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栗村修の“輪”生相談<188>30代男性「サイクルツーリズムによる地域活性化について意見を頂きたいです」

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 栗村さん、初めまして。

 僕は来月から(編注・投稿は7月)茨城県石岡市の地域おこし協力隊に、サイクルツーリズムを通じて地域を活性化する隊員として着任予定です。

 面接を受ける際に、自分なりにサイクリングマップの作成や各種イベントの提案、サイクリングチームの発足、はたまた合宿地として誘致などのアイデアを伝えてみました。僕自身、ロードバイクに乗って走る事が大好きで、その楽しさを沢山の人に伝えたいと思っています。

 しかし、いざ本当にイベントを開催する・サイクリングチームを作る等となった際に、やらなければならない事が不明でとても不安です。また、どういったイベントであれば自転車に、更に石岡市に興味を持ってもらえるのか。勿論それは、これから石岡市の方々と話し合いながら決めていくことだとは思います。

 そこで、そういったイベント等をプレゼンするに当たって必要な知識や、自転車の楽しさを伝えられるような方法を、経験豊富な栗村さんにご教授いただきたいです。

 ただでさえコロナ禍に見舞われている現状で、安全面への配慮などいつも以上に気を遣うシーンが多いと思います。

 石岡市は東へ少し下れば霞ヶ浦が、西へ少し上れば筑波山があるという自転車乗りにとってとても良い環境が整った場所だと思っています。それらを生かして、また石岡市の方々と協力して少しでも地域活性化の力になりたいです。そしてスポーツ自転車の普及にも一役買えたなら、これほど良いことはないと思います。

 丸投げするような質問になってしまいましたが、どうか貴重なご意見を頂きたいです。回答よろしくお願いします。

(30代男性)

 自転車活用推進法が施行されてから、各自治体による自転車を使った地域おこしが盛んになっています。

 その中で重点的に実施されるべき施策は主に14項目が設定されています。たとえば自転車ナビマークやナビラインの整備など、走行環境作りがその一つですが、今回のご質問にあるサイクルツーリズムもそうです。

 サイクルツーリズムとは、一言でまとめると自転車と旅の融合です。そのことで地域経済を活性化させることを狙っているわけです。

 今回の質問者さんは、自治体の方ではなく、元々自転車畑の人だと思われますので、そのことを前提に話を進めますね。

 まず嬉しいことに、自転車を使った地域おこしは全国的に流行っています。有名な成功例としては、サイクルツーリズムであればしまなみ海道、チームやレースを通じた地域活性としては宇都宮ブリッツェン、ジャパンカップなどがあります(観客が見に来るわけですから、レースも立派な地域おこしです)。また、他の地域でも様々な取り組みが行われています。

栃木県宇都宮市は国際レース「ジャパンカップ」と地元チーム「宇都宮ブリッツェン」を軸に自転車を活用した地域おこしを進めている Photo: Yuzuru SUNADA

 ということは、今からはじめるサイクルツーリズムは、どうしても後発になるということです。需要(サイクリストたち)と供給(自転車を使った地域おこしをしたい自治体)との関係が、大きく供給過多になっているわけですから、何らかの独自性を打ち出す必要がある段階に入っているということですね。どの自治体も先行する成功例を参考にして事業を進めていますが、それだけでは難しい。ここがまず重要な点です。

 さて、そんな地域おこしですが、自転車畑の人が加わると、どうしても視点が自転車乗りのそれに偏りがちです。しかし書いたように供給過多でライバルが多い状態ですから、「なぜこの地域なのか」という差別化ポイントが欠かせません。

 これは、サイクリスト視点だけでは見落としがちな点です。ですから、その石岡市だけの魅力はなにか、なぜ石岡市なのかを十分に考えてみてください。

 次に需要、つまりサイクリストが石岡市に何を求めているのかを十分にリサーチしてください。近くにある霞ヶ浦や筑波山は確かにサイクリストには魅力的なのですが、観光の視点からはもうお馴染みの「商品」なので、もしかしたら目玉にするには弱いかもしれません。その場合、別の商品か、あるいはプラスアルファの「プラン」が必要です。少し考えてみましょう。

 まず、石岡市が訴求すべきサイクリストは近隣の東北か東京に住んでいる人々になると思いますが、ここは東京近辺の人がターゲットになるでしょう。自然に恵まれた東北の人々がわざわざ茨城県に来るメリットはそれほど多くないかもしれないからです。

 では東京のサイクリストが石岡市に何を求めているか? が問題になります。言うまでもなく東京にないものを求めて他の地域に行くわけですから、東京にないものを考えます。

 ひとつは、明らかに気持ちよく走れる環境ですよね。でもそれだけではなく、忙しい東京の日常には「時間」もないと思うんです。ということは、何らかの意味で「時短」を提供できると強いかもしれません。

 この観点が重要かもしれませんね。というのも、東京に近い石岡市は「時間」という点では他の地域、たとえば沖縄や北海道などよりはるかに有利だからです。

 また、石岡市の近くには「茨城空港」という強みもあります。うまく組み合わすことができれば、全国のサイクリストに対して「時間」を提供できる可能性もあります。

 自転車に向いた環境だけなら、地方にはいくらでもあるでしょう。でも忙しい現代人にとっては、時間効率も大事なはず。だったら、移動に時間(手間)がかからなくて環境がいい場所を探すでしょう。たとえば、茨城県とか。

 …こう考えると、石岡市の武器が見えてこないでしょうか。まあ、この考察はあくまで一例にすぎません。ともかく、今はライバルが多い時代ですから、石岡市だけの強みを探し出すことを忘れないことが大切だと思います。うまくいくことを祈っています。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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