UCIロード世界選手権2020ファンデルブレッヘンが女子ロード優勝で個人TTとの2冠達成 與那嶺恵理は21位

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 イタリア・イモラで開催中のUCIロード世界選手権。大会3日目となった9月26日は女子エリートロードレースが行われた。激しいアップダウンの変化に富んだコースでの争いは、急坂区間でのアタックで圧倒したアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス)がフィニッシュまでの41kmを独走。最後までライバルの追撃を許さず、この種目では2年ぶりに女王の座を奪還。2日前に勝利した個人タイムトライアルと合わせて、自身初の2冠を達成した。日本から参戦した與那嶺恵理(アレ・BTCリュブリャナ)は最終周回までメイン集団でレースを展開。最終的に21位で終えている。

UCIロード世界選手権・女子エリートロードレース。最後の41kmを独走したアンナ・ファンデルブレッヘンが個人タイムトライアルとの2冠を達成。25年ぶりの快挙となった Photo: Yuzuru SUNADA

変化の激しい周回コースがロードレースの舞台

 個人タイムトライアル種目が終わり、ロードレース種目へと移ったこの日。まずは女子エリートが143kmで争われた。

登坂区間をゆくプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 前日までの個人タイムトライアルはほぼオールフラットのレイアウトだったが、打って変わってロードレースは変化に富んだハードコース。主会場のイモラ・サーキットを発着とする周回コースは、最初の1kmと最後の3kmでサーキット内を走行し、その後はブドウ畑を横に見ながら進むルート。1周28.8kmに設定され、周回半ばにやってくるマッツォラーノとチーマ・ガッリステルナ2カ所の登坂区間がポイント。2つの上りを合わせると登坂距離は5.5km、平均勾配が10%で最大にして14%の急坂だ。

 また、全体的に道幅が狭く、いったん集団後方へと下がると再浮上に時間を要する可能性が高い。下りもテクニカルで、180度ターンや上り返しを含むなど、まったく気を抜くことができないため、上位進出のためにはできるだけ集団前方でレースを展開することが求められる。レース中にチームカーへ下がるタイミングも、慎重を期する必要が出てくる。

 このコースを女子は5周回。ちなみに、1つの周回コースで全行程を終えるのは2014年のポンフェラーダ大会(スペイン)以来となる。

有力国を多数含んだ逃げがレース前半を活性化

 そんなコース特性が関係してか、リアルスタート前のニュートラル区間からクラッシュが発生。ひと呼吸おいてスタートが切られてからも数人が落車が起きるなど、緊張感が漂う序盤となる。

上りにとどまらず下りのテクニカルさや道幅の狭いことも大きな特徴のコース Photo: Yuzuru SUNADA

 1周目は逃げを狙った動きはないものの、テクニカルなコースに集団は縦長に。この周回の後半でファンデルブレッヘンがメカトラブルで一度プロトン後方まで下がったが、アシストとともに冷静に前を目指す。イモラ・サーキットに戻ってきたところで集団復帰し、問題なく戦線へと戻っている。

 集団が活発になったのは2周目に入ってからのこと。ヴァレリー・デメイ(ベルギー、CCC・リブ)が1人で飛び出したのをきっかけに、逃げ狙いの動きもみられるようになってくる。デメイは10kmほど独走したのち集団に捕まるが、代わってアリソン・ジャクソン(カナダ、チーム サンウェブ)が逃げを開始。少しばかり単独走行になったが、サーキットに戻ってきたところで集団からグレース・ブラウン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が抜け出してジャクソンに合流。2人で逃げる態勢へと入っていく。

 さらに3周目に入ると、テイラー・ワイルズ(アメリカ、トレック・セガフレード)のアタックを機に、有力国の選手が次々と追随。労せず先頭のジャクソンとブラウンに追いついてからは、メンバーの入れ替わりを経て9人の先頭グループに。一時は静観の構えになりかけたメイン集団だったが、先頭にいたブラウンが後退したこともあり、オーストラリアがペーシングを開始。そのまま4周目に入ると、先頭グループとの差はあっという間に縮まっていった。

ファンデルブレッヘンが急坂で圧倒 フィニッシュまでの41kmを独走

 追い上げムードが高まってきたメイン集団に大きな変化が生まれたのは、マッツォラーノの上り。エイミー・ピータース(ブールス・ドルマンス)を先頭グループに送り込んで以降、静かにレースを進めていたオランダが満を持してペースアップした。それまでに少しずつ人数を減らしていた集団だったが、この動きで完全に崩壊。ファンデルブレッヘン自ら先頭に立って牽引する場面も見られるようになる。

 それからはオランダが集団をコントロールする。続くチーマ・ガッリステルナでマリアンヌ・フォス(CCC・リブ)が集団のペースアップを担うと、ここまで粘っていた先頭グループはそのまま吸収。その直後、決定的な局面が訪れた。

