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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<364>次世代スターが2021年の活躍誓う トップチーム注目の若手厳選ピックアップ<2>

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 前回に引き続き、UCIワールドチームを中心に有力チームで飛躍を誓う注目の若手を紹介していこう。第2弾となる今回は、ドゥクーニンク・クイックステップ、EFプロサイクリング、グルパマ・エフデジ、イスラエル・スタートアップネイション、ロット・スーダル、ミッチェルトン・スコットから、来季時点で25歳以下のヤングライダーをチョイス。これまでの実績を含め、筆者目線で各選手の期待値を図っていきたい。いずれのチームも来季に向けた陣容が固まりつつあり、今回紹介する選手たちの立ち位置も明確になってきている。(紹介する選手はいずれも2021年シーズン所属予定チーム。ただし、選手・チームの事情により移籍するケースがあることをご理解ください)

ラ・フレーシュ・ワロンヌでの大逃げで一躍注目度をアップさせたマウリ・ファンセヴェナント。次世代スター候補の1人として世界的に期待が高まっている © 2020 Getty Images

ビッグクラシックで大逃げの21歳は来季エース候補へ

21歳のマウリ・ファンセヴェナント。次々と実力者が台頭するドゥクーニンク・クイックステップにあってどんな成長曲線を描くのか楽しみ © Sigrid Eggers | Deceuninck - Quick-Step Cycling Team

 次々とニューヒーローを生み出すドゥクーニンク・クイックステップ。22歳のホアン・アルメイダ(ポルトガル)がジロ・デ・イタリアで個人総合4位、20歳のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)もステージレースにワンデーレースにと結果を残している。そんな彼らに続く存在となりそうなのが、マウリ・ファンセヴェナント(21歳・ベルギー)だ。なんといっても、ラ・フレーシュ・ワロンヌでの長距離逃げは、彼の可能性と将来を予感させるセンセーショナルな走りだった。フィニッシュ前20kmから独走し、残り4km地点での落車がなければどんな結末になっていたか…。その答えは、今後明らかになっていくだろう。

EFプロサイクリング期待のスピードマン、シュテファン・ビッセガー。2019年にはUCIロード世界選手権アンダー23ロードレースで銀メダルを獲得している =2019年9月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 中根英登の加入で、これまで以上に日本からの注目度、そして応援が増えるであろうEFプロサイクリング。若手・中堅・ベテランとバランスよく実力者をそろえるチームは、今年8月に合流したばかりのシュテファン・ビッセガー(22歳・スイス)のスピードに期待がかかる。ジュニア時代からトラック競技で年代別のトップを走り、その脚力を生かしてロードではスプリントとタイムトライアルを得意とする。今シーズンはイレギュラーな日程となった関係で、ハイレベルのレースを走る機会が限られてしまったが、昨年はUCIロード世界選手権アンダー23ロードで2位。「若手の登竜門」ツール・ド・ラヴニールでは同年ステージ1勝、そのほかにもアジアやオセアニアでの武者修行も経験し、レースに対する幅の広い視野を持つあたりも有望だ。

ワンデーレースからグランツールまで活躍の場が得られそうなヴァランタン・マデュアス。2021年シーズンは今年に続くツール・ド・フランス出場も目標となる =ツール・ド・フランス2020大6ステージ、2020年9月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 平坦から山岳まで広く活躍の機会を確保しているグルパマ・エフデジ。なかでも、ヴァランタン・マデュアス(24歳・フランス)は今年、ワンデーレースを中心に上位戦線を走った。ラ・フレーシュ・ワロンヌでは11位、ツール・デ・フランドルでも14位と健闘。例年混戦となるパリ~トゥール(UCI1.Pro)では4位と、ハードなレースなるほど力を発揮する印象だ。昨年はジロで個人総合13位となるなど、本来はグランツールレーサーとして期待されている選手。同い年のダヴィ・ゴデュ(フランス)がツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャで好走し、その走りを確かなものにしているが、まだまだ次なる存在も控える。マデュアスにとっては、地元ブレストで開幕するツール2021出場も大きな目標となる。

