも長くは続かないでしょう。せいぜい1〜2年くらいじゃないでしょうか。着地点としては、JCLが成功してJプロツアーが吸収されJBCFはアマチュア向けに専念するか、JCLが頓挫してJプロツアーに戻り国内ロードリーグは半アマチュアのままほどほどに続くか、どちらかです。全てはJCLの成否次第。うーん身も蓋もない予測ですね。

 筆者も元関係者として夢のある予測をしたいところですが、知れば知るほど自転車ロードレースというのは儲からないスポーツ(世界的に!)という現実に打ちひしがれています。チームも選手も主催者も儲かりにくく持続可能性がとても低いのです。豊富な資金力を誇っているトップチームが、いきなりチーム存続の危機に瀕したり、実際にチームが無くなってしまったりするのは、ロードレースでは世界レベルですらよくある出来事ですが、普通に考えてみたらまともな業界とは思えません。

 それでもそれぞれ前に進もうとしているのは、それぞれがロードレースの魅力というものを信じているからじゃないかと考えています。そういう根本的な思いを再確認しつつ、今起こっている状況を嘆くよりは、まずは面白がって楽しみにしていきたい思います。

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