ジロ・デ・イタリア2020 第21ステージゲイガンハートが逆転の個人総合優勝 ヒンドレーとの歴史的TT最終決戦でマリアローザ奪取

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ジロ・デ・イタリア2020は、個人総合1位と2位が同タイムという歴史的接戦で、最終日の15.7kmの個人タイムトライアルを迎えた。現地時間10月25日に行われた第21ステージは、総合2位でスタートしたテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が、総合首位のジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ)に39秒差をつけて総合での逆転に成功。土壇場でのマリアローザ奪取に成功し、第103回大会の個人総合優勝を決めた。なお、ステージ優勝はこの種目の世界王者であるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が果たしている。

ジロ・デ・イタリア2020。個人総合2位でスタートしたテイオ・ゲイガンハートが逆転でトップに浮上。2020年大会の個人総合優勝を決めた Photo: Yuzuru SUNADA

ヒンドレーとゲイガンハートが総合同タイムで最終決戦へ

 10月3日にシチリア島で開幕した大会は、3週間かけて3000kmを超える距離を走り続けてきた。イタリア各地をめぐってきた旅は、残すところ15.7km。最後を飾るのは、ミラノへと到達する個人タイムトライアルだ。

ドゥオーモ広場に設けられたフィニッシュラインを通過した新城幸也。3週間を走破した Photo: Yuzuru SUNADA

 チェルヌスコ・スル・ナヴィリオをスタートし、オールフラットともいえる平坦ルートを走行してミラノ中心部のドゥオーモ広場へとフィニッシュする。

 ミラノでの個人タイムトライアルはこれまで、大会史に刻まれる数々の激戦が演じられてきた。直近では2017年にトム・デュムラン(オランダ、当時チーム サンウェブ)が、さらにさかのぼると2012年にライダー・ヘシェダル(カナダ、当時ガーミン・バラクーダ)が同地での最終個人タイムトライアルで逆転劇。マリアローザ争いが僅差になれば、タイムトライアルを得意とする総合系ライダーが一気に有利になる。

ポイント賞のマリアチクラミーノを確定させたアルノー・デマール Photo: Yuzuru SUNADA

 そして今年も、劇的な幕切れが約束されるシチュエーションで大会最終日を迎えた。前日行われた第20ステージで、ヒンドレーがマリアローザを獲得。ここ数日にわたって山岳で競い合ってきたゲイガンハートは、ステージ優勝に加えてヒンドレーと同タイムの個人総合2位に。コンマ差でヒンドレーが上位になったが、事実上タイム差がない状態で個人タイムトライアルによる最終決戦を迎えることになったのだ。

 このステージのスタート前段階で、両者と同3位のウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)との総合タイム差は1分32秒。レース距離やタイムトライアルにおける走力を考えると、よほどのアクシデントがない限りマリアローザの行方はヒンドレーかゲイガンハートに絞られた。15.7kmを走り、1秒でも速いタイムをマークできれば、その瞬間に今大会の覇者に決定する。

世界王者ガンナが異次元のスピード TTステージハットトリック達成

 平坦コースでのタイムトライアルとあって、ステージ優勝争いはスペシャリストたちによる別次元の勝負に。

圧倒的なスピードでトップタイムをマークしたフィリッポ・ガンナ。今大会4勝目を挙げた Photo: Yuzuru SUNADA

 個人総合の下位選手から1分おきに、同トップ10に限り3分おきにコースへと繰り出していく。そんな中で、走力自慢たちが次々とトップタイムを塗り替えていく。前半にスタートした選手の中で基準タイムを残したのが、ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)。17分48秒で走り切ると、しばしトップタイムを維持した。

 しかし、それを大きく上回ったのが、世界王者の証であるマイヨアルカンシエルで飛び出したガンナだった。10.3km地点に設定された中間計測ポイントから他を圧倒する通過タイムを記録すると、勢いそのままに最終盤も快走。フィニッシュタイムは17分16秒。上位陣のアベレージスピードが52km台で拮抗する中、ただひとり54km台(54.556km)で走り、文句なしのトップに。結局これに迫る選手は現れず、今大会の個人タイムトライアルステージのハットトリックを達成(第1・14・21ステージ)。逃げ切り勝利を挙げた第5ステージも含め、今回だけで4勝を挙げてみせた。

同タイム決戦はゲイガンハート勝利 ジロ制覇を決める

 個人総合成績をかけてスタートした上位陣の中では、同5位で大会最終日を迎えたホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)が好走。他選手がタイムをなかなか伸ばせない中、アルメイダは中間計測ポイントをガンナから14秒差で通過すると、その後も粘ってフィニッシュでは40秒差にとどめる。4番時計を記録して、個人総合トップ10ライダーの中では最上位に。同4位だったペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)が苦戦したこともあり、最終的に両者の順位が入れ替わり。アルメイダの個人総合4位が確定した。

マリアローザを着用して最終ステージに臨んだジャイ・ヒンドレー。前半から飛ばしたが逆転を許す結果に Photo: Yuzuru SUNADA

 続いて出走した同3位のケルデルマンも、大きな落ち込みなく安定した走り。結果的にステージ11位で終えて、個人総合3位を確定的にする。

 そしていよいよ、最大の焦点であるトップ2がスタート。まずは同2位のゲイガンハートがコースへと出て、大きなギヤでグイグイと進んでいく。続いて走り出したヒンドレーも序盤はゲイガンハートに負けないスピード。