日本のレースを経験したスプリンターもワールドクラスへ飛び込む

2020年2月のヘラルド・サン・ツアーで山岳を中心に好走を連発したセバスティアン・バーウィック(左)。のちにジロ・デ・イタリアで活躍するジェイ・ヒンドレー(中央)にたびたび攻撃を仕掛ける積極性を見せた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 現在進行中のストーブリーグ(移籍市場)において、順調な補強で来季の陣容をほぼ固めているのがイスラエル・スタートアップネイション。経験豊富な選手の合流が次々と決定していく中、数年先を見据えたヤングライダーの獲得にも積極的だ。そのうち、セバスティアン・バーウィック(20歳・オーストラリア)は、将来的にグランツールで上位を狙うことになるであろう逸材。今年は2月のヘラルド・サン・ツアー(オーストラリア、UCIオセアニアツアー2.1)で個人総合2位。このときに個人総合優勝を収めたのが、のちにジロで快進撃を披露したジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ)。そのヒンドレーを相手に、山岳ステージで再三再四攻撃を仕掛けたのがバーウィックだった。ヒンドレーには勝てずも、他のワールドクラスのライダーを上回ったクライミングは、トップチームが争奪戦を繰り広げるには十分すぎるものだった。

スプリンターの層が厚いロット・スーダルではステファノ・オルダーニが順調に成長。2021年シーズンはプロ初勝利に期待がかかる =ジロ・デ・イタリア2020第14ステージ、2020年10月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ここ数年で世代交代に成功している印象のロット・スーダルは、地元ベルギー勢にとどまらず、豊かな国際色で軸となる選手を養成する。これから楽しみな存在としては、ステファノ・オルダーニ(22歳・イタリア)を挙げたい。ここまでのキャリアでは未勝利だが、今年のジロではトップ10入り2回。大物スプリンターとも遜色のないスピードを誇り、あとはポジショニングや彼を支えるリードアウトがハマれば、いつでも勝てそう。カレブ・ユアン(オーストラリア)を頂点とする平坦路線に新たな駒が加わり、盤石の“スプリント王国”建国の日も近い。

プロデビューイヤーで2勝を挙げたカーデン・グローブス。ミッチェルトン・スコット得意のスプリントを担う存在となりそうだ =ヘラルド・サン・ツアー2020第5ステージ、2020年2月9日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ミッチェルトン・スコットは、お家芸のスプリントが勢いづきそう。今年プロデビューしたカーデン・グローブス(21歳・オーストラリア)は、すでに2勝を挙げており快調な滑り出し。8月のチェコ・ツアーとツール・ド・ハンガリー(ともにUCIヨーロッパツアー2.1)ではリーダージャージ着用も経験。今年は無理しない方針もあり、グランツールは回避したが、ヘント~ウェヴェルヘムやツール・デ・フランドルを走り、将来的にはスプリントと北のクラシックが活躍の場となる見込み。チームは来季、マイケル・マシューズ(オーストラリア)の復帰もあり、スピードを武器にした戦いに期待が高まる。ちなみにグローブスは、2017年から2018年にかけてアジアを主戦場としており、ツール・ド・熊野への出場で2度来日も果たしている。

今週の爆走ライダー−ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 先に紹介したグローブスとは同い年(1998年生まれ)。ミッチェルトン・スコットの将来を背負って立つ男となりそうな1人が、ロバート・スタナードである。

プロ2年目を終えたロバート・スタナード。将来的にクラシックレースでの活躍が見込まれている =ドワーズ・ドール・フラーンデレン2019、2019年4月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 武器は強いキック力。短くて急な上りとあれば、一発で勝負を決められるアタックが魅力。アンダー23カテゴリーでは、2018年のイル・ロンバルディアのヤング版「イル・ピッコロ・ロンバルディア」で優勝。昨年のプロ入り以降は未勝利だが、ミラノ~サンレモやツール・デ・フランドル、パリ~ルーベと、ビッグクラシックを経験。リザルトはともなわなかったが、首脳陣の評価を得るに値するだけの走りはできたという。

 そしていよいよ、飛躍の時を迎えようとしている。グランツールデビューとなったブエルタでは、3度のトップ10フィニッシュ。特に上りスプリントで決した第10ステージの5位は、大きな自信になったという。大会の開幕前から狙いを定めていたこともあり、このステージが近づくにつれてプレッシャーに押しつぶされそうだったことをレース後に打ち明けたが、満足できる結果を残したことでフィジカル・メンタル両面で強さを自覚。トップシーンで戦える手ごたえをつかんだ。

 チームとの契約が2022年まであることも、心身の余裕につなげる。来季は本格的に、狙いを定めたレースでの上位進出へ、さらなるチャレンジの1年がやってくる。

 そんなオーストラリア期待のヤングマンだが、実のところ両親はニュージーランド人。自身はシドニーで生まれ育ち、オーストラリアの育成システムの下で走ることを希望し国籍を変えたという経緯を持つ。こうしたケースは同国ではそう多くはないそうで、異色のライダーとしてクローズアップされた時期もあるのだとか。

2018年・2019年とジャパンカップ サイクルロードレースに出場したロバート・スタナード。日本でも馴染みのあるライダーだ =2019年10月20日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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