全日本選手権・シングルスピードで出場の腰山さん手記シクロクロス競技に見る、チューブレスとチューブラーの最新使い分け法とは

by 腰山雅大 / Masahiro KOSHIYAMA
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 自転車競技において、機材の変化、進化は観戦する側からしても楽しみなポイントの一つです。シクロクロスにおいても伝統的なチューブラー(TU)タイヤかチューブレス(TL)タイヤを選択するかは、競技者にとって勝負に関わる生命線とも言えます。BMXをバックボーンに、シクロクロス競技トップカテゴリーで活躍、緻密で分かりやすい競技リポートが人気のKossyこと腰山雅大さんにTLとTUの選び方について語っていただきました。

今年も全日本選手権に出場、1日目はSSCX、2日目はエリート男子へ参戦した Photo: Kei Tsuji

2020年全日本シクロクロス選手権で感じたこと

 泥や砂浜などを走るレースとして知られるシクロクロス競技。かれこれ国内トップカテゴリー(カテゴリー1)に足を踏み入れて5年を数える私だが、初年度から恒例としているのが全日本選手権への参加だ。

 全国から腕に覚えのある選手が集う場であり、ピリピリとしたムードが常に漂う比類なき境地。私の場合、レースは変速機のないシングルスピードというバイク、通称SSCX(シングルスピード・シクロクロス)で戦っており、全日本においては土曜日のSSCXと日曜日のエリート男子両方を走るのが恒例行事となっている。

1日目の様子。雨でとにかく路面がぬかるみ滑りやすかった上、ランや乗車での走行ラインもまだこの時点ではできあがっていなかった Photo: Kei Tsuji

1日目、2日目で一変するコンディション

 どの年にも言えることだが、シクロクロスは日をまたぐと、とにかくコンディションが変わってしまう。3年前の野辺山は前日完全にスノークロスだったが次の日はマッド。2年前のマキノはその逆。今回の舞台である長野県飯山は両日共にマッドだったが、土や泥の状況は全く異なっていた。ただ、そのコンディションに合わせてバイクのセッティングを考えるのもレースに参加する楽しみのひとつである。

シクロクロスにおけるタイヤの種類。海外での主流はチューブラーだが少しずつチューブレスも増えているといった状況、日本ではチューブラーを使っている割合は上位層では高く、エントリーユーザーではとても少ない

 とりわけ肝になるのはタイヤだ。シクロクロスでは走る状況に合わせてタイヤを選ぶことが標準的な作法となっている。その中で選択肢を分断しているとも言えるのがチューブレス(TL)とチューブラー(TU)の存在である。TLはリムとタイヤで空気を密閉してチューブを使用しないもの、TUはケーシングと呼ばれる外皮で中のチューブをぐるっと覆ってしまい、リムにはセメントで貼り付けてしまうタイプのものを指す。両者はシクロクロスの世界で相入れない存在として知られている。たとえば「泥用」「ドライ用」は分けて使うが、「TL」「TU」が双方をあらかじめ準備され使い分けられることは多くない。

2日目はマッド用のチューブレスタイヤで挑み、タイヤの性能を生かした走りができたと感じている Photo: Kei Tsuji

欧州ではいまだTUが主流

 というのも、シクロクロスの本場ヨーロッパではTUが標準的な装備品として選ばれており、油圧ディスクや電動変速などが加わった最新の機材の中でもいまだ手作りのTUタイヤをリムに接着している状況なのだ。一方TLは新興勢力的な立場であり、MTBなどのノウハウが活用されて商品化されたものも多い。アメリカなどでは、チーム単位でTLを使用しワールドカップ上位に食い込む選手を見つけることもできる。

 伝統的なTUか、コストや運用面に利点があるTLか、この論議は至るところで見受けられる。

 自分の運用方法を引き合いに出すと、ここ数年はTL/TU両方のホイールを用意していて、幅広くタイヤを選べるようにしている。いろいろ考えもあるのだが、前述の飯山でコンディションが変貌する中選んだタイヤの種類のおかげで、偶然その特性に気がついたのでここに記しておきたい。

 まずは全日本選手権での話について。土曜日開催のSSCXは前日夜から降り続いた雨でコースはとにかくドロドロ。レース中も雨は断続的に降り続き、路面はどこも緩い状態だった。常に路面が滑るため、タイヤはTU一択だった。空気圧を下げればタイヤの表面でグッと粘ってくれる安心感が外せないチョイスだった。(無理言ってホイールとタイヤを貸してくださったネクストステージ島本さんにこの場でお礼を述べたい。)

 一方日曜日のエリート男子では、晴れ間がのぞき日中は暑く感じるほどまで気温があがった。つまり泥は粘土化し、轍が鋭く立つような状況となっていた。轍の深い場所ではとにかく泥が至るところにまとわりつく。細身で面圧の低いTLで路面抵抗を減らす方が良かった。実際走ってみて選択肢としては間違っていなかったし、箇所箇所で得意を生かしながらタイヤを転がせていたと思う。

TU、TLのチャート表を公開

 そこで更に思考を発展させ、気がついたことを下記チャートにまとめてみた。とても乱暴な振り分け方だが、これが今回の結論でもある。

おおざっぱではあるが、タイヤのタイヤの性格とコースの特徴を表にしてみた。天候はあくまで自然のものなので、気温や雨の量によってかなり変化してしまうが、過去自分が走った印象でまとめている

 縦軸は路面状況で「ドライ」~「マッド」、横軸は路面のグリップ感で「グリップ低」~「グリップ高」に振り分けている。マッドは前述の通りだが、ドライでも砂が浮いていて滑りやすかったり、乾いた土など滑ることがほぼない状況もある。例えば、飯山土曜のように土と水が混じり滑りやすい状況であればTUのようにしなやかで路面との接地面積を稼げる方が良い。しかしそうなると抵抗が増えるので立ち上がりでもたつく。実際、飯山では舗装路で低速から加速という状況が多かったが、明らかにTLの方が楽に感じた。

チューブレスタイヤ使用前。パナレーサーのALBIT TLCを選択 Photo: Masahiro Koshiyama
チューブレスタイヤ使用後。全面ゴムのチューブレスだと、レース後のケアもそこまでシビアではなく、汚れを洗い流せばまた同じ状態で使用できる Photo: Masahiro Koshiyama

 つまり同じ「マッド」でも、期待するタイヤ性能は路面状況によって変わるし、TLの良さ、TUの良さはそれぞれ存在する。ドライでもしっかりグリップする路面であれば抵抗は低い方が良いし、TLの方がコンディションに則している場合もあると考えている。TUでもある程度空気圧を上げれば路面抵抗が下がるが、上げすぎるとポンポン弾むのでとても走りにくい。実際プロ選手たちのレースリポートを読むと、全日本では普段TUしか使っていない選手がTLを出してきたり、TUを使っていても普段より高い圧で調整していたという事実も確認できた。

 ちなみに選択肢がTUのみに限られる世界も理解できる。ワールドカップなどを見ていると全選手が一定以上のスキルを兼ね揃えているため、必然的に最短ラインに轍が1つだけ、そこを通ることが最低条件というような状況が多い。そうなるとTLとTUで特性が違うので進入速度やタイヤの限界点が変わって轍をトレースしづらいというデメリットがある。要するに周りと機材を揃えておかないと、レースは走れるが勝負にならないという意味だ。これがヨーロッパのトップ選手がこぞってTUにしている理由だと思っている。

細かいタイヤの使用感やニュアンスを言語化するのは難しいが「こんな傾向がある」と言った参考になれば幸いだ Photo: Kei Tsuji

 ただアマチュアにおいて何本もホイールを用意するのはコスト的に難しい。自分を例にすればTU1セット、TL1セットを用意していて、TLは路面状況でタイヤだけ交換するというチョイスをしている。例えばTUはオーソドックスなパターンのものを選んでおいて、極端な路面状況の時だけTLを使うなど。そうすればホイール2セットでタイヤ4品目くらいの組み合わせを試すこともできると思う。

 結論としてまとめると、TUだけが勝負を分ける世界も存在するが、国内に関していえばTLでも対応できるケースは多い。予算的にもTLの方が負担が低いのも事実だ。大事なことは、現在使っているタイヤの利点をはっきり把握して、コースに合わせた運用とタイヤの性能への信頼を深めていくことだとまとめたい。

腰山雅大
腰山雅大(Kossy)

自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て、数年前からシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動が注目される。All-City Cyclesのライダーとしてシングルスピードで国内トップカテゴリーを走っている。コーヒーやクルマの造詣も深い。

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