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栗村修の“輪”生相談<189>30代男性「トレーニングしても伸び悩み、過去の自分にすら引き離されてしまいます」

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 ロードバイクに乗り始めて4年、ホビーレースに参加し始めて3年になる30代前半のサラリーマンです。

 レースに参加し始めてから走行距離を増やしたり(月800〜1000km、30時間程度)、パワートレーニングも取り入れたりと、仕事や家庭に差し支えない範囲でトレーニングを続けてきました。

 2年くらいはタイムもパワーも少しずつですが伸びていましたが、1年ほど前から伸び悩むどころか徐々に遅く(踏めなく)、そして同じトレーニングが体感的に辛くなってきています。ここ数カ月は更に量も質も上げたトレーニングを行っているつもりですが、悪化する一方です。

 オーバートレーニングを疑いましたが、急にキツイ練習を増やしたわけでもなく、また同じ社会人の実業団の選手等に比べると練習の量も強度もおそらく低いと思うので原因がわかりません。

 他人と比べて遅いのはまだしも、過去の自分にすら引き離されている状況が精神的にとても辛いです。

 以前と同じレベルに戻し、また更に速くなるにはどうしたらいいでしょうか?

 今は伸び悩みの時期で、更に時間を確保して練習を増やし克服するべきでしょうか? それとも老化や自分の限界だと諦めて気軽に乗るべきでしょうか?

(30代男性)

 最近、とても多いご質問です。

 僕の近著(『栗村修のいちばん身につく 最強ロードバイクトレーニング』、宝島社)でもずいぶんページを割いて論じましたし、猪野学さんとコラボした輪生相談のPR記事のテーマもこれでした。みなさん、お悩みなんですよ。

 質問者さんに限らず、トレーニングをはじめて最初の1~2年は面白いように伸びるものですが、いずれ必ず壁にぶつかります。来るべきものが来ただけの話です。

 この現象を読み解くキーワードは、これもあちこちで繰り返した話ですが、「マンネリ」です。

 質問者さんはオーバートレーニングを疑いつつも腑に落ちない感じですが、ここでいったん、「オーバートレーニング」の定義を確認してみましょうか。

 ここではトレーニングを仕事に例えてみます。トレーニングというと、なにか特別なものだと考えてしまいがちですが、日常的な仕事に例えると、シンプルな答えが見つけやすいからです。

 仕事におけるオーバートレーニングとはなにか。「やりすぎ」状態がオーバートレーニングですから、仕事がきつくて、ドリンク剤を飲みつつの終電帰りが半年続いてしまった…みたいな状態が、仕事でのオーバートレーニングでしょう。そんな状態だったら、当然仕事の効率は落ちます。

ただひたすら追い込むだけではオーバートレーニングになってしまう Photo: Yuzuru SUNADA

 でも質問者さんは少し違いますよね。ご自身でも「急にキツイ練習を増やしたわけでもなく」と書かれています。すなわち、質問者さんはオーバートレーニングではない。

 では何なのかといいますと、「マンネリ」です。

 一日8時間労働の定時上がりがずっと続いていたら、オーバートレーニングにはなり得ません。じゃあ心身ともにハッピーかというと、必ずしもそうじゃないですよね。営業の部署にいるとして、仕事は毎日毎日、常連のお客さんへのあいさつ回りばかりだったらどうでしょう。

 もう顔なじみですから、一年目のような緊張感はありません。だんだんと情熱は薄れていき、ルーチンをこなすだけの毎日…。

 そんな状態に置かれたら、誰でも手を抜きはじめます。つまり、オーバートレーニングではないけれど、マンネリによってパフォーマンスが落ちていくということです。

 質問者さんは、この状態にあるのではないでしょうか。ここで注意してほしいのは、質問者さんは上の例えにおけるサラリーマンではありません。質問者さんは会社の経営者であり、怠けてしまっているのは質問者さんの身体なんですね。

 経営者である質問者さんは、働いているご自身の身体に同じ仕事ばかり与えていたのではないでしょうか。すると、身体はやる気を失い、怠け始めます。

 是非はともかく、日本の経営者はそんな社員に対して異動を命じるものでした。仕事内容がガラッと変わると緊張感が復活し、やる気を取り戻せるからです(もちろん、上手くいかないこともあるのですが)。

 ということは、質問者さんがご自身の身体に対してやらなければいけないことは、部署異動だと分かります。新しい事をやってみるべきなんですよ。

マンネリにならないよう異なった刺激を探してみよう(写真は20歳のサガン) Photo: Yuzuru SUNADA

 思い切って、ロードバイク以外に目を向けてみてください。ウェイトトレーニングをしてもいいし、水泳なんかもお勧めです。自転車なら、シクロクロスやMTBも非常に効くはずです。

 多分ですが、強い選手って、自分の身体に対して優秀な経営者としてふるまえるんですよ。つまり、フィジカルのモチベーションを維持する方法を知っているということです。業績ばかりを追求するとブラック企業化してオーバートレーニングに陥りますが、ルーチンばかりでもマンネリになります。身体を経営するのはなかなか大変ですが、うまく舵をとって長く続く企業にしてくださいね。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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