五輪代表内定の2人が完勝 MTB全日本クロスカントリー 男子は山本幸平が6連覇、女子は今井美穂が3連覇
第33回全日本自転車選手権大会マウンテンバイク(DHI/XCO)が11月6〜8日の3日間、長野県富士見町富士見パノラマリゾートで開催された。最終日に行われたXCO(クロスカントリーオリンピック)競技で、男子エリートは山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)が6連覇、女子エリートは今井美穂(CO2bicycle)が3連覇を達成した。
フィニッシュ後バイクを掲げうれしさを表現する山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) Photo: Satoshi ODA
山本が12度目制覇で有終
今年の全日本MTBは、当初10月に秋田県田沢湖で開催が予定されていた。しかし東京オリンピックの開催延期、世界選手権大会と日程が被るなどしたため、会場をこの富士見パノラマリゾートに変更し日程も変更になって開催されることとなった。
XCOのコース長は約4.4km。基本的には基本コースから大きい変更はないが、富士見名物「大岩」の前後の取り回しが変更になったり、リフト下を抜けた後にジャンプが必須となる段差が追加されたりしていた。
山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)を倒すラストチャンスを物にしようと男子エリートがスタート Photo: Satoshi ODA
午後1時30分にスタートした男子エリートは5周回で争われた。沢田時(チーム ブリヂストンサイクリング)が先頭でスタート後の上りのストレートを引くが、林間セクションに入る頃には山本が先頭に代わりレースをリードするが沢田も粘る。
2周目には平野星矢(チーム ブリヂストンサイクリング)が2人に追いつき3人パックになりかけたが、林間セクションを単独で上ってゲレンデに現れたのは山本1人だった。沢田と平野は2人パックとなり山本を追うが、その差は詰まるどころか徐々に開いていった。
山本幸平を追う平野星矢と沢田時(ともにチーム ブリヂストンサイクリング) Photo: Satoshi ODA
富士見名物「大岩」を越える山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) Photo: Satoshi ODA
山本幸平に次ぐラップタイムを刻み続けた北林力(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) Photo: Satoshi ODA
「この時期の全日本選手権は初めてで難しいコンディションの中で、今できる走りをした」と言う山本は誰も寄せ付けず、6年連続通算12度目のタイトル獲得した。一方山本を追っていたブリヂストンの2人はファイナルラップに沢田が先行したが、フィニッシュラインに先に帰ってきたのは平野の方だった。
また、男子エリートの2分後にスタートした男子U23で優勝した北林力(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)は山本幸平に次ぐラップタイムを刻み、エリートより1周少ない4周でフィニッシュする時点で全体の5番目まで順位を上げる力強い走りをした。
山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)の優勝コメント
優勝者インタビューに応える山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) Photo: Satoshi ODA
(コロナの影響で)長いシーズンになってしまったので、自分自身どうやってコンディションを合わせたらいいか分からない部分が多かったので、国内のレースを数戦走れたことが今日に繋がったかと思います。勝たないといけないということは僕自身すごく分かっていて、スポンサーはじめ家族が本当に応援して支えてくれているので苦しい練習も耐えられたので、やって当たり前だと思って挑みました。プロとして勝利を求めて走る全日本選手権は最後だったので、来年はマウンテンバイクが大好きな山本幸平として出場したいと思います。
男子エリートポディウム Photo: Satoshi ODA
表彰式終了後メディアのインタビューを受ける山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) Photo: Satoshi ODA
6年連続通算12度目のタイトルを獲得した東京オリンピック代表候補の山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) Photo: Satoshi ODA
今井が次世代の挑戦を退け優勝
男子エリートの前に行われた女子エリートのレースはエリート、U23、ジュニア、マスターズと4つの女子カテゴリーが同じスタート。周回数は違えどまさしく日本一決定戦となった。
コースに新たに加わった段差をトップで通過する今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA
今井、川口に次いで序盤3番手を走った女子ジュニア優勝の渡部春雅(駒澤大学高等学校) Photo: Satoshi ODA
1周目前半は今井、川口うらら(FUKAYA RACING)、渡部春雅(駒澤大学高等学校)の各年代のトップとも呼べる3選手が先行。今井、川口のフィジカルが勝るペースについて行けず渡部が遅れると、今井、川口のマッチレースとなった。
女子エリートチャンピオンの今井の前を走る女子U23優勝の川口うらら(FUKAYA RACING) Photo: Satoshi ODA
2周目に10秒ほど川口がリードするが「冷静に対処した」という今井が3周目にはトップの座を奪い返しそのままリードを広げ、3連覇を達成した。2位には今シーズン限りで引退を表明している末政実緒(ヨツバサイクル)が入った。
ガッツポーズで喜びを爆発させフィニッシュする今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA
今井美穂(CO2bicycle)の優勝コメント
負けられない戦い、立場的に勝たなくてはいけないという気持ちがあったので、絶対に負けたくない、絶対に勝つという気持ちで練習してきた。一緒に戦ったU23の川口うらら選手がいたからここまでの走りができたと思います。本当にありがとうございました。姪っ子とか、小学校の子供達が応援にきてくれて、かなり力になりました。東京オリンピックの開催を願いつつ、もう一段階二段階パワーアップして、スキルアップして良い走りをして皆さんに楽しんでもらえたらと思いますので応援よろしくお願いします。
女子エリートポディウム Photo: Satoshi ODA
3連覇を達成した東京オリンピック代表候補の今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA
フィニッシュ後花束を贈られ感極まる今シーズン限りで引退を表明していた末政実緒(ヨツバサイクル) Photo: Satoshi ODA
ダウンヒルも王者が連覇
表彰式終了後、今井、山本の両名は本日のエリート勝者としてだけではなく東京オリンピック代表候補としてもメディアからインタービューを受け、オリンピックに向けての取り組みなどを語った。また両者とも年内はシクロクロスにスイッチして、JCXナショナルシリーズマキノ高原でレースに参加、そしてシクロクロス全日本選手権に出場し、2冠を目指すとのことだった。
また開催2日目の7日(土)には、ダウンヒル競技(コース長:1500m、標高差:281m)が行われた。
DHI 男子エリートを2年連続通算4度目のタイトルを獲得した清水一輝(BLAZE A TRAIL) Photo: Satoshi ODA
男子エリートではガチガチのダウンヒルバイクではなく、エンデューロバイクにダブルクラウンのフォークでしっかりと漕げて取り回しを重視のセッティングで臨んだという清水一輝(BLAZE A TRAIL)がフィニッシュのあるゲレンデエリアであわやコースアウトかと思えるシーンもあったが0.15秒差で2年連続通算4度目の優勝を飾った。
優勝バイクと共に男子エリート優勝の清水一輝(BLAZE A TRAIL) Photo: Satoshi ODA
DHI 女子エリートを連覇した岩崎美智恵(TRIPCYCLE GLOBAL RACING) Photo: Satoshi ODA
女子エリートは岩崎美智恵(TRIPCYCLE GLOBAL RACING)が昨年に続き連覇した。
終わってみれば、DHIもXCOも男女エリートの勝者は連覇を達成。強い人が勝つ、まさに日本一決定戦であった。
男子エリート(5Laps)
1 山本 幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) 1時間18分25秒 2 平野 星矢(チーム ブリヂストンサイクリング) +1分15秒 3 沢田 時(チーム ブリヂストンサイクリング) +1分45秒
女子エリート(3Laps)
1 今井 美穂(CO2bicycle) 58分13秒 2 末政 実緒(ヨツバサイクル) +4分35秒 3 橋口 陽子(AX MTB team) +8分53秒
各カテゴリの優勝者
男子U23(4Laps) 北林 力(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)
女子U23(3Laps) 川口 うらら(FUKAYA RACING)
男子マスターズ(4Laps) 山本 和弘(Cannondale Japan)
男子ジュニア(3Laps) 松本 一成(Team SCOTT)
女子ジュニア(2Laps) 渡部 春雅(駒澤大学高等学校)