ジロ・デ・イタリア2020 第15ステージゲイガンハートが山頂フィニッシュを制す アルメイダは粘りの走りでマリアローザ死守

by 平井久美子 / Kumiko HIRAI
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 ジロ・デ・イタリアの第15ステージが10月18日に行われ、テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が優勝を飾った。終盤、マリアローザを狙うチーム サンウェブの2人、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)とジェイ・ヒンドレー(オーストラリア)と抜け出し、ラスト1kmを切ったところで一早くアタックして勝利を手に入れた。マリアローザはホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がキープしたが、サンウェブの組織的攻撃により2位のケルデルマンとの差は僅か15秒となった。

嬉しいグランツール初勝利を手に入れたゲイガンハート Photo: Yuzuru SUNADA

独走力のある選手も含む逃げが完成

 第15ステージは、バーゼアエレアリヴォルトからピアンカヴァッロまでの185km。スタートから65.1、105.2、143.4km地点に設定されている3つの2級山岳をこなし、ピアンカヴァッロ(距離14.5km、平均勾配7.8%、最大勾配14%)の頂上にフィニッシュするコースとなっている。山岳単体の難易度はさほど高くないが、コース中まんべんなく訪れる上りは確実に選手の脚を削るだろう。マリアローザ争いも佳境に入る2週目最後のステージ。総合が動く可能性も高い。

2週目もマリアローザを着用して終えることができたアルメイダ Photo: Yuzuru SUNADA

 スタート後に逃げたのは、アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、ルーカ・キリコ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ プロチーム)、マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・マクラーレン)、ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス)、ダニエル・ナバーロ(スペイン、イスラエル・スタートアップネイション)、トーマス・デヘント(ベルギー)、マシュー・ホームズ(イギリス、ともにロット・スーダル)、ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、モビスター チーム)、ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)、山岳賞争いで2位のジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)、エドアルド・ザルディーニ(イタリア、ともにヴィーニザブ・KTM)の12人。
 
 しかし、最初の山岳ポイントを前にザルディーニとハースが脱落する。一方、メイン集団からはマリアアッズーラを着用するルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)が先行。逃げから遅れたハースと協調し、先頭への合流を試みる。

 だが、この構図も長くは続かない。スタートから約60km、山岳ポイントに向かう上りで10人の逃げはそのままだったが、約1分30秒後ろにセルジオ・サミティエル(スペイン、モビスター チーム)、同じく1分30秒後ろにジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)。ドゥクーニンク・クイックステップやNTTプロサイクリング、チーム サンウェブなどが牽引するメイン集団は6分以上の差となっていた。また、逃げ集団に追いつこうとしていたゲレイロとハースはそれを諦め、このメイン集団に戻っていた。

終始レースをコントロールしたサンウェブ Photo: Yuzuru SUNADA

 65kmの山岳ポイントはヴィスコンティがトップ通過。無事山岳ポイントを獲得した。また、この頃になるとサミティエルが先頭にジョインし逃げは11人に。モビスターはこの逃げに2人を送り込むことに成功した。その後、山を下ったあとに訪れる81kmのスプリントポイントで、逃げとメイン集団のタイム差は約5分30秒。メイン集団は先頭を泳がせている状況だった。

 だが、そのタイム差は徐々に短縮。105kmに登場する2つ目の山岳ポイントでのタイム差は約5分だったが、そこからじわじわと縮まっていく。次の目標物となる136kmのスプリントポイント前では、約3分のタイム差となっていた。

デニスが独走勝利に向け果敢にアタック

 このままでは逃げ切るのは困難な状況。そこで動いたのは、デヘントだった。逃げ切りの為、アタックを仕掛ける。その動きにヴィッレッラ、デニス、ヴィスコンティが反応。この4人で136kmのスプリントポイントを通過した。

フルサンの為に攻撃を仕掛けるフェリーネだったが、サンウェブのチーム力に屈する形となった Photo: Yuzuru SUNADA

 一方メイン集団はニコ・デンツ(ドイツ、チーム サンウェブ)が先頭に。ケルデルマンの為にペースアップをして、ライバル選手を引き離す。

 レースもいよいよクライマックス。この日3つ目の山岳ポイントを前にした残り45km(スタートから143km)、先頭の4人からさらにデニスが抜け出す。この動きについていけたのはデヘントのみだったが、そのデヘントも程なくして脱落。先頭はデニスのみとなり、山岳ポイントも単独で通過する。また、山岳賞を狙うジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブ・KTM)は先頭から脱落したもののこの山岳を3位通過。マリアアッズーラ着用という大きな目標に近づく。

 残り20kmを切ってもデニスのペースは落ちず。集団タイム差は2分30秒程で推移していた。こうなると、勝負の分かれ目は最後の山岳であるピアンカヴァッロ。ここでペースを落とさず上れるか、また、後ろが優勝をデニスに譲り総合争いのみに目を向けるかがポイントとなる。