 そんな2人の差が開き始めたのは、レース中盤。少しずつゲイガンハートがリードしていくと、中間計測ではヒンドレーに対して22秒差をつける。完全に勢いで上回ると、残り距離はヒンドレーとの差が開く一方。

 ともに最後の最後までしっかりと踏み続けてフィニッシュラインを通過。ゲイガンハートはチームメートのガンナから58秒差にとどめたのに対し、ヒンドレーは1分37秒差。両者の間に39秒差がつき、同タイムで迎えた最終決戦はゲイガンハートに軍配。第103回ジロ・デ・イタリアの個人総合優勝者に決まった。

大先輩からのメッセージで気持ちを奮い立たせる

 ジロ2020年大会の覇者となったテイオ・ゲイガンハートは、1995年3月30日生まれの25歳。イギリス・ロンドンで育ち、15歳から自転車のキャリアをスタート。ジュニア時代から同国のナショナルチームの一員として走り、2017年の現チーム(当時チーム スカイ)入りまでは、若手育成チームであるアクセオン・ヘーゲンズバーマンに所属した。

テイオ・ゲイガンハートを囲んでイネオス・グレナディアーズの選手・スタッフが大喜び Photo: Yuzuru SUNADA

 これまでビッグレースでは際立った成績を残していなかったものの、今大会で一気に飛躍。開幕時は総合エースとして乗り込んでいたゲラント・トーマス(イギリス)が落車負傷で大会を去って以降、徐々に個人総合順位を上げていき、第15ステージの勝利で上位戦線へ。ヒンドレーとケルデルマンのチーム サンウェブ勢との僅差の争いを制して、初のグランツール制覇を成し遂げた。ちなみに、トレーニー(研修生)としてチーム スカイに一時的に合流していた2015年シーズンには、ジャパンカップ サイクルロードレース出場のために来日している(28位)。

 ジロ制覇にあたり、「信じられないほどの3週間を過ごした。朝の時点ではこれだけの結果を残せるか半信半疑だったが、現実になった」と喜びのコメント。最終ステージを前に、けがの療養をしているトーマスや、2012年のツール・ド・フランス覇者である大先輩のブラッドリー・ウィギンス氏から激励のメッセージが届いていたことを明かし、大きなモチベーションになったとも。これからは、ロンドンでも人気だというサイクリングを通じて多様性を図る活動にも取り組みたいとビジョンを述べた。

 最終的な個人総合成績は、ゲイガンハートに続いてヒンドレーが2位に。その差は39秒だった。3位はケルデルマンが確保し、チーム サンウェブ勢が表彰台の2枠をゲット。

ミラノのドゥオーモを前にトロフィーを掲げるテイオ・ゲイガンハート Photo: Yuzuru SUNADA

 各賞は、マリアローザのゲイガンハートが新人賞のマリアビアンカも獲得し2冠。前日までに決定的となっていたポイント賞のマリアチクラミーノはアルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)、同様に山岳賞のマリアアッズーラはルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)がそれぞれ受賞。チーム総合はイネオス・グレナディアーズが1位。

 そのほか、新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は、このステージを86位で走り終えて3週間を完走。個人総合は89位とした。

ポイント賞のマリアチクラミーノはアルノー・デマールが獲得 Photo: Yuzuru SUNADA
山岳賞のマリアビアンカをルーベン・ゲレイロが獲得 Photo: Yuzuru SUNADA

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で5カ月遅れの開催となった今大会。期間中に選手・チームスタッフから感染者を出る事態がありながらも、最終目的地のミラノへと到達した。これで、今年のUCIワールドツアーは残すところ現在開催中のブエルタ・ア・エスパーニャのみに。イレギュラーなレースシーズンとなった今季だが、その活動も大詰めとなっている。

第21ステージ結果
1 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) 17分16秒
2 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング) +32秒
3 ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)
4 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) +41秒
5 マイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマ・エフデジ)
6 ヨセフ・チェルニー(チェコ、CCCチーム) +44秒
7 チャド・ハガ(アメリカ、チーム サンウェブ)
8 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAE・チームエミレーツ) +46秒
9 カミル・グラデク(ポーランド、CCCチーム) +47秒
10 ヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)
86 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) +2分27秒

個人総合(マリアローザ)
1 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 85時間40分21秒
2 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ) +39秒
3 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +1分29秒
4 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) +2分57秒
5 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +3分9秒
6 ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ プロチーム) +7分2秒
7 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) +8分15秒
8 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +8分42秒
9 ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) +9分57秒
10 ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア、バーレーン・マクラーレン) +11分5秒
89 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) +4時間10分7秒

ポイント賞(マリアチクラミーノ)
1 アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ) 80 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 20 pts
3 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 10 pts

山岳賞(マリアアッズーラ)
1 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング) 80 pts
2 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 20 pts
3 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 10 pts

新人賞(マリアビアンカ)
1 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 85時間40分21秒
2 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ) +39秒
3 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) +2分57秒

チーム総合
1 イネオス・グレナディアーズ 257時間15分58秒
2 ドゥクーニンク・クイックステップ +22分32秒
3 チーム サンウェブ +28分50秒

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