ロンド・ファン・フラーンデレン2020ファンデルプールがモニュメント初制覇 ファンアールトとの直接対決で“王様”奪取

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 UCIワールドツアー「ロンド・ファン・フラーンデレン」が10月18日、ベルギー・フランドル地方にて開催され、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニック)がワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とのライバル対決を制し、初優勝を飾った。世界王者のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は、一時はファンデルプール、ファンアールトと共にレースをリードするも、コース脇を走行していたバイクに激突して落車する不運に見舞われリタイアとなった。

「クラシックの王様」と称されるロンド・ファン・フラーンデレンはマチュー・ファンデルプール(左)がワウト・ファンアールトとのマッチスプリントを制して初優勝 Photo: STIEHL / SUNADA

101年連続で開催の「クラシックの王様」

 ロンド・ファン・フラーンデレンは5大モニュメントの一つで、ワンデークラシックのなかでも一際格式の高いレースだ。ちなみにロンドは第一次世界大戦が終了した翌年に開催された第3回大会以来、第二次世界大戦中も中止にせず、現在に至るまで101年連続で開催されている。そのなかで日程が本来の3、4月ではなく、延期されたケースは第二次大戦が終戦する1945年(ドイツ降伏後の7月に開催)と、コロナ禍によりレース延期が余儀なくされた2020年の2回のみだ。

 変則日程による影響はコースにも現れている。近年は残り100km地点に登場していたミュール・カペルミュールの名で知られるヘラールツベルヘンの激坂石畳区間がカットされ、連戦の続く選手たちへの負担を考慮して、本来は267kmのレース距離が243.3kmへと短縮されて争われたのだ。

101年連続、104回目のスタートを切ったロンド・ファン・フラーンデレン Photo: STIEHL / SUNADA

 とはいえ、石畳と激坂が断続的に登場する難コースには違いなく、残り75km以降のコースレイアウトは例年どおりで、3回通過することになるオウデ・クワレモントや最大勾配22%のコッペンベルグといった名物石畳坂は健在だ。

 レースはスタートから20kmほど経過して6人の逃げが形成。グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ハイス・ファンフック(ベルギー、CCCチーム)、サムエーレ・バティステッラ(イタリア、NTTプロサイクリング)、ディミトリー・ペイスケンス(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、サーカス・ワンティゴベール)、ファビオ・ ファンデンボッシュ(ベルギー、スポーツフラーンデレン・バロワーズ)がメイン集団から最大8分程度のリードを築いた。

 徐々にレーススピードが上がってくる残り113km地点付近で、集団落車が発生。ファンアールトが巻き込まれるも、大事には至らずすぐにレースを再開。

 ペースが上がった集団からは、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、NTTプロサイクリング)がアタック。集団から10秒程度リードしたまま、踏切を越えた直後に遮断器が降り始めて、メイン集団は足止めをくらう。この場合、逃げている選手は後続集団を待つ必要がないため、ボアッソンハーゲンがリードを拡大。しかし、先頭集団までのタイム差は6分30秒ほど残っており、集団に対しての揺さぶりが目的の攻撃で、しばらくして集団に吸収された。

 そして、例年ならミュール・カペルミュールを通過したあたりとなる残り96km地点から断続的にアタックが生まれるようになった。有力選手がアタックして飛び出すも、集団に吸収される動きが繰り返された。特にNTTプロサイクリング勢が積極的にレースを動かし、集団の人数はどんどん減っていった。

オウデ・クワレモントの頂上を通過するアラフィリップら集団 Photo: STIEHL / SUNADA

アラフィリップが不運な落車でリタイア

 2回目のオウデ・クワレモントに向けてファンデルプール、ファンアールト、アラフィリップらは集団前方に位置取り。フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭でけん引し、上りを越えていった。

 残り52km地点の最大勾配20%のパテルベルグではイネオス・グレナディアーズが先頭で上りを越えていき、その直後に逃げ集団を吸収すると、ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。この動きにアラフィップがアシスト1人を伴って反応するなど、いよいよビッグネームも動き始めた。

