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栗村修の“輪”生相談<191>10代女性「将来自転車に関する職に就こうと考えています」

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 女子高校生です。将来自転車に関する職に就こうと考えているのですが、メカニックやレース・イベント企画などをする人の収入はどのくらいですか? やはり少ないのでしょうか?

 進路も、自転車の専門学校へ行くか大学に進むか迷っています。

 好きな事を仕事にするのでお金のことに執着したくはありませんが、生きていく上で大事なことなので質問させていただきました。

(10代女性)

 まず、実は自転車に関する仕事はたくさんあります。

 もちろん、同じ成績を競い合うスポーツでも、マラソンや水泳、柔道などのスポーツのほうが自転車よりメジャーなのですが、意外と、道具に関する仕事が少ないんですよ。マラソンなら、基本的にウェアとシューズ関連くらいでしょうか。自転車競技の特徴は、競技のマーケットはそれほど大きくないものの、道具に関連する仕事が多いことです。

 また、収入についてですが、国内大手や外資系のメーカーなら一般企業と比較してもそん色ないと思います。

 というわけで、自転車界は、少なくとも機材関係なら仕事は多いですし、大手なら収入も悪くないという結論になりました。

 ただし、競輪を例外とすると、プロスポーツとしての収入はまだまだ低いです。特に選手ですね。一流自転車メーカーの正社員と、そのメーカーが持っているチームの選手の年俸を比較すると、選手のギャラのほうが安いでしょう。チームの専属メカニックのお給料も、残念ながらあまり高くありません。

 これは、選手の社会的・経済的価値が、製品を作り出して販売している一般社員よりも低いからです。企業としては、どんなに強くても1000人にしか知られていない選手よりも、1万人が買ってくれる製品をつくっている社員に高い対価を支払うのは当然のことです。

 そして選手としての社会的・経済的地位とは、知名度と露出度に関連します。いくら強くても社会的・経済的に価値を生めない選手は、対価としてのお金はもらえないというわけです。

 もちろん、本場である欧米に飛び出してペテル・サガンのようなトッププロになれば、年俸は一気に億単位のオーダーに跳ね上がりますし、チームスタッフの給与も国内よりは良いでしょう。

 ただ、国内レベルでも、選手もメカニックもなんとか生活は成り立つんですね。これを安いとみるか、好きなことで生活ができているとみるかは人それぞれです。

 あと、レースやイベントなどの企画・運営ですが、これは幅が広すぎるのでお答えが難しいですね。ただ、生計を立てている人がいるのは確かです。ただ、この分野は求人数があまり多くありませんので、条件以前に、到達するためのルートを探る方が大変かもしれません。

ツール・ド・フランスのレースディレクターを務めるクリスティアン・プリュドム氏 Photo: Yuzuru SUNADA

 これらを踏まえて進路を考えていくわけですが、安定路線を狙うならば、大手企業に就職し、その中でメカニックやレース・イベントの仕事を希望していくのが良いのではないでしょうか。もちろん希望する職務に就けない可能性はありますし、大手企業への就職であれば、やはりそれなりの学歴、もしくは自転車の専門知識が必要になってくるでしょう。

 一方、専属メカニックやイベント会社などに就職したい際は、思い切って希望のチームや会社に連絡を入れて、見学やアルバイトなどを申し入れてみるのもありかと思います。こういった形で就職する際は、どうしても下積み期間が必要になってくるので、学歴よりは現場力や対人力、そして情熱がより重要になります。あとコネも大切です。

 そしてもうひとつ重大な原則だけお伝えしておきます。それは、自転車の専門知識を身に着けるのと同時に、経済・金融・経営などの基本的な一般教養も身につけた方が絶対に良いということです。

 というのも、自転車はあくまで社会の一部だからです。社会は社会のルールで動いているのであり、自転車界のルールだけで動いてはいません。

 質問者さんが30代に入った時に、経営や経済を知りつつ現場の実情も知っている人材になっているならば、より良い条件でヘッドハントされるかもしれませんね。

 一般教養と現場の両方を知れば怖いものはありません。自信をもって進んでください。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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