独走に持ち込んだアンナ・ファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA

 左手首のけがを克服し直前にチーム合流したアンネミーク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)が急坂区間でスピードを上げて前線の人数を絞り込むと、ガッリステルナの中腹でファンデルブレッヘンがアタック。ファンフルーテンとエリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)、セシリー・ウットルプ・ルーウィグ(デンマーク、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フュテュロスコープ)が続くが、上りのパワーに勝るファンデルブレッヘンが3人を引き離すことに成功。そのまま頂上を通過して、完全な独走態勢に持ち込んだ。

 2日前には個人タイムトライアルを制しているだけあって、独り旅になっても衰え知らずのファンデルブレッヘンのスピード。フィニッシュ前41kmでアタックを成功させてからは、後続とのタイム差は開く一方になる。

 その後ろでは、上りでファンデルブレッヘンに続いたロンゴボルギーニらがメイン集団に吸収される。35人となった集団は、1分43秒差で最終周回の鐘を聞くことに。オーストラリアやイギリスが牽引するその中には、與那嶺もしっかりと含まれた。

独走でロードレースを勝利。2冠を達成しガッツポーズのアンナ・ファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA

 快調に飛ばすファンデルブレッヘンは、最後の1周も問題なく進行。メイン集団ではチーム・ガッリステルナでアタックがかかり、ロンゴボルギーニとファンフルーテンが再び抜け出すが、両者ともに2位を意識した動き。2冠に向け突き進んだファンデルブレッヘンは、安全圏を保ったままイモラ・サーキットへと戻ってきた。

 そして最後の直線。それまでの集中して踏み続けた姿から一転、笑顔で高らかに両拳を掲げた。ロードでは2年ぶりの世界女王。自身初となる個人タイムトライアルとの2冠は、1995年のジャンニ・ロンゴ(フランス)以来の快挙となった。

 現在のロードレース界では最強女王の座を射止めたファンデルブレッヘン。表彰式ではオランダ国歌を聴きながら涙を浮かべ、マイヨアルカンシエルにかけていた思いを感じさせた。レース後の記者会見では「序盤から本当に難しいレースで、特に上りがハードだった」とコメント。チームとしてハードな展開に持ち込むことを予定していたというが、独走に持ち込んだタイミングについては「少し早かったかもしれない。最後まで1人で行けるかどうか不安もあった」と語った。それでも、狙い通りの2冠をきっちり達成。「今までいろいろなレースに出場したけど、今回の結果でよいシーズンだったと後々振り返ることができると思う」と充実した様子だった。

 なお、2位争いも熾烈となり、ファンフルーテンがロンゴボルギーニとのマッチアップを制して銀メダル。オランダ勢がワン・ツーフィニッシュを決めるとともに、ファンフルーテン自身もけがを乗り越えての好走。ロンゴボルギーニは同じく3位となった2012年以来2回目の表彰台確保とした。

女子エリートロードレースの表彰。左から2位アンネミーク・ファンフルーテン、1位アンナ・ファンデルブレッヘン、3位エリサ・ロンゴボルギーニ Photo: Yuzuru SUNADA

與那嶺「良い感じで走ることができた」と笑顔

 日本勢ではただ一人の参戦となった與那嶺は21位。この大会における自己最高位には届かずも、終始メイン集団でレースを展開した。

終始メイン集団でレースを展開。21位で走り終えた與那嶺恵理 Photo: Yuzuru SUNADA

 リアルスタート前のニュートラル区間でチェーン落ちに見舞われたものの、その後は集団前方をキープ。「いつもなら1周目からふるい落としが激しいが、前がふたをするような状態で抑え込んでいたのでレースペースには問題なく対応できた」と振り返った。オランダ勢が猛然とペースを上げた4周目の上りでは後方へと下がる場面もあったが、「コースレイアウト的に極端に遅れなければ集団に戻れることは計算できていた」と想定通りの流れだったと説明。

 パンデミックによってシーズンが中断するなどイレギュラー化したこともあり、「自分でも今年はどんな走りができるのか、いまだに分からない」と打ち明けるが、それでもしっかりとした組み立てでレースを終えたことに「今日はよい感じだった」とトーンは明るい。今後もシーズン終盤までビッグレースが控えているといい、そこに向けて弾みとなったレースに笑顔を見せた。

女子エリートロードレース 結果
1 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) 4時間9分57秒
2 アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) +1分20秒
3 エリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)
4 マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ) +2分1秒
5 リアーヌ・リッパート(ドイツ、チーム サンウェブ)
6 エリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)
7 カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
8 セシリー・ウットルプ・ルーウィグ(デンマーク、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フュテュロスコープ) +2分41秒
9 リサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNT) +3分8秒
10 マーレン・ローセル(スイス、エキップ ポーレ・カ)
21 與那嶺恵理(アレ・BTCリュブリャナ)

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