逃げ切りを思わせるような独走力をみせたデニス Photo: Yuzuru SUNADA

 残り14.5km、いよいよピアンカヴァッロの上りがスタートする。デニスはドリンクを飲み干し、フィニッシュに向けて身体と気持ちを整える。

 一方、メイン集団では総合争いが激化。チーム サンウェブに加え、アスタナ プロチームが前方へ。前日にトップ10圏外となったエース、ヤコブ・フルサン(デンマーク)の為に攻撃を仕掛ける準備をする。この動きにより図らずもメイン集団のペースがアップ。タイム差は1分30秒、1分と徐々に縮まる。そして、ここまでの頑張りもむなしく、デニスは残り9.5km地点で捕まってしまう。

サンウェブトレインさく裂 アルメイダは丸裸に

 レースは振り出しに戻り総合勢の争いが始まる。アルメイダ、ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ゲイガンハート、ケルデルマン、ヒンドレー、ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭へ出る。

ケルデルマンに追いつくことはできなかったが、必死にくらいついたアルメイダ Photo: Yuzuru SUNADA

 この時点で、サンウェブはケルデルマンとヒンドレーのみとなっていたが、直前までクリス・ハミルトン(オーストラリア)、サム・オーメン(オランダ)、マーティン・トゥスフェルト(チーム サンウェブ)らとともにトレインを組んでいた。ケルデルマンのマリアローザ獲得に向け、盤石の態勢を敷いていたのだ。

 その影響を受けてしまったのが、他の総合勢。フルサンはアシストの枚数が足りずに脱落。総合4位のブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAE・チームエミレーツ)、5位のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)、7位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)らもついていけなくなる。

 残り約7km、やはり動いたのはサンウェブだった。先頭を引っ張っていたケルデルマンとヒンドレーが更にペースアップ。ここについて行けたのはゲイガンハートのみだった。アルメイダの用心棒であるマスナダが脱落すると、直後にアルメイダも遅れてしまう。

 残り4.5kmでの先頭とアルメイダとのタイム差は約20秒。そのアルメイダとケルデルマンとの前日終了時点でのタイム差は56秒。単独ということも考えると、アルメイダは不利な状況だ。だが、ここで諦めるわけにはいかない。アルメイダはなんとか粘りの走りをみせる。

優勝はこの3人に絞られる。左からヒンドレー、ゲイガンハート、ケルデルマン Photo: Yuzuru SUNADA

 残り2kmを切っても先頭の顔ぶれは変わらず最後は3人の争いになる。フィニッシュラインまであと僅かというところで最初に仕掛けたのはゲイガンハート。このアタックにケルデルマンとヒンドレーはついていけず。ゲイガンハートは勝利を確信し、右手を天にあげフィニッシュラインを通過した。ゲイガンハートにとってこの優勝はグランツール初勝利。総合でもトップ10圏外から4位にジャンプアップした。これで、イネオスは今大会5勝目。デニスの逃げ切り、ゲイガンハートの勝利という2つのプランを用意していた点は、まさにイネオスらしい用意周到さだった。

 その後、2秒遅れでケルデルマン、4秒遅れでヒンドレーがゴール。単独で粘ったアルメイダはゲイガンハートから37秒遅れでレースを終えた。単独になっても諦めず粘ったアルメイダはマリアローザをなんとか守った。だが、2位のケルデルマンとの差は15秒。サンウェブはアルメイダの背中を捉えたと言ってもいいだろう。

 なお、新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン)は、83位でこのステージを終えた。

キャリアの中でも大きな勝利を手にしたゲイガンハート。表彰台も狙いたい Photo: Yuzuru SUNADA

 休息日を挟んで行われる第16ステージは、ウーディネからサンダニエーレ・デル・フリウリまでの228km。カテゴリー山岳が6つ(2級1つ、3級5つ)、ラスト1kmを切ってから勾配20%に達する上りも登場する。17ステージ以降の山頂フィニッシュやタイムトライアルに気を取られがちだが、このステージも決して油断はできない。

第15ステージ結果
1 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 4時間58分52秒
2 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +2秒
3 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ) +4秒
4 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) +37秒
5 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +1分22秒
6 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +1分29秒
7 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +1分36秒
8 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)
9 ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ プロチーム)
10 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)
83 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) +32分2秒

個人総合(マリアローザ)
1 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 59時間27分38秒
2 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +15秒
3 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ) +2分56秒
4 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +2分57秒
5 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +3分10秒
6 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +3分18秒
7 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) +3分29秒
8 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) +3分50秒
9 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +4分9秒
10 ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) +4分12秒
90 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) +2時間29分1秒

ポイント賞(マリアチクラミーノ)
1 アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
3 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)

山岳賞(マリアアッズーラ)
1 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブ・KTM)
2 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)
3 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)

新人賞(マリアビアンカ)
1 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 59時間27分38秒
2 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、チーム サンウェブ) +2分56秒
3 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +2分57秒

チーム総合
1 イネオス・グレナディアーズ 178時間33分42秒
2 ドゥクーニンク・クイックステップ +1分24秒
3 チーム サンウェブ +6分52秒

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