「レンタル x サイクリングガイドツアー」世界の基準作りへe-BIKE サイクリングガイド研修がコナステイで初開催 車種による操作法、問題点などを確認

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 サイクルツーリズムの普及にとって非常に重要なツールとなるe-BIKE。そのガイドツアーが全国各地で行われるようになってきている。電動アシストは高齢者やスポーツバイクビギナーにとって、坂道や悪路で心強いツールになる。サイクルツーリズムを国内に広めるべく活動する日本サイクリングガイド協会(JCGA)が12月11日に伊豆長岡で行ったe-BIKEガイド技術研修会に参加。e-BIKEに初めて乗るビギナーを引率するガイドツアーでの注意点と楽しみ方について聞いた。

狩野川沿いをe-BIKEで試走する田代恭崇さんらJCGA一行。後ろには見事な富士山が顔を出した Photo: Kenta SAWANO

 今回の研修会は、注目度が高くなっているe-BIKEを使ったツアーを想定し、それを引率するサイクリングガイドの視点で、実際のツアーコースに近い環境でe-BIKEに乗って、利点や注意点を洗い出すというもの。昨年完成した伊豆半島のサイクリスト向けホテル「KONA STAY(コナステイ)伊豆長岡」に同一車種のe-BIKEをメンバー全員分持ち込み、模擬ガイド走行を繰り返して検証された。また、コナステイにある複数車種のレンタルe-BIKEにも試乗し、それぞれの車種の特徴や車種ごとの違いなどを把握しながら引率における注意点を確認。JCGAの技術教本やマニュアルに今後追加されるe-BIKE項目の叩き台を作ることが目的だった。

今回の講習の拠点となったコナステイ伊豆長岡 Photo: Kenta SAWANO 
出発前には各部の点検やモードの確認が行われた Photo: Kenta SAWANO

各分野のスペシャリストが集合

 研修会にはJCGAのサイクリングガイド4人が参加した。メンバーは代表理事の渋井亮太郎さん。理事で検定主任を務めるリンケージサイクリング代表の田代恭崇さんはロードレースアテネ五輪代表としても知られる。平塚吉光さんも昨年までプロロード選手で、コナステイのサイクル事業部マネージャー就任と同時期にJCGAメンバーとなった。そしてJCGAの協力母体の一つであるジャイアントのツアー事業を担う下松幸人さんも、この11月にJCA公認サイクリングガイド検定にパスしている。サイクリングツアー事業者、自転車競技のトップ選手、自転車メーカーなど、様々な経験をバックボーンに、それぞれの立場からe-BIKEツアーにおける注意点がリストアップされていった。模擬ガイドツアーを振り返りながら、ポイントごとの注意点を振り返ってみたい。

e-BIKEガイド講習に参加したJCGAのメンバー。左から渋井亮太郎代表理事、ジャイアントの下松幸人さん、田代恭崇理事、コナステイの平塚吉光さん Photo: Kenta SAWANO

地元ガイドとして平塚さんが引率

 会場となったコナステイの平塚さんが設定したコースは、2つのヒルクライムを含む10kmコースと、約5kmの上りと長い下りが主体の20kmロングコース。どちらも平塚さんが現役時代に練習したという急坂の上りを含んだものだ。最初は全員がGIANTのクロスバイクタイプのe-BIKE「ESCAPE RX E+」で5kmコースを1周。コースを覚えながらアシストの感覚を足で体で覚えた。通年でガイドツアーを行うほか、各自治体の自転車施策のアドバイザーなども務める田代さんも「私もe-BIKEツアーはまだこれからなのですが、すでに各自治体からの引き合いが多いです」と話した。

① タイトターンでの急激なアシストに注意

タイトなターンでは急激なアシストに注意が必要だった Photo: Kenta SAWANO 

 コナステイを出発し、まずは狩野川沿いのサイクリングロードまで土手を登りながらUターンで入った。斜度のある坂を登り切って、一安心してUターンすると、アシストが急に効いてやや急発進した。「Uターンした後の加速は要注意ですね」と渋井さんが注意を促した。この場合はやはり事前に、「急カーブを曲がったあとのアシストに注意してください」などと、出発前のブリーフィングか信号待ちなどに説明しておくべきだろう。

 平塚さんが現役時代に練習したという2カ所の急坂の上りでは「ESCAPE RX E+」のアシスト具合を確認した。剛性が高いフレームに、重心も低く、アシストも低速から高速域までしっかり効く感覚。上りでも安定したアシストで強くペダルを踏まなくても後ろから押されている感覚だった。

コース2周目以降は、複数のメーカーのe-BIKEを4人で乗り比べながら模擬ガイド走行 Photo: Kenta SAWANO 

複数車種のe-BIKEが混在すると…

 2周目には試乗するe-BIKEに1車種を追加。すると上り坂で4人の隊列にばらつきが出始めた。これは各メーカーによる電動アシストユニットの違いによるものだった。いま現在、ツアーに使われているe-BIKEは、自治体や観光協会、コナステイなどの事業者がレンタサイクルとしてまとめて導入した結果、同一車種であることが多いが、これからは複数の車種が1つのグループに混在するツアーも増えるとJCGAは想定。e-BIKEの楽しさやメリットを生かしつつ、ツアーとしてのまとまりや安全性を保つにはどうすれば良いか検討した。今回のライドでは以下のような対処が考えられた。

② 車種によるアシスト設定の違い

車種によるアシストの“味付け”の違いが上り坂で顕著にあらわれた Photo: Kenta SAWANO

 e-BIKEは時速24kmで電動アシストが完全にオフになるが、今回2車種目に乗ったミヤタサイクルのCRUISE(クルーズ)は、体感的には時速20km手前でほぼ切れてしまい、そこからしっかり踏めばまたアシスト感が戻るような印象だった。一方、GIANTのESCAPE RX E+は時速22kmくらいまでアシストしてくれて、しっかり踏まずとも足を置くだけで進む印象だった。「今回のようにアシストが強いバイクと弱いバイクが混在する場合、ガイドの方からモード設定を指定する必要がありそうです。例えばGIANTをエコ+(アシストの強さが上から3番目)くらいのモードにすれば(ミヤタサイクルの)クルーズと釣り合うかもしれないですね」(渋井さん)。

 3周目は20kmのロングコース。5kmほど続く長い上りでは、車種によるアシスト特性の違いが顕著に現れ、車間距離にバラツキが生じた。車種ごとに斜度や速度域によって得意不得意があり、特に少し速めの速度域では全員が同じ速度で走り続けることが難しいことが確認できた。

長い上りでは車種による差が出てきた。もっとも、昨年まで現役ロードレース選手だった平塚さん(手前)はどこまでも笑顔だし、かつての全日本勝者である田代さん(手前から2人目)もそもそもアシスト不要なのかもしれないが(笑) Photo: Kenta SAWANO

 この点において田代さんも「通常のバイクでのガイドでは参加者のレベルに応じてスピードを考えていたが、e-BIKEを使ったガイドでは体力よりも、(参加者が乗る車種や、設定(モード)によってのスピードの変化に気を使うことになりますね。これは新しいガイドの形です」と手ごたえを感じていた。

長い下りでは車間距離を十分に取ってダウンヒルした Photo: Kenta SAWANO
赤く色づいた山々の間のワインディングロードを進む Photo: Kenta SAWANO

 終盤は、多少のアップダウンはあるものの概ね下り基調でダウンヒルを快調に楽しんだ。この速度域ではアシストが完全オフのため、スポーツバイクとしての高速安定性などを確認することになった。今回はダウンチューブに一体型バッテリーが入っているタイプのバイクのほうが低重心で安定していたように思う。なお、ディスクブレーキがついているとはいえ、通常のバイクより重いため、当たり前のことだがスピードの出し過ぎには気を付けたい。

 最後は伊豆長岡の市街地をゆっくり進み、コナステイに戻った。今回のメンバーは自転車上級者が多かったのでバイクの取り回しなどで問題は生じなかったが、田代さんによると、ビギナーはしばらく走った後に自転車から降車するときが一番危ないため、注意が必要だという。

③ 降車時、乗車時に注意すること

コナステイに帰着。重量のあるe-BIKEは、降車時に注意が必要だ Photo: Kenta SAWANO

 自転車の重量があるので、年配の方は降りる瞬間が一番バランスを崩しやすく危険だという。「止まって降りるときの足の着き方が大事になってきます。乗り降りについてはしっかり教えないといけないです」(田代さん)。実際、筆者が昨年取材した愛媛県今治市のシニアe-BIKE教室でも、実技の最初にまず、乗車降車時の注意が徹底して教えられていた。アシスト力の代償としてバッテリーによる重量増がそれなりにあること、それだけ自転車が倒れやすくなることを事前に感じてもらうことが大事になる。

 また休憩を終えて再スタートする時にも車種による「アシストモード」の違いに注意が必要だった。10分以上の休憩をすればほぼ全ての車種がオートオフになるのだが、そこから電源オンにした最初のモード設定がメーカーごとに違う。例えばジャイアントはエコモードからスタートし、ミヤタはアシストオフからスタートする。

 一言で言えば、参加者の安全のためにも、サイクリングガイドには、これまで以上に車種についての理解、説明が必要になってくる。

④ブリーフィングで操作説明に時間を

今回の研修ではライドごとに参加者が感じた注意点が共有された

 JCGAではガイドから参加者へのブリーフィングを乗車前に15分ほどで簡潔に行う。その日のスケジュール、乗車前点検、交通ルール、ハンドサインなど、安全のための情報共有が行われるが、e-BIKEの場合は、それに加えディスプレイ類の操作方法、アシストモードの説明など、さらに共有事項が増えてくる。

 今後、サイクリングツアーの現場でe-BIKEが登場する機会が増えていくのは間違いない。そこでJCGAは、ツアー現場での実績に優れるGIANTのe-BIKE「ESCAPE RX E+」を十数台導入し、e-BIKEツアーについてのノウハウ蓄積を急ピッチで進める計画だ。JCGA登録サイクリングガイド向けのe-BIKEガイド講習会のほか、提携先であるジャイアントとともに開催するジャイアントストア発着のe-BIKE体験ツアー(2021春からスタート予定)、e‐BIKEを主軸とするサイクルツーリズム開発など、事業分野でもe-BIKEを積極的に展開していくという。

 「導入事例も増えており、自治体からの要望も多い。地方でのサイクルツーリズムを考えるなら、レンタルe-BIKEでのガイドツアーはもはや不可避とさえ言えるでしょう。」(田代さん)

 「重量面で配送や輪行でのハードルが高いe-BIKEだからこそ、逆説的にレンタル事業での存在価値が明確になる。また、普段自転車に乗らない人でも山の頂上に行けるということは、すなわち安全に誘導する人的サポートにも市場価値が生まれるということ。今回、e-BIKEツアーの当事者である平塚さんのガイドを体験してその価値を確信できた。まだ過渡期の今のうちに準備することでインバウンド再開時の武器になるのはもちろん、国内観光客向けのアクティビティとしてもe-BIKEガイドツアーの訴求力は大きいと思う。」(渋井さん)

 なるほど、e-BIKEの真価は「レンタル x サイクリングガイドツアー」という領域でこそ発揮できると腑に落ちた。JCGAにはぜひこの世界の基準づくりを急いでもらいたい。
(提供:日本サイクリングガイド協会)

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