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昼間岳の地球走行録<67>自転車旅で感じたエクアドルの優しい文化と険しい峠道

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 スペイン語で「赤道」を意味するエクアドルは、その名の通り赤道直下にある南米の国だ。赤道直下だけど、気候的にはとても過ごしやすかった。2010年当時はとても物価が安く、食堂で定食を食べても2~3ドルに収まった。宿も一泊5ドルほどと、とても旅がしやすい国だった。

エクアドルの首都・キト。世界遺産にも登録されている美しいコロニアル都市だ Photo: Gaku HIRUMA

日本にない声かけの文化

 日本にはない文化でとてもいいと感心したことは、食堂でご飯を食べていると、ご飯を食べ終えて出ていく人、これからご飯を食べに入ってくる人たちが、僕のテーブルを通り過ぎる際、「Buen provecho!」(ブエンプロベッチョ)と声をかけてくれることだ。

 これは「美味しく召し上がれ」とか、「食事を楽しんでね」という意味がある。日本人からすると、このセリフは料理を作ってくれた人が言うイメージだが、エクアドルではとにかくテーブルを通り過ぎる人ほぼ全てがそう声をかけてくれた。

南米の食堂でご飯を注文すると、ランチの定食のようになっていて、写真のような感じでご飯が出てくる。このボリュームで2010年当時1.75ドルと、とても安かった Photo: Gaku HIRUMA

 初めは戸惑ったが慣れてくると「Gracias!」(ありがとう)とにこやかに返す。その一連のコミュニケーションがとても心地良かった。

 ある日、僕が道路脇の牧草地でお昼ご飯にラーメンを作って食べていたときのこと。たまたまコレクティーボと呼ばれる乗合いバンが止まり、お婆さんが下りてきた。きっとこの牧草地の所有者で、この奥に自宅があるのだろう。こういうときは不審がられないように、先に笑顔で挨拶するのが鉄則だ。にこやかに「ブエナース」(こんにちは)と挨拶をすると、お婆さんもにこやかに「ブエナース。ブレンプロベッチョ」と返してくれた。私有地で僕のような知らない外国人がラーメンを食べているにも関わらず、不審がることもなく「良い食事を」と言えるなんて、とても素敵な人達なんだと思った。

 この挨拶は南米全土で使われていたけど、ここまで皆が言ってくれるのはエクアドルくらいだった。たったそれだけのことかもしれないけど、国の印象は大きく変わる。そんな居心地の良さがあるいい国だが、自転車で走るのはなかなか厳しかった。いい国なのでもう一度行きたいけど、ちょっと自転車ではもう走りたくないかなと思わせるのも、エクアドルくらいだ。そう思わせるのはは道路の作りにある。

国ごとに違う道路の作り

 実は道路の作りは国によって様々な個性がある。お隣のペルーでは九十九折りの坂が永遠と続くけど、傾斜は緩い。一方エクアドルは傾斜がとにかくきつくて直線的だ。そして険しいアンデスの山々をとにかく上っては下らせた。山岳国家なので仕方がないのだけど、峠の上から景色を見ると「これは谷沿いに道路を作れたのでは?」と思うこともしばしばだった。

 厳しい峠を上り切った後、いったん谷底に降りて橋を渡りその先の山に道が続いている。下り坂も傾斜がきついのでブレーキを握る手がパンパンになる。その先に壁のように立ちはだかる上り坂。本当に毎日毎日この繰り返しになる。丘陵地帯でも直線道路が多く、一度下がっては上るを繰り返す。

海外では露頭を補強しないでそのままにしておくことが多い。危ないとは思うけど、その土地の成り立ちを想像してとても興味深い Photo: Gaku HIRUMA

 そのとき、下りは極力スピードを出して次の上り坂に備えるのは当たり前なのだけど、エクアドルは見通しが良く傾斜もあるためスピードが出る。一度最高時速81.9キロを記録したことがある。フルパッキングの自転車では驚異的な速度だった。それだけエクアドルの傾斜はきつかった。

直線的な道でアップダウンがとても多かったエクアドル。見通しも良く、最高時速は81.9キロにも達した Photo: Gaku HIRUMA
谷を下って再び峠道に入る。上り始めは本当に坂が壁のように見える Photo: Gaku HIRUMA

 そんな傾斜の国だからかエクアドルではよく坂の途中に車のスピードを減速させるための「スピードバンプ」(減速させるための道路の凹凸)が設けられているので、本当に注意が必要だ。気づかずに走っていたら大事故に繋がってしまう。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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