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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<367>“リスタート”がテーマの2021年シーズン 思いが込められたトップチームの新ジャージをチェック

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 過去にないイレギュラーなシーズンとなった今年の自転車界。特にロードレースは7月以降にビッグレースが多く詰め込まれることとなり、選手にも、関係者にも、そしてチームにも大きな苦労をもたらした1年だった。そんな年を忘れ、心新たに次なるシーズンを迎えようという動きがロードレースシーンに見え始めている。その要素となるのが、各チームの“看板”ともいえるレーシングジャージ。この数日でトップチームの来季ジャージがいくつも発表されたので紹介しよう。“リスタート”がテーマになる2021年への希望を表したデザインばかりとなっている。

UCIワールドチームが来季2021シーズンのチームキットを続々発表 © Wout Beel / AG2R La Mondiale

ドゥクーニンクはチームカラーのブルーがメインに

 12月に入り、数チームが来季のジャージデザインをお披露目。同上旬のチームDSM(現チーム サンウェブ)に続いて新デザインのジャージを公開したのが、ドゥクーニンク・クイックステップとグルパマ・エフデジだ。

ドゥクーニンク・クイックステップのジャージには苦難に満ちた2020年からの脱却との意味合いが込められる。力強さを表すネイビーやウルフヘアデザインも特徴的。モデルを務めるサム・ベネットもお気に入りのよう ©Wout Beel

 ドゥクーニンク・クイックステップは、苦難に満ちた2020年から脱することをコンセプトに、ブルー基調のデザインに新調。今年はホワイト基調だったが、「チームカラー」であるブルーの配色を増やし、さらには力強さをアピールするネイビーを“復活”させた。加えて、チームの恒常的なテーマである“ウルフパック”の精神を表す、ウルフヘアデザインが肩付近にあしらわれる。

 今年もジャージサプライヤーはフェルマルク社。約20年にわたって同チームをサポートし、機能性だけでなく、スタイリッシュに魅せるためのチームの取り組みを支えてきた。同社のCEOであるマルク・フェルベーク氏は、「何年間もチームとともに歩んでいるが、当初からわれわれはウルフパックファミリーの一員であると思っていた」と述べ、その思いを新ジャージにも込めたことを強調。選手たちにも好評のようで、エーススプリンターのサム・ベネット(アイルランド)は、「新しいキットの大ファンになった。ネイビーは本当に上品。アイコニックなブルーがジャージ上部に記されているところも気に入っている」と喜ぶ。さらには、彼にとってのヒーローであるトム・ボーネンの名を挙げ、「彼はこの色合いのジャージで数々の成功を収めてきた。来シーズンに着用し、すべてのレースで可能な限り最高の状態で走りたい」と“ネクスト・ボーネン”を目指す誓いを新たにした。

 グルパマ・エフデジは、従来通りフランス国旗をイメージしたトリコロールをベースとするデザイン。腹部にはこの3色を使ったストライプがデザインされ、全体的にはシンプルなつくりになった。

 チームが配信したプロモーションムービーでは、アルノー・デマール(フランス)、シュテファン・キュング(スイス)、ケヴィン・ゲニッツ(ルクセンブルク)が着用するそれぞれの各国チャンピオンジャージもお披露目。これらは、チームの敬意として主要なスポンサーロゴを取り除き、各国の国旗ベースのカラーリングのみのデザインとなっている。

新スポンサー獲得のアージェードゥーゼールは大幅にデザイン変更

 男女同時にデザインを発表したのは、トレック・セガフレード。

男女同時にジャージデザインを発表したトレック・セガフレード。基本デザインは今年までと変わっていない Photo: Trek - Segafredo

 サンティーニがジャージサプライヤーを務める同チームは、男子は基本デザインが変わらず。肩から胴にかけてのホワイト・レッドの配色は引き継がれる。一方で、女子は部分的に変更され、ホワイトだった胴部分を胸部と同じアクアブルーを採用。

