ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 第17ステージログリッチが苦しみながらも総合優勝&大会2連覇を決定的に ステージはゴデュが制して2勝目
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020の第17ステージが11月7日に開催され、最後の超級山岳で独走に持ち込んだダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)が大会2勝目となるステージ優勝を飾った。マイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は、終盤にリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の先行を許すも、24秒差で総合首位を守り抜いた。翌日の最終ステージはパレード走行と平坦ステージとなるため、実質的にログリッチの総合優勝と大会2連覇が決定的となった。

大雨のなか30人以上の逃げが決まる
第17ステージはセケロスからアルト・デ・ラ・コバティーリャまでの178.2kmで争われた。道中は5つのカテゴリー山岳を経て、最後は超級山岳コバティーリャ(登坂距離11.4km、平均勾配7.1%)を迎え、総合勢にとっては正真正銘最後の決戦の舞台となった。
総合首位のログリッチと、総合2位のカラパスとは45秒、総合3位のヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)とは53秒という僅差のマイヨロホ争いの行方に注目が集まっていた。
強い雨と、低温のなかスタートしたレースは、序盤から激しい逃げ合戦が繰り広げられ、20kmを越えたあたりで30人以上の大集団が形成され、イネオス・グレナディアーズ、CCCチーム、イスラエル・スタートアップネイション、トタル・ディレクトエネルジー以外のチームが逃げにメンバーを送っている状況だった。

その中には9分29秒遅れで総合10位のダビ・デラクルス(スペイン、UAE・チームエミレーツ)、10分51秒遅れで総合11位のダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)がいることもあり、リーダーチームのユンボ・ヴィスマがタイム差をコントロールし、差は3〜4分程度に抑え込まれていた。レースが進むに連れて、雨が上がり、着込んでいたレインジャケットを脱ぐ選手も多く出てきていた。
残り62km付近、モビスター チームがメイン集団の先頭に出てくると、下り区間も利用して、一気にペースアップ。すると集団に中切れが発生。一時的にカラパスが後方に取り残される場面も見られたものの、決定打とはならず。
その後も継続してモビスター チームが集団けん引を担い、残り30km付近で先頭集団とのタイム差が2分弱まで迫ってきたところで、マルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム)がアタック。逃げていたイマノル・エルビティ(スペイン)の力も借りながら、ソレルは逃げ集団にブリッジすることに成功した。

ソレルが合流した先頭集団では、ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング)、マーク・ドノヴァン(イギリス、チーム サンウェブ)、ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナプロチーム)が抜け出した。民家と民家の間を通る細い石畳の激坂区間にて3人が先行した。
激坂区間で体制が崩れた追走集団は先頭3人から40秒ほどの遅れをとっていた。さらに3分ほど後方にメイン集団という構図でいよいよ超級山岳を迎えた。
先行した3人を抜き去ったゴデュが勝利
残り6.8km地点、先頭集団からイサギレがアタック。ドノヴァンが脱落し、食い下がるマーダーを振り切って独走に持ち込んだ。
後方の追走集団からはダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)がアタック。先頭から遅れたドノヴァンとマーダーを抜き、2番手に浮上。ゴデュはさらに先頭のイサギレを捉えると、再び加速してイサギレを振り切って、独走に持ち込んだ。抜かれたイサギレは一度は置き去りにしたはずのマーダーにも置いていかれ3番手に後退した。
先頭を走るゴデュは、徐々にマーダーとの差を開いていき、独走のまま山頂へ到達。第11ステージに続く今大会2勝目を飾り、総合8位へと浮上した。

カラパスの攻撃を耐え抜いたログリッチ
一方、メイン集団はイーデ・シェリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭でけん引中。残り5km付近、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナプロチーム)のアタックをきっかけに、メイン集団が動き始めた。
総合上位勢で口火を切ったのはカーシーだった。残り4km付近でアタックすると、ログリッチのアシストを剥がすことに成功し、10数人残っていたメイン集団をカーシー、カラパス、ログリッチ、エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)、そして少し先行していたウラソフを吸収して5人へと絞り込んだ。
残り3km付近で、今度はカラパスがアタック。鋭い加速に対して、ログリッチらライバル勢は動くことができず。カラパスは精鋭集団を一気に引き離した。
45秒差を逆転するべく、カラパスはひたすらプッシュするしかない状況。一方で総合逆転の可能性もある窮地へと追い込まれたログリッチのもとに、逃げていたレナード・ホフステッド(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が合流。勾配が緩んだ区間で、ログリッチのために前を引くことができた。
カラパスの前には逃げている選手が3人以上残っているため、ボーナスタイムの獲得は見込めず。ログリッチを逆転するには45秒以上差をつけるしかないのだが、ホフステッドのアシストを受け、粘りの走りを見せるログリッチとの差は20秒から30秒以内に留まっていた。
ゴデュから2分35秒遅れて、カラパスは区間8位でフィニッシュ。ログリッチはカラパスが21秒遅れで山頂に到達した。総合成績では24秒差に詰め寄られたものの、実質的に総合優勝を確定させ、大会2連覇を決定的にした。
ログリッチが今大会で稼いだボーナスタイムは48秒だったのに対し、カラパスは16秒だった。最終的にはボーナスタイムの多寡によって、総合争いが決する格好となった。
翌第18ステージは、サルスエラ競馬場からマドリードまでの139.6kmで争われる。ツール・ド・フランスと同様にマドリードの周回コースまではパレード走行をし、険しい山々を乗り越えてきたスプリンターたちによる今シーズン最後の戦いが繰り広げられることだろう。
第17ステージ結果
1 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) 4時間54分32秒
2 ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング) +28秒
3 ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ プロチーム) +1分5秒
4 ダビ・デラクルス(スペイン、UAE・チームエミレーツ)
5 マーク・ドノヴァン(イギリス、チーム サンウェブ) +1分53秒
6 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チーム サンウェブ)
7 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) +2分23秒
8 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) +2分35秒
9 ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) +2分50秒
10 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +2分56秒
個人総合(マイヨロホ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 69時間17分59秒
2 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) +24秒
3 ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) +47秒
4 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) +2分43秒
5 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +3分36秒
6 ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) +7分16秒
7 ダビ・デラクルス(スペイン、UAE・チームエミレーツ) +7分35秒
8 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +7分45秒
9 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +8分15秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +9分34秒
ポイント賞(プントス)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 204 pts
2 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 133 pts
3 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) 111 pts
山岳賞(モンターニャ)
1 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) 99 pts
2 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 34 pts
3 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 30 pts
新人賞(マイヨブランコ)
1 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) 69時間21分35秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +4分9秒
3 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ プロチーム) +6分0秒
チーム総合
1 モビスター チーム 208時間12分42秒
2 ユンボ・ヴィスマ +10分23秒
3 アスタナ プロチーム +40分9秒