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昼間岳の地球走行録<66>ナミビアと南アフリカのオフロード 真っ直ぐと続く荒野に緑が広がる絶景

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 舗装路とオフロードがあったら僕はできるだけ舗装路を走りたいタイプだ。南米・パタゴニアやパミール高原のようなオフロードしかないのであれば走るし、舗装路好きといっても、走った後で印象に残るのはオフロードの荒々しさ、そして驚くほどの風景の美しさだった。

南アフリカのR303号線。穏やかで美しい風景は、まるでヨーロッパを走っているようだった Photo: Gaku HIRUMA

あえてオフロードを走る

 旅の出発前にアフリカでの走行を想像したとき、道のほとんどが凹凸が多いオフロードで走りにくいだろうと思っていた。もちろん想像通りの地域もあったけど、予想に反して大半の国道は綺麗なアスファルトが敷かれていた。

 僕が走ったアフリカのルートは野生動物に会えたけど、国道を走っていても景色が劇的に変わるのはそう多くなかった。アフリカと言えばこんな風景を思い浮べる、というようなサバンナか、ブッシュ地帯、砂漠など単調な景色が続く。それはアフリカ走行の終盤のナミビアや南アフリカでもさほど変わらなかった。

 アフリカではずっと舗装路ばかり走ってきたので、流石の僕もナミビアと南アフリカくらいは自らオフロードを走ってみようと決めた。これが大当たりでとても素晴らしい道だった。

 まず目指したのは世界で2番目に大きい渓谷、ナミビアのフィッシュリバーキャニオン。ナミビアの首都ウイントフックから南アフリカ国境付近のヌァードゥワーまで、B1という綺麗な国道が延びている。その国道上にあるケートマンズフープという町から国道C1というオフロードの道に入り、フィッシュリバーキャニオンへと向かう。C1はB1のように無機質に一本道を貫くのではなく、地形に沿って高低差を上ったり下ったり、丘を縫うように曲がりくねっている道だ。

ナミビアのフィッシュリバーキャニオンへ向かうオフロード。地形に沿って伸びる道が地球を走っていると実感させられる Photo: Gaku HIRUMA

 ただそういう道を走っていたかと思うと、今度はどこまでも続く荒野の一本道が現れる。久しぶりに地球を走っているんだなぁとしみじみと実感できるような道だった。乾燥により空は青く、オフロードとの相性が抜群で、夕方になると空が燃える様に赤くなり、夜には満天の星空が綺麗に見えた。

ナミビアから南アフリカへ

 フィッシュリバーキャニオンを見て、再びB1に戻ってきた。いつもであれば快適な舗装路で嬉しいはずが、無機質な一本道につまらなさを感じて、南アフリカではまたオフロードを走りたいと思い地図を開いて探した。

世界で2番目に大きな渓谷フィッシュリバーキャニオンを望む Photo: Gaku HIRUMA

 するとケープタウンから北に約200kmの所にクランウィリアムという町があり、そこからセダーバーグ野生保護区を抜けるルートを発見した。地図上の道路の表記は心細い細い線で描かれていたが、クランウィリアムのツーリストインフォメーションで確認したところオフロードだけど、「走れるわよ」とのことだったので行ってみた。

 この道はナミビアのB1とはまた違い、山の谷あいを激しく上り下りさせるオフロードだった。平地でも負担のかかるオフロードなのに山道となると本当に大変で、普段なら絶対にこんな道は走らない。

 だけど、山奥でも民家が建ち、柑橘系の樹木やブドウを栽培していて、自然の荒々しさとその自然をうまく調和するような人の暮らしが素晴らしかった。アフリカを走っているというよりは、むしろヨーロッパのアルプス山脈を走っているような感覚に陥る地域だった。

セダーバーグ野生保護区。アップダウンの激しい道だったが、自然とうまく共存している人達の生活が風景に溶け込んでいる場所だった Photo: Gaku HIRUMA
峠を越えて眼下に広がるのは、ワインランドと呼ばれるワインの産地だ。とてもワクワクしながらダウンヒルを楽しんだ Photo: Gaku HIRUMA

 シトラスダルという国道の町に一旦出て出てからは、再びメインのN7号線を外れ、R303号線を行く。とにかくここからの風景と道の全てが調和して素晴らしかった。もし、今後スポット的に世界を走れる機会があれば、僕はこの南アフリカのR303号線を走りたい。こんな荒々しさと可愛らしさを兼ね備えた道は、世界でもそうそう存在しない。

R303号線の峠越え。車線は狭いがほとんど車は通らないので、風景を楽しみながらのんびり越えられる Photo: Gaku HIRUMA

 ここでも一部がオフロードになっていて峠越えは大変なのだが、峠の風景も絶景続きで言うことがない。そしてなにより里に下りてきたときの景色の穏やかさは驚きだ。道は舗装され、岩山のすそ野に広がる牧草地にブドウ畑。水が豊富で花と緑が青々と茂っている緩い下り坂を、ブレーキをせずにゆっくりと下って行く。交通量も少なく、乾いたアフリカをずっと走ってきた僕にとって最高に癒される景色だった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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