石畳の急坂を進む集団 Photo: STIEHL / SUNADA

 ファンバーレらの動きは一旦、集団に引き戻されるも、残り45kmから始まる最大勾配22%の激坂・コッペンベルグで、アラフィリップがアタック。アルカンシエルの猛烈な加速に、ファンデルプール、ファンアールト、前年王者のアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFプロサイクリング)、前年7位のオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥゼール ラモンディアール)など優勝候補たちが一気に動いた。

 この精鋭集団に遅れていた選手たちが徐々に復帰する形で、25人程度の先頭集団が形成される。

 残り40kmから始まるステーンベークドリースの石畳坂を越えたあとの石畳の下り坂区間にて、アラフィリップが再度アタック。この動きに追従できたのはファンデルプールのみ。やや遅れてファンアールトが単独で追走し、先頭2人に追いついた。

 3人は均等にローテーションしながら、後続との差を引き離す。ところが、残り35km地点、道路端でスピードを落としていたモトバイクに、アラフィリップが激突して落車してしまう。

 ファンアールト、ファンデルプール、アラフィリップという順で道路端を走行していたのだが、前で減速するモトバイクをファンアールト、ファンデルプールが寸前で避けたのに対して、アラフィリップは気付くのが遅れて衝突してしまったようだ。

 右半身をバイクに強くぶつけながら地面に叩きつけられたことで、アラフィリップは再スタートができずリタイア。レース後の検査により、右手中手骨の2番と4番の骨折が判明した。

ライバル対決は数センチ差でファンデルプールの勝利

 2人となった先頭集団は、それでも勢いは衰えることなく後続とのタイム差をどんどん広げていく。残り19km地点、1分20秒ほどのリードを築いて、終盤の勝負どころである3回目のオウレ・クワレモントに突入。

 ファンデルプール、ファンアールトの並びで上っていき、勾配がゆるくなった区間でファンアールトが前に出た。お互いに、わかりやすい仕掛けはなく2人揃って上り切った。続く残り14km地点のパテルベルグでも2人は横並びのまま激坂区間を上る。ここでも目立った動きはなく、短い上りを終えた。

 残りは平坦区間のみ。2人はローテーションしながら走行するも、後続とのタイム差が徐々に縮小していることから、静かに最後の勝負に備えているといった様子だった。

 ラスト1kmのアーチを先にくぐったのはファンデルプール。フィニッシュまでは幅も広く完全な直線路となっており、2人は一気にけん制モードに。

長年のライバル同士による横一線のマッチスプリント Photo: STIEHL / SUNADA

 ファンデルプールが何度も後ろを振り返り、ファンアールトの仕掛けのタイミングをうかがいつつ、残り500、400、300mとフィニッシュへ近づいていった。

 残り200mの看板を過ぎた直後に、ファンアールトとファンデルプールはほぼ同時にスプリントを開始。後ろから加速したファンアールトが横に並びかけたまま、両者同時にハンドルを投げてフィニッシュ。2人ともどちらが勝ったかすぐにわからないほどの接戦だったが、ホイール4分の1ほどの僅差でファンデルプールが先着。ロンド・ファン・フラーンデレン初優勝を飾った。勝利を知らされたファンデルプールは感情を爆発させ、その場でしゃがみこんで涙を流していた。

モニュメント初制覇に涙を流すファンデルプール Photo: STIEHL / SUNADA

 1986年のロンドを制した選手は、オランダ人のアドリ・ファンデルプール。マチューの実の父親である。アドリとマチューは2代にわたってロンドを制した初めての親子となった。

 また、ファンデルプールとファンアールトはジュニア時代からシクロクロスでしのぎを削ってきたライバル関係。ロードレースでもこれまでに何度も同じレースに出場したことはあるものの、モニュメントのような大舞台で、2人で優勝を競り合う展開は今回が初めてのことだった。近年ではファビアン・カンチェラーラ(スイス)とトム・ボーネン(ベルギー)を彷彿とさせるライバル関係には、来季以降も注目が集まることだろう。

表彰台に立ったトップ3。3位は集団スプリントを制したアレクサンダー・クリストフとなった Photo: STIEHL / SUNADA

ロンド・ファン・フラーンデレン結果
1 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) 5時間43分17秒
2 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +0秒
3 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ) +8秒
4 アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
5 イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
6 ディミトリ・クレイス(ベルギー、コフィディス)
7 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
8 ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)
9 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)
10 ティシュ・ベノート (ベルギー、チーム サンウェブ)

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