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栗村修の“輪”生相談<193>30代男性「チーム練習で1人ローテーションが下手な人がいて扱いが難しいです」

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 いつも楽しく拝見させて頂いてます。集団走行のローテーションについての相談です。

 自分は自転車歴5年目でチームメートとローテーションしながら練習をよくするのですが、1人ローテーションが下手な人がいます。その人は超加速しながら先頭に出るので後ろのメンバーは付くのに非常に苦労します。

 自分は集団のペースが乱れるのが嫌なので脚はあるのですが、敢えて付かずに一定のパワーで踏むようにしています。やんわりと後ろ付いてないよとは言うのですが「もしかしてもう脚無くなっちゃったの? 俺強すぎてゴメンね」的な雰囲気を出してくるので心外です。

 正直一緒に走ってると疲れるので乗り方を変えて欲しいのですが、年上の方なので扱いが難しいです。色々な組織での経験豊富な栗村さんならではの角の立たない伝え方があれば教えて頂きたいです。よろしくお願いします。

(30代男性)

 まずお断りしなければいけないのは、道交法上の「併進」に相当するローテーション(先頭交代)は公道ではNGだということです。もちろんレースでは重要なテクニックであるわけですが、それはクローズされたコースでの話です。ローテーションの練習は、必ずクローズされたコースで行ってください。

 さて、ご質問です。ローテーションはレースを走るなら極めて大切なテクニックなのですが、アマチュアでローテーションの「作法」をご存知の方は非常に少ないようです。

 中でもアマチュアのローテーションでの「あるある」が、先頭に出るときに加速してしまうパターン。質問者さんのパターンは極端ですが、テンションが上がるのか、ペースを上げてしまう人が多いんですよ。

 そこで、まずはローテーションの基本をお伝えします。

 ローテーションには一列と二列の二種類があります。一列のローテーションは、一人一人が先頭を引く時間が長いパターン。それぞれの選手が、たとえば数十秒や1分ずつなど先頭を引くと、自然と一列になりますよね。

 一列のローテーションは、①ローテーションをする人数が少ないとき②メンバーの脚力が揃っていないとき、に使われます。人数が少ないとそもそも二列にはできませんし、人数がいても脚力差があるとペースが合わないので、やはりおのずから一列になるわけです。あ、あと、テクニカルなサーキットなどだとやはり一列になりやすいかな。

プロレーサーは脚力だけでなく集団の組織力やペーシングにも優れている Photo: Yuzuru SUNADA

 今述べたパターンの相当しない場合では、先頭に向かって上がるラインと先頭を引き終えて下がるラインが並ぶ、二列のローテーションが使われます。要するに使いどころが限られるのが二列のローテ―ションなんですが、上手くやれると物凄く楽で速いのも二列です。

 というのも、二列なら先頭を引いて下がるときにも自分の前に他の選手がいますから、風を受けるのは先頭に出て横へスライドする一瞬で済むんです。

 ただし、速いだけに難しいのも二列のローテーションです。一列以上にペースを守らなければいけません。ちょっとでもペースを乱すとたちまち二列のローテーションが崩壊しますから、質問にあるような困った方の走りは、完全な迷惑行為となってしまいます…。

逃げ集団で多く見ることができる二列ローテーション。より多くの選手が先頭に立ちハイペースを維持する Photo: Yuzuru SUNADA

 というわけで、一列・二列を問わず、ローテーションをするときにもっとも大切なのはペースを変えないことです。どうしても無意識のうちに速度を上げがちですが、絶対ダメです。他の人が脚にきますし、ローテーションが崩壊しかねません。元気が有り余っていてどうしてもパワーを使いたいなら、一列のローテーションにしてずっと単独で先頭を引っ張ってください。もちろん一定ペースを守るのは前提ですが。

 さて、それで問題の年上の方をどうするかです。もしその方が単に速く走ろうとしているなら、急加速するその方には先に行ってもらって、その後ろで残ったメンバーで淡々とローテーションを回すのがいいでしょう。その方がトーマス・デヘントでなければ、そのうち脚が無くなって降りてくるでしょうから。しかし、おそらくその方は速く走りたいというより、力を見せつけたいマウンティングタイプだと思いますからちょっと厄介です。

 じゃあ、こうしましょうか。皆でローテーションをはじめる前に、これから「インターバルトレーニングをしたい」のか「ローテーション走行の練習をしたい」のか目的を明確にするんです。そして、例の方がローテーション中にもし先頭で急加速をしたら、「今日はインターバルトレーニングの日なんですね! やっぱり強いなあ」などと、走りの目的が質問者さんたちとは異なることをはっきりさせた上で認めてあげるのがよいように感じます。そうすれば、その方の承認欲求を満たしつつ、皆がやりたいことと違う走りをしていることをやんわり伝えられるかもしれません。

 実際、ヨーロッパのレースでもたまに新人などが気合を入れすぎてローテーションを乱してしまうのですが、そんな時は罵声が飛んできますし、ローテーションから外されてしまうことすらあります。プロにとってのローテーションはそれほどまでに重要なんです。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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