ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 第7ステージ風の丘陵コースをウッズが逃げ切り カラパスら総合上位陣もミスなく終える
大会第2週に入ったブエルタ・ア・エスパーニャ。現地時間10月27日は第7ステージを行い、風の強いバスクの丘陵コースをマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)が勝利。逃げメンバーが上位を占めた。個人総合で上位を走る選手たちは56秒差でフィニッシュしたメイン集団でいずれもレースを完了。リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が首位の証であるマイヨロホを守っている。
最大36人の逃げがレースを先行
第1休息日を経て、大会は今回の開幕地でもあったバスク自治州へと“帰還”。ビトリア=ガステイスからビリャヌエバ・デ・バルデゴビアまでの159.7kmは、前半のワンウェイルートを進んだのち、中盤からは1級山岳プエルト・デ・オルドゥニャ(登坂距離7.8km、平均勾配7.7%、最大勾配14%)を含む周回コースへと入る。中間スプリントポイントをはさんで、2回目のオルドゥニャ登坂を終えると、下りをこなした後フィニッシュに向かって周回コースを離脱。上りこそハードだが、最後の約15kmは平坦基調となるため、ステージ優勝争いは選手間の駆け引きがどのように反省されるかが焦点に。

なお、前日に行ったPCR検査では選手・チームスタッフからの陽性者は出ず、晴れてレースは継続される。
そんな中で始まったレースは、逃げ狙いのアタックの応酬に。レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の飛び出しをきっかけに、15人近くが前方をうかがう局面があったものの、これも40km地点を迎えようかというところで集団に引き戻される。序盤からの攻防は、60km地点手前から始まったオルドゥニャの上りでようやく形勢が見えてくる。
集団から17人が抜け出したのを機に、次々と上りを利用したアタックが発生。数人単位のパックがいくつも組まれ、先頭合流を図る。やがて前方は36人の一大グループに。18チームが先頭に選手を送り込むことに成功している。この間に1級山岳ポイントを迎え、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)がトップで通過している。
レースが中盤に入ると降雨と強風が選手たちに襲いかかる。先頭グループではたびたび数人単位で抜け出しを図る動きがみられ、一方のメイン集団でも個人総合で上位を走る選手たちが前方に集まり位置取り争い。どちらのグループも風を利用した駆け引きのムードが高まっていく。

そうした中から、先頭グループではドリアン・ゴドン(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、スタン・デウルフ(ベルギー、ロット・スーダル)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)が他の逃げメンバーを引き離そうというアクション。その流れから117.3km地点の中間スプリントポイントを迎えて、ゴドンが1位で通過する。ただ、後続に対して大差をつけることはできず、バルベルデとデウルフは大きなグループへと戻る判断。ゴドンだけが先頭に残って先を急いだ。
しかし、独走となったゴドンも2回目のオルドゥニャを迎えて失速。数秒差で続いていた後ろのメンバーに捕まると、先頭は登坂力に長けた選手たちだけに絞り込まれる。タフな上りを利用してアタックが散発するが、好タイミングで仕掛けたウッズが飛び出しに成功。少し置いて追撃を図ったバルベルデとナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、さらにはオマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)とギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)が続く格好に。そのまま頂上へと到達し、ウッズがトップ通過。数秒差で4人が追った。
アタックの応酬からウッズが抜け出すことに成功
下りに入って追走の4人がウッズに合流。さらに後ろでも10人近い選手たちが先頭への再合流を目指してペースを上げる。

5人となった先頭グループでは、終盤の平坦区間に入って断続的にアタックが発生。そのいずれも決定打に欠き、さらには第2グループも15秒ほどの差まで迫る。この状況がしばらく続いたが、第2グループ内の利害が一致しなかったこともあり、フィニッシュまで5kmを切ったあたりから先頭グループとの差が拡大傾向に。徐々に前を行く5選手が有利な状勢となった。
逃げ切りが濃厚となってからもアタックとチェックを繰り返していた先頭グループだったが、残り1kmを前にマークを上手く外したウッズがアタックに成功。他の4人の反応が遅れたこともあり、一気にリードを広げる。フライレが猛追したが、十分な差を確保したウッズが逃げ切り。今大会初勝利を挙げた。以降、フライレ、バルベルデと続き、15位までを逃げメンバーが占めた。
個人総合上位陣が含まれるメイン集団は、先頭グループに対して2分前後の差でレースを進めていたが、風を利用して人数を絞り込みつつも終盤はセーフティを選択。追い込むことはせず、一団のままフィニッシュラインへと到達した。ウッズからは56秒差、個人総合で上位の選手たちはいずれもこの中でレースを終えている。
これにより、総合での大幅な変動はなし。アシストに守られながら走り切ったカラパスがマイヨロホを堅守している。ポイント賞のプントスはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)、新人賞のマイヨブランコはエンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)でそれぞれ変わらず。山岳賞のモンターニャのみ、この日ポイントを稼いだマルタンへと移っている。
翌28日に行われる第8ステージは、ログローニョからアルト・デ・モンカルビリョまでの164km。コース全体では平坦区間が多いものの、登坂が厳しく獲得標高にして約3000mの山岳ステージ。中間地点を過ぎて上る2級山岳プエルト・デ・ラ・ラサ(9.8km、5.3%)を越え、いったん下ってから1級山岳アルト・デ・モンカルビリョの頂上を目指す。その上りは距離8.3km、平均勾配は9.2%。中腹から難易度が増し、最大で15%の区間も。今大会3回目の頂上フィニッシュは、混戦となっている個人総合争いに流れを呼び込む絶好のポイントとなる可能性を秘めている。
第7ステージ結果
1 マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) 3時間48分16秒
2 オマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム) +4秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
4 ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +8秒
5 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)
6 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAE・チームエミレーツ) +13秒
7 アレクサンデル・アランブル(スペイン、アスタナ プロチーム)
8 イーデ・シェリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
9 ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)
10 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAE・チームエミレーツ)
個人総合(マイヨロホ)
1 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 28時間23分51秒
2 ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) +18秒
3 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) +20秒
4 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +30秒
5 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +1分7秒
6 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +1分30秒
7 マルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム) +1分42秒
8 エスデバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) +2分2秒
9 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +2分3秒
10 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ) +2分39秒
ポイント賞(プントス)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 79 pts
2 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 61 pts
3 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) 57 pts
山岳賞(モンターニャ)
1 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) 27 pts
2 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) 24 pts
3 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 19 pts
新人賞(マイヨブランコ)
1 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) 28時間24分58秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +2分40秒
3 ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング) +2分57秒
チーム総合
1 モビスター チーム 85時間16分40秒
2 UAE・チームエミレーツ +3分3秒
3 ユンボ・ヴィスマ +7分43秒