リエージュ~バストーニュ~リエージュ2020ログリッチがモニュメント初制覇 アルカンシエルお披露目のアラフィリップは降着5位

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ワンデークラシックの最高峰「モニュメント」の1つであるリエージュ~バストーニュ~リエージュが10月4日、ベルギー南部のワロン地方で開催された。優勝争いは5人によるスプリント勝負となり、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が勝利。モニュメント初制覇を果たした。世界王者の証であるマイヨアルカンシエルを着ての初レースとなったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は2着でフィニッシュも、スプリント時の他選手への侵害によって5位に降着となっている。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2020。5人による優勝争いは最後の最後に差し切ったプリモシュ・ログリッチ(左端)が初優勝。一度は勝利を確信したジュリアン・アラフィリップ(中央)は降着となり5位に終わった Photo: STIEHL / SUNADA

豪華メンバー集結の「ラ・ドワイエンヌ」

 1892年に初開催。最も歴史あるレースとして、「ラ・ドワイエンヌ」(最古参)との呼び名もあるこの大会。例年は春のクラシックの大トリを飾っているが、今年ばかりは新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、開催がこの時期までずれ込んだ。それでも、オランダやベルギーの丘陵地帯が舞台となるアルデンヌクラシックの最終戦の座は変わらず。10月10日に予定されていたアムステル・ゴールド・レースが中止となり、UCIワールドツアーにおけるこの大会の位置づけがさらに重要なものとなった。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2020のコースレイアウト ©︎ A.S.O.

 コースは、ワロン地域の基幹都市の1つであるリエージュを出発し、しばし南下。バストーニュで折り返すと、今度は北上してリエージュへと戻る。今年は257kmに設定され、その間に11の登坂区間が待ち受けるが、そのうちの9つがフィニッシュ前100kmにひしめく。

 なかでも、残り36kmで迎えるコート・ド・ラ・ルドゥット(登坂距離2.1km、平均勾配8.5%、最大勾配13%)は集団のふるい落としが激化する難所。5年ぶりにコースに組み込まれたコート・ド・フォルジュ(1.3km、7.8%)をクリア後下って、迎えるはコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン。幾多の名場面が生まれた最後の登坂区間は、距離にして1.3kmながら平均勾配11%、中腹で13.2%にまで達する。

リエージュをスタートするプロトン ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 この頂上を通過すると、フィニッシュまでは13.5km。登坂区間にはカテゴライズされないわずかな上りとダウンヒルをこなすと、残すは2.5km。今年はフィニッシュ地点が変わり、最終局面の平坦区間が短くなったが、それが勝負にどう影響するかが焦点に。それでも、パンチャーやクライマー有利のレースであるあたりは従来通り。

 今大会へは、世界王者になりたてのアラフィリップがマイヨアルカンシエルのお披露目の場となるほか、ツール・ド・フランスで激闘を繰り広げたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)、ログリッチ、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)の総合表彰台3人もそろい踏み。さらには、9月30日にラ・フレーシュ・ワロンヌを制したばかりのマルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ)も参戦。豪華メンバーがリエージュのスタートラインにそろった。

9人の逃げは早々と吸収 激しいクラッシュで集団に緊張感

 朝から降っていた雨が少し残る中をスタートしたプロトン。やがてその雨は上がるが、強い向かい風の中を進行していく。気温はスタート時点で10℃前後と、寒さを感じながらの幕開けとなった。

レースを先行した9選手 ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 いくつかの出入りを経て、20km過ぎで9人が逃げを試み集団の容認を得る。メンバーは、イニーゴ・エロセギ(スペイン、モビスター チーム)、コービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)、ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)、ケニー・モリー(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)、マティス・パースヘンス(オランダ、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)、オメル・ゴールドスタイン(イスラエル、イスラエル・スタートアップネイション)、ヴァランタン・フェロン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)、ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)、ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング)。少しずつリードを広げていくものの、それでも最大で5分50秒。メイン集団は中間地点を前にペーシングを本格化させ、早い段階で逃げている選手たちを射程圏内へと捉えることとなる。

