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栗村修の“輪”生相談<192>30代男性「プロ選手がスポンサー外のパーツを使っても大丈夫なんですか?」

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 今年のツール・ド・フランスも当初は未開催に終わるかとヒヤヒヤしましたが、無事に選手達は全ステージを走り通し、とても劇的な展開に終わり、歴史の1ページとして語り継がれるんだろうな…と感動しているところです。

 今回のツール・ド・フランスに限らず、プロ選手の中にはスポンサー外のコンポーネントやホイールを使用する場合がありますよね。一昔前にはビッグプーリーや楕円チェーンリングもそのようにこっそり(?)使われていたような記憶があります。

 そこで質問なのですが、

1)そもそもスポンサー外のパーツを使うことは禁止なのでしょうか。
2)使う上でロゴを塗りつぶしたり様々な努力が垣間見えますが、違約金であるとか、物言いがつくであるとか、そういった不利益もあるのでしょうか。
3)噂に聞く、市販品と同一に見えるが実は中身が別物というパーツ(カーボンの中身が違う等)も存在するのでしょうか。

 やはり機材スポーツを嗜む身としてプロの機材事情に興味が尽きません。是非御回答をいただけましたら幸いです!

 最後になりますが、毎号大変勉強になり、また時に大笑いさせていただいております。これからもこのコーナーが末長く続きますよう祈念させていただきます。

(30代男性)

 機材が好きな方には気になりますよね。契約外パーツ。

 原則、スポンサー以外の機材を使うのは禁止です。スポンサーは機材をチームに供給し、使ってもらうことでパーツの宣伝をしているわけです。そして機材供給にプラスしてお金も払います(機材供給のみの場合はサプライヤーと呼ぶことが多いです)。

 でも、チームが他社のパーツを使ったらどうでしょう? 機材供給の意味がありませんよね。ですから、ほとんどの場合は、チームとスポンサーの契約に「他社のパーツの使用は禁じる」という内容があります。

 僕も選手としても監督としても契約をきっちり守る方でしたが、選手時代に一度、契約外の機材を使ったことがあります。

 それはシューズ&ペダルでした。どうしても僕の足に合わなかったんです。足に合わないシューズを使い続けることパフォーマンスの低下に直結しますから、僕はチームサプライヤーに許可をもらい、他社のシューズ&ペダルを使っていました。こういうケースもあるんです。

 ただし、そのときはロゴは消しませんでした。ロゴを消すと変に目立ってしまい、むしろ逆効果になるというチームサプライヤー側の判断があったわけです。

 その後、僕が監督になってからも、選手たちから「他社の機材を使いたいです!」という申し出はありました。が、もちろん基本的には許可しませんでした。

 もっとも、現役時代の僕のように、「体に合わない」という理由で他社のものをやむを得ず使いたいパターンならば一考の余地があります。合う・合わないは性能の問題ではなく、相性の問題だからです。怪我や大幅なパフォーマンスダウンに繋がる状況はスポンサーも望みませんので。

ツール・ド・フランスでロゴを消したホイールを使用するイネオス・グレナディアーズ Photo: Yuzuru SUNADA

 でも、ご質問にあるように、他社のビッグプーリーやホイールを使うのは一番マズい例です。だってそれって、スポンサーの商品の性能に不満があると言っているようなものじゃないですか。

 もちろんそういうチームがあることは知っていますが、もしかすると契約時点で、スポンサー外パーツの使用については取り決めがあるのかもしれません。無断でやるのはリスクが大きすぎますから。

 あと、スポンサーとチームとの力関係も大きいでしょうね。たとえば国内チームが大手部品メーカーに対して「上りのレースではオタクじゃなくて〇〇〇のホイールにしますね」とは言えません。決して。

 でも、たとえばチームイネオスがパワーデータなどを持ち出して「このステージであなたがたのホイールを使うと勝率が××%しかない。しかし△△社のホイールなら勝率がこれだけ上がるんだ。そのほうがオタクのパーツも露出できますよ」と理詰めで迫れば、あるいはOKをもらえるのかもしれません。

 ちなみに大手部品メーカーの弱み(もちろん強みでもある)として「品質管理」という要素があります。要するにさまざまな使用環境下においても壊れずに正常に使い続けることができるという保証のことです。ですので、例えば「体重70kg以下の人が100回使うところまでしか想定していません」みたいなパーツを製造することはできません。レースで多少速くてもそれが壊れてしまえばそれ以上のマイナスとなってしまいます。大手部品メーカーには作ろうと思えば作れるけど敢えて作らないという事情があったりもするのです。

 最後に市販品のように見えて実は別物、というケースについてですが、基本的にはないでしょう。というのも、ロードバイクはモータースポーツとは違い、たとえ1億かけてロードバイクを作ったとしても、たぶん150万円の普通のハイエンドと性能にあまり違いがないからです。

 但し、フレームに関してはワンオフのものが存在している可能性は十分にあります。少し前には、春先の石畳を走るクラシックレースでエース級にだけは重くて屈強な特別なフレームを供給していた…といった例はあったようです。いずれにしても大きなチーム限定ですが。

 勝つために妥協を許さない時代になった…というのは間違いありません。これもパワーメーターや空力などデータに基づいた戦いが主流になったせいでしょうか。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

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 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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