泥まみれの長野・飯山で熱戦全日本シクロクロス 男子エリートは沢田時、女子エリートは今井美穂が優勝

by 織田達 / Satoshi ODA
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 シクロクロス日本一を決める第26回全日本選手権が11月29日、長野県飯山市にある長峰スポーツ公園で行われた。男子エリートのレースでは沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が、序盤からの織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)とのデッドヒートを制して、4年ぶり2度目のエリート王者に輝いた。

フィニッシュで雄叫びをあげる沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と後ろでうなだれる織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Satoshi ODA

沢田、織田がハイペースのバトル

 このコースで全日本選手権が行われるのは2015年以来5年ぶり。コースの大きな特徴として、信州シクロクロスミーティングのシリーズの時にスタートの時だけ使用する約200mの直線を周回路に組み込み、階段後のスロープの横に設定された龍がうねっているようなキャンバーセクションが追加された。

 ピットの横に置かれたシケインは高さ40cm、4mの間隔。1周約2.9km、高低差30mの丘陵地形に設定されたコースはこれでもかと言わんばかりにキャンバーセクションが多く、そして長い。マスターズクラスが行われた28日(土曜日)は一日を通して雨が降り続き、水分をたっぷり吸収したキャンバーは日本のトップライダーたちを苦しめた。

男子エリートスタート後泥区間に横山航太(シマノレーシング)が先頭で入ってきた Photo: Satoshi ODA

 男子エリートにはJCXナショナルシリーズを転戦するシクロクロストップライダーたちに加え、11月8日に自身12度目のMTB-XCOのタイトルを獲得した山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)も出場した。

 レースのスタートは午後2時10分。前日の夜まで降り続いた雨に加えて、前日とこの日午前中に行われたU15&U17、男女ジュニア、そして男子U23のレースによって、表面を覆う芝が完全に剥ぎ落とされ泥がむき出しになった状態。さらにはその泥が完全に足首まで埋まってしまうような個所も多数あった。エリートカテゴリー出場選手だけに許された昼の試走でもラインはできず、ヘビーマッドコンディションは変わらなかった。

ボトルネックとなっているため後方ではラインの奪い合いの結果、大渋滞が発生する Photo: Satoshi ODA

 出走した67人が並ぶ最前列には前年チャンピオン、3連覇を狙う前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、前年U23チャンピオン、エリート1年目の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、2017年チャンピオンの小坂光(宇都宮ブリッツェン)、2011〜2015年5連覇した竹之内悠(ToyoFrame)、2016年チャンピオンの沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、2017年、2018年全日本選手権2位の横山航太(シマノレーシング)、そしてMTB-XCO12度の王者、山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)ら、地元長野の兼子 博昭(スワコレーシングチーム)の8人。

 ホールショットを奪ったのは沢田。泥区間を抜け舗装路を経てピットを前を通過したのは竹之内、横山、沢田、前田、小坂、織田、少し間を置き山本、丸山の順となる。

飯山のシンボルとも言えるスロープを背景に先頭争いする沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Satoshi ODA

 その後キャンバーの上り区間で沢田が登坂力を生かし先頭に立つとそれに前田が続いた。山の裏側のつづら折りで前田が泥に脚を取られ転倒すると織田が2番手となる。階段を上りスロープを下る頃には沢田と織田が若干リードを奪うと、その後は3位以下との差を徐々に広がった。

飯山が苦手と公言していた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がランでも粘り沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)を逃がさず、差が付かなかった Photo: Satoshi ODA
毎周回ピットでバイクチェンジをするライダーが多く、ピット作業は2014年の菅生大会を彷彿させる Photo: Satoshi ODA
差が付かぬままファイナルラップに突入する沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Satoshi ODA

 単独3番手で前の2人を追うのは竹内遼(FUKAYA RACING)。しかしドッグファイトを繰り広げる沢田と織田は必然的にスピードが上がり差は詰まらず広がる一方。常に前にいることがこのコースで勝つ方法だと語った沢田は、織田に前に出られてもすぐさま先頭を奪い返す。勝負はファイナルラップまでもつれた。

3位に入った“ほぼ”地元の竹内遼(FUKAYA RACING) Photo: Satoshi ODA

 階段セクションで織田が前に出るとスロープを下りきった時に決定的かと思えるような差ができたが、直後に織田はスプリントに向けて軽いバイクに乗り換えるためピットに入った。ここで「階段が終わってからペダルキャッチも上手くできたので慌てなかった」と語る沢田が再び前に出た。

 最後の泥のスラローム区間で沢田は冷静にラインをブロック。ほぼ並んで舗装路に出てスプリントとなったが、沢田の掛かりが良く織田の追撃は及ばず。沢田が2016年の宇都宮大会以来4年ぶり2度目の日本一に輝いた。

フィニッシュ後倒れ込む沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)。レースの激しさを物語る Photo: Satoshi ODA
4年ぶり2度目の日本一となった沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling) Photo: Satoshi ODA

 この希に見る泥レースの完走者は僅かに10人。いかに過酷なコースであったか、いかにドッグファイトを繰り広げた先頭の2人がハイペースだったかが解る。

今井が“最後の全日本”で逆転優勝

 男子エリートのレースに先立ち行われた女子エリートは23人が出走。第1コーナーで今井美穂(CO2bicycle)が松本璃奈(TEAM SCOTT Japan)のリアタイヤにフロントタイヤを斜ってしまい、転倒を避けるため両方のペダル外すトラブルが起きた。上りになっているため急激に失速しほぼ最後尾までポジションを下げてしまう。

タンクトップ姿のコーチから応援を受け先頭を行く輿那嶺恵理(OANDA JAPAN) Photo: Satoshi ODA

 初めの泥区間を抜け舗装路を行くのは、小林あか里(信州大学)と松本のU23カテゴリーの2人。舗装路でのスピードを生かし輿那嶺恵理(OANDA JAPAN)が追いつき、山の裏側で乗車でチャレンジする小林と松本をランで抜き去り先頭に立ちリードを広げる。

ラン区間で消耗する輿那嶺恵理(OANDA JAPAN)の背後に今井美穂(CO2bicycle)が迫る Photo: Satoshi ODA

 同じくスタートで躓いた今井も2番手に浮上し與那嶺を追うが、対面通行区間のネットにバイクを引っかけてしまうなど、集中力が途切れてしまいそうなミスを連発する。しかし3周回目に今井は落ち着きを取り戻し、ランで消耗する與那嶺との差が縮まり始め、階段に入る手前でついに與那嶺を捉えた。離れまいと追撃する與那嶺だったがミスが出始め、せっかく詰め寄った距離も再び広がった。

今井美穂(CO2bicycle)が冷静さを取り戻しトップを奪取。最後のキャンバーセクション。後方の輿那嶺恵理(OANDA JAPAN)でミスし、届きそうな距離まで追い詰めた距離が再び広がった Photo: Satoshi ODA

 今井はそのまま先頭でフィニッシュ。2017年の野辺山大会以来、3年ぶり2度目の日本一となった。ゴール後今井は泣き崩れ、多くの関係者から祝福を受けた。2位には與那嶺が、3位にはU23カテゴリーの小林が入った。

シクロクロスレース2度目で3位に入り健闘した小林あか里(信州大学) Photo: Satoshi ODA
フィニッシュ後泣き崩れる今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA

 優勝した今井は昨年東京オリンピック代表チケット獲得のため海外遠征準備で昨年のシクロクロス全日本選手権は出場を見送っていた。オリンピック代表候補となり、さらには男子の山本と同じく先頃のMTB-XCO全日本選手権で3連覇を達成したばかり。目標であった東京オリンピックで競技生活に一端区切りをつけるとのことで、これが最後の全日本選手権となった。

お互いの健闘をたたえ合う今井美穂(CO2bicycle)と輿那嶺恵理(OANDA JAPAN) Photo: Satoshi ODA
3年振り2度目の日本一となった、これが“最後の”全日本選手権と語る今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA

 男子U23ではカテゴリー1年目の鈴木来人(BonneChance Asia Cycling Academy)が優勝候補と目されていた村上功太郎(松山大学)の猛追を逃げ切り初優勝。また、男子ジュニアでは村上裕二郎(松山工業高校)が、女子ジュニアでは渡部春雅(駒澤大学高等学校)が、それぞれ昨年に引き続きジュニアタイトル2連覇を達成した。

U23カテゴリー1年目でチャンピオンとなった鈴木来人(BonneChance Asia Cycling Academy) Photo: Satoshi ODA
男子ジュニア2連覇を達成した村上裕二郎(松山工業高校) Photo: Satoshi ODA
2年連続ジュニアチャンピオンとなった渡部春雅(駒澤大学高等学校) Photo: Satoshi ODA

 UCIカテゴリーのレース結果は以下の通り。

男子エリート(7Laps)
1: 沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling) 1:00:13
2: 織田 聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) +0
3: 竹内 遼(FUKAYA RACING) +0:01:29

女子エリート(4Laps)
1: 今井 美穂(CO2bicycle) 0:43:50
2: 輿那嶺 恵理(OANDA JAPAN) +0:00:22
3: 小林 あか里(信州大学) +0:02:30

男子U23(5Laps)
1: 鈴木 来人(BonneChance Asia Cycling Academy) 0:47:26
2: 村上 功太郎(松山大学) +0:00:43
3: 中村 龍吉(acu-power RACING TEAM) +0:01:44

男子ジュニア(4Laps)
1: 村上 裕二郎(松山工業高校) 0:38:59
2: 柚木 伸元(朝明高校) +0:01:36
3: 副島 達海(Limited Team 846) +0:01:48

女子ジュニア(3Laps)
1: 渡部 春雅(駒澤大学高等学校) 0:36:37.7
2: 中島 瞳(Limited Team 846/KURE) +0:00:57
3: 大蔵 こころ(松山城南高等学校) +0:02:41

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