 徐々にペースを上げていく集団だが、いくつかのクラッシュが発生。残り100kmを切ったタイミングでは、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム)やジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)らが巻き込まれ、ファンアーヴェルマートはしばらく起き上がることができないほど激しく地面に叩きつけられた。これでリタイアを余儀なくされたほか、別の場所ではアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)も落車でレースを離脱。残り82kmでは、右コーナーのアウト側で複数の選手が絡むクラッシュが起き、アラフィリップやヒルシらが足止め。両者は集団に復帰したものの、プロトン全体に緊張感が漂う時間が続いた。

中盤の登坂区間、コート・ド・サン・ロッシュを上るプロトン Photo: STIEHL / SUNADA

 ときを同じくして、先頭グループでは本格的にやってきた登坂で1人、また1人と人数を減らしていく。5つ目の上りであるコート・ド・ストクーでは、この状況にしびれを切らしたシェアーが単独で先を急ぎ始める。頂上通過後にマーダーが合流し、15kmほど2人逃げを続けたが、その後独走を開始。この間、集団では落車した選手たちの復帰を待った関係で3分ほどの差で推移していたが、逃げていた選手たちを次々と捕まえると、最後の1人となったシェアーも残り36kmで労せずキャッチ。レースをふりだしに戻して、重要局面の1つであるコート・ド・ラ・ドゥットへと入っていった。

これが現役最終レースのミヒャエル・アルバジーニがアタック ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 展開に変化が生まれやすい区間とあって、いよいよ各チームが隊列をなして前線をうかがう。上りが始まると、アラフィリップ擁するドゥクーニンク・クイックステップがコントロールを開始。これに呼応するように、有力選手たちが集団前方に顔を見せ始める。

 続くコート・ド・フォルジュまでの下りで、これが現役最終レースとなるミヒャエル・アルバジーニ(スイス、ミッチェルトン・スコット)が単独アタック。そのままトップで上りに入っていくも失速。代わってルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム)やルイ・コスタ(ポルトガル、UAE・チームエミレーツ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が動かしにかかるが、いずれも厳しいチェックにあい集団を引き離すところまでは至らない。力のある選手たちが一団となったまま、勝負のコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンへと向かった。

ログリッチが5人の争いを制する 最後は写真判定に

 全体の11カ所目、最後の登坂区間のコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンに向けては、ユンボ・ヴィスマが主導権確保に動く。トム・デュムラン(オランダ)が牽引し、ペースを作る。

コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでアタックしたジュリアン・アラフィリップ ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 その流れから、最も勾配の厳しいところでアラフィリップが満を持してアタック。これを読んでいたかのように、ヒルシとログリッチも続く。さらにはポガチャル、ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)も合流。続いて迎えた登坂区間に数えられなかったわずかな上りを利用してヒルシがアタックすると、クフィアトコフスキが脱落。15秒ほど後ろのパックではポートやマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)らが追走を図るが、勢いは完全に前を行くメンバーが勝る。4人に絞られた先頭グループは、そのままリエージュ市街地へとつながる下りを加速した。

勝負を意識し牽制状態になる4選手 ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 ほとんど乱れることなく先頭交代を繰り返してきた4人も、残り1kmを前にいよいよフィニッシュを意識しての牽制が始まる。アラフィリップやヒルシが押し出されるような形で前に位置しつつ、探り合いが数百メートル続いた。すると、追走グループから単独で飛び出していたマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)が土壇場でブリッジに成功。追いついた勢いのまま、残り350mで早めのスプリントを開始した。

 ただ、追うのに力を使ったモホリッチのスピードは決定打とはならず。4選手がしっかりとチェックしたまま到達した残り200mで、アラフィリップが加速。これを待っていたかのようにヒルシとポガチャルが反応するが、アラフィリップが急激にラインを変化させ、ヒルシとポガチャルの進路をブロック。両者とも危険を回避すべく脚を止めるが、アラフィリップはそのまま先頭を突き進み、そのままフィニッシュラインを通過するかに思われた。

優勝をかけた5選手のスプリント ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 勝利を確信し両手を掲げたアラフィリップの脇から伸びてきたのは、スプリント開始時に5人の中で最後尾に位置していたログリッチ。最後の数十メートルで並ぶと、ハンドルを投げ出してフィニッシュラインを通過。きわどいシチュエーションは、写真判定にゆだねられた。

 しばらくして、ログリッチの優勝が発表された。この大会初出場で初優勝、そして5つあるモニュメントでも初めてのタイトル獲得となった。

 以下、アラフィリップ、ヒルシ、ポガチャルの順でレースを終えたが、審議の結果アラフィリップにスプリント時の侵害が認められ、ヒルシの2位、ポガチャルの3位が確定。アラフィリップは最終局面で先頭に残ったメンバーでは最下位となる5位に終わった。

ログリッチ「チーム全体をハッピーにできて誇らしい」

 ログリッチといえば、9月20日に閉幕したツール・ド・フランスでのポガチャルとの激闘が記憶に新しい。そのときは、長くマイヨジョーヌを着用しながら、事実上の最終決戦だった第20ステージで逆転を許し、初のツール制覇が目の前から消える悔しさを味わった。今度は最後の最後に差し切っての優勝。アラフィリップの動きによって混戦となった側とは逆サイドからスプリントしたことも奏功したといえそうだ。

優勝に驚くプリモシュ・ログリッチ ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 レースを終えて、「最後まで自分を信じてプッシュを続けた」と振り返ったログリッチ。モニュメント制覇はキャリアにおける目標の1つだったといい、「ウィッシュリストにチェックを入れられるのがうれしい」と晴れやかな笑顔。コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでのデュムランのペースメイクに限らず、レースを通じてアシスト陣が自身を支えてくれたとし、「チーム全体をハッピーにできて誇らしい」とビッグタイトル獲得に胸を張った。

 2位のヒルシは悔しさを表に出すことなく「今日は本当によい1日だった」と第一声。スプリントについては、「何が起こったのか正直分からない。アラフィリップの車輪と私の車輪とが触れたのは確かだが、それは互いに全力を尽くしていた結果によるもの」と自他を責めることなく結果を受け入れる。もっとも、ラ・フレーシュ・ワロンヌの優勝に続き、今回の2位も「ここまでうまくいくとは思っていなかった」と驚きの結果だったことを強調する。そして、「来年もまた戻ってきたい」と述べて、次のチャンスに賭けることを誓う。

2位と3位を分けたマルク・ヒルシ(右)とタデイ・ポガチャル。それぞれの思いが交錯する ©︎ A.S.O./Gautier Demouveaux

 一方で、3位のポガチャルは悔しさを隠さない。結果に対して「複雑な気分だ」と述べた後、「チームメートの働きもあって最後まで残ることができた。良い形でスプリントに入ったが、一瞬ですべてが変わった」と思わぬ形で加速できなかったことを惜しむ。それでも前を向き、「このレースで優勝争いに加わることができてうれしい。またの機会に挑戦しようと思う」と、こちらも今後の可能性にトライする意欲を見せた。

 表彰台を押さえた3人とは異なり、マイヨアルカンシエル初戦での勝利を逃したアラフィリップは反省の弁。「全責任は自分にある。スプリントラインを変えたことで他のライダーの走りに問題を引き起こしてしまったことを謝りたい。ただ、意図的ではなかったことだけは理解してほしい」とコメント。レースについては、途中でのクラッシュやバイク・シューズの交換と慌ただしい時間帯があったものの、「一番厳しい局面で攻撃ができ、勝負するメンバーを絞り込むことができた。最終局面は自信があった」と振り返った。最後に今後のレース予定について問われ、「数戦走ってからツール・デ・フランドルを目指す。次のレースに向けて集中力を高めていきたい」と話した。

上位3選手の表彰。左から2位マルク・ヒルシ、1位プリモシュ・ログリッチ、3位タデイ・ポガチャル Photo: STIEHL / SUNADA

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 2020
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 6時間32分2秒
2 マルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ) +0秒
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)
4 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)
5 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
6 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) +14秒
7 マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)
8 ティシュ・ベノート (ベルギー、チーム サンウェブ)
9 ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)
10 ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)

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