教えて! 安井先生<11>お尻に合うサドルはどのように見つければいいのでしょうか?
今回のお題
Q:ロードバイクを始めて数年になりますが、いまだに数時間走るとお尻が痛くなります。お尻に合うサドルはどのように見つければいいのでしょうか?

A:片っ端から試してみるしかありません。
以上終了。
…というのが本当のところなんですが、さすがにぶっきらぼうにすぎるので、ちょっとしたヒントになりそうなことを書かせてもらいましょう。
サドル探しの前にチェックしたいこと
まず、サドルを選ぶ・試す前にやってほしいことがあります。それは、「ちゃんとサドルに座れているか」をチェックすること。変な座り方をしているなら、お尻が痛くなる原因は「座り方」にあるのであり、「サドルそのもの」ではありません。いくらサドルを交換しても解決しません。
ローラー台でペダリングしているところを後ろから動画で撮影し、骨盤が傾いていないか、レーサーパンツのセンターの縫い目が左右どちらかにズレていないか、腰回りの動きが左右均等かなどをチェックしてみてください。
また、サドル表面の摩耗や、レーサーパンツの生地の擦れが左右均等かどうかを見てください。人間の体には左右差があるものなので、完璧に左右均等にするのは難しいかもしれませんが、擦れ跡や摩耗があまりに左右不均等だったら、座り方を見直す必要があります。
変な座り方をしていたのでは、いくらサドル探しの旅をしても無駄です。
いろんなサドルを試すのは、ちゃんと座れるようになってから。そうしないと、サドル代が無駄になってしまいます。
座り方の修正は、素人がいくら試行錯誤しても遠回りにしかなりません。プロのフィッターなどに相談するのが一番の近道だと思います。

サドルの歪みがないか
もう一つのポイントは、サドルの歪みです。
バイクをスタンドで立てて、ハンドルを真っすぐにした状態で、サドルを真後ろから見てください。結構な割合でサドルは左右どちらかに傾いています。ハンドルとサドルとの間隔を見ると分かりやすいでしょう。

おそらくペダリングの左右差や座り方の左右差による荷重の差異が蓄積し、歪んでしまうのだと思われます。落車の衝撃で歪んでしまうこともあるでしょう。僕が以前使っていたサドルは、チェックしたら左右で高さが1cmほども違っていました。それでも気付かずに乗っているんですから、人間の感覚ってあてにならないものです。
怖いのは、気付かずにそのまま使っていると身体が歪んだサドルに合ってしまうこと。1cmも歪んでいたサドルを使っていたとき、歪みのない新品サドルに付け替えたら違和感がものすごかったです。歪んだサドルに体が合ってしまっていたのでしょう。
サドル探しに出かけるのは、それらを全部チェックしてから。
穴があってフカフカなサドルが快適とは限らない
サドルの判断材料には、各部の曲線、幅、穴の有無、上面のカーブ、表面の柔らかさなどがあります。よく「穴があってフカフカなサドル=快適」と思われていますが、そうとは限りません。お尻の痛みに悩んでいたある人が、試しにペラペラでカチコチなフルカーボンサドルを試してみたところ、実はそれがシンデレラのガラスの靴だった、というケースもあります。セオリーにとらわれず、ショップのレンタルサドルなどを活用しつつ色々と試してみてください。
めでたくお気に入りのサドルが見つかったら、モデルチェンジやカタログ落ちに注意しておきましょう。モデルチェンジによって座り心地が激変してしまうサドルは少なくありません。
なくなることが分かったら、何個か買いだめしておいたほうがいいかもしれません。僕はセライタリアの旧型SLR(とっくに廃版)を愛用しているのですが、ウチには新品同様の旧型SLRが10個以上あります。たぶん一生もつでしょう。
お尻の痛みを解消する最後手段
最後に、誰でも簡単にお尻の痛みを解消する方法をお教えします。
「速く走る」です。
走行中、体重はサドル・ハンドル・ペダルに分散されています。スピードを上げれば上げるほど、ペダルに荷重が集中し、サドルから荷重は抜けます。ゆっくり走る=サドルにどっかり座る、速く走る=サドルにお尻を軽く乗せている、くらいの違いがあるわけです。
年間に何万キロ走る某選手は、「普段痛くなることなんてないけど、ビギナーに合わせてゆっくり走るとすぐお尻が痛くなる」と言ってました。だから走り込むうちにどんどん強くなって(パワーが上がって)、結果的にお尻の痛みが解消された、ということだってあるはずです。
どんなプロセスを経るにせよ、質問者さんのサドル探しの旅が早く終わるよう祈っています。
大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。