UCIロード世界選手権