 男子のデザインが数年にわたって大きな変化がないことについて、サンティーニ社のデザイナーであるブライアン・リンドストローム氏は「来年のキットデザインはここ数年間の進化系だが、2014年のトレック・ファクトリーレーシングのピンストライプ付きのホワイト・ブラックのデザインが今見てもミニマムで美しいものだと感じている。現在も考え方は同様で、クリーンかつミニマム、そして時代を超えたものが重要だ。サイクリングのようなスポーツでは、プロトン内でチームを特定できることが何よりも大切なことだと思っている」と述べ、その意図を示している。

 なお、サンティーニ社が供給するチームキットは、環境に配慮したリサイクル素材を使用。自動車などからの視認性を高める蛍光イエローのトレーニング用ジャージも継続して選手たちに提供される。

新たなスポンサーも加わり、ジャージのイメージも一新したアージェードゥーゼール ラモンディアール。2021年シーズンからはAG2R・シトロエンとして活動する Photo: AG2R La Mondiale

 これまでのイメージから大きく変化するのが、来季AG2R(アージェードゥーゼール)・シトロエンとして活動する、アージェードゥーゼール ラモンディアール。

 今年までは、アージェードゥーゼール ラモンディアール社のコーポレートカラーであるホワイト・ブラウン・アクアブルーがベースとなっていたデザインだが、これからはホワイトを基調にメインスポンサー2社の名を斜めに配置。両社は胴部のほかに肩にもその名が記されるが、アージェードゥーゼール ラモンディアール社がブラウン、シトロエン社がレッドでカラーを統一。アクアブルーはアージェードゥーゼール ラモンディアール社のロゴを除いてほぼカットされている。

 5カ月をかけてつくられたという今回のジャージデザイン。チームマネージャーのヴァンサン・ラヴァニュ氏は、「このジャージはライダーからスタッフ、そして経営陣に至るまで、チーム全体を結び付けるもの。ファンにとっては視覚的な面で注目できるものでもある。この結果(ジャージの完成)に非常に誇りに思っている」と述べる。

 このジャージデザインの発表には、チームのクラシックエースであるオリバー・ナーセン(ベルギー)を筆頭に、新加入のグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー)、ブノワ・コヌフロワ(フランス)らも登場し、クラシックチームとしてのムードを高めている印象。さらに、今年のグランツールで活躍したナンズ・ピータース(フランス)、こちらも新加入のボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)といった山岳リーダー候補もラインナップ。大幅にチームカラーが変化するであろうフレンチチームの顔がそろい踏みした。

 見た目の明るさを感じさせるのは、ボーラ・ハンスグローエ。これまでは肩から胸部にかけてブラック基調だったが、ライトグレーに一新。腹部と背部は今年までと同様に、紋章を思わせるシェブロンパターンが採用されるが、背部のポケットのみグレー配色を強めて、チームのバイクサプライヤーであるスペシャライズド社、ジャージサプライヤーのスポーツフル社、それぞれのコーポレートロゴを浮き立たせている。

ボーラ・ハンスグローエはメインカラーをライトグレーに。機能性かつデザイン性にもこだわりを見せる © BORA - hansgrohe / Sportful / Chiara Redaschi

 チームマネージャーのラルフ・デンク氏は、「ワールドツアーチームとして、最優先すべきはパフォーマンスにある。スポーツフル社は長年にわたって、私たちと協力して非常に高速な素材を開発してきた」とコメント。同時に、「ファンやライダーにとって印象的なデザインもアピールしていきたい。2021年シーズンのメインカラーとしてライトグレーを選択したのは、そのような理由にある」とジャージについて説明した。

 このほどチームが配信したPRムービーには、ダニエル・オス(イタリア)を筆頭に、ペテル・サガン(スロバキア)、パスカル・アッカーマン(ドイツ)らエース格が登場。新たなジャージに高揚する姿をイメージさせている。

 ジャージから“国家プロジェクト色”を匂わせているのは、来季バーレーン・ヴィクトリアスとして活動するバーレーン・マクラーレン。今年までのルコル社に替わり、ナリーニ製のジャージに選手たちは身を包むことになる。

バーレーン・ヴィクトリアスは同国のカラーにインスパイアされたレッドがメイン。野心と楽観主義を世界へとアピールしようと意気込む Photo: Bahrain McLaren

 今季はオレンジがインパクトを与えたジャージデザインだったが、バーレーンの国旗にインスパイアされたレッドがベースに。これには同国の野心と楽観主義を世界に示す目的があるといい、チームが進むべき新章を表しているそう。チームの創設者であるナーセル・ビン・ハマド・アル・カリファ王子は、「サイクリングは献身・規律・忍耐力を必要とする最もチャレンジングなスポーツの1つ」と述べ、バーレーン・ビクトリアスの姿勢として、「最高レベルでの刺激を受け、勝利することを目的としたパフォーマンスファーストのチームを構築するわれわれのビジョンを反映する」とも。

 なお、腹部にはバーレーンの国営石油会社「バプコ」のロゴがプリントされ、国策としてのチーム支援の色合いを今まで以上に強めている。

 チームの強い意志やスポンサーの意向が反映されるジャージのデザイン。今後も発表になったチームから随時紹介していくので、楽しみにしていてほしい。

今週の爆走ライダー−オレリアン・パレパントル(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロとして2年目のシーズンを終えた24歳。今年からは本格的にステージレースでの上位進出を狙っての走り。1週間程度のステージレースではトップ10入りを経験し、「総合上位を狙う」と公言して走ったジロ・デ・イタリアでは個人総合16位。トップとは大きく水を開けられてしまったが、メンバー的に下馬評が決して高くはなかったチームにあって、上位陣に離されまいと懸命に食らいついたことは高く評価された。

2021年シーズンのチームキットに身を包み笑顔のオレリアン・パレパントル。ステージレーサーとして飛躍を誓う Photo: Vincent Curutchet / AG2R CITROËN TEAM

 とはいえ、「反省すべきことはたくさんある」と今シーズンを振り返る。本当はツール・ド・フランスのメンバー入りを目指していたが、パンデミックによるシーズン中断からの持ち直しに失敗。メンバー選出に必要なテストレースで結果を残せず、ツールデビューはお預けになった。それでも腐らずにジロへとフォーカスして調子を上げてみせたが、目標設定の難しさを実感する1年だった。

 ロマン・バルデやピエール・ラトゥール(ともにフランス)といったグランツールレーサーの退団や、新規の大型スポンサー獲得によってチームの方向性が一気に変わりそうな2021年シーズン。メンバー的にもクラシックレースが重視されそうなムードだが、総合力で勝負したい自身にとってはチャンスありだと見る。「どんな時だって総合成績を意識している」という姿勢は来年、どんな成果として表れるだろうか。

 山岳での強さだけでなく、タイムトライアル能力の高さも魅力。かつては「どれをとっても平均的」と言われ、ビッグリザルトに恵まれないことにもどかしさを感じたこともあるが、自らのスタイルを見つけ始めてからは周囲の声に悩まされることもなくなった。ジュニア時代からのライバルであるダヴィ・ゴデュやヴァランタン・マデュアス(ともにフランス、グルパマ・エフデジ)といった選手たちが、別のチームで走っていることも大きなモチベーション。かねがね彼らとの比較を問われてきたが、「彼らは早くから好結果を残しているけど、いずれは僕もそのレベルに追いつけると思うよ」。明確になりつつあるビジョンがよりクリアになるのが、2021年であると信じて走る。

ジロ・デ・イタリアでグランツールデビューを飾ったオレリアン・パレパントル。個人総合16位からさらなる躍進を目指す Photo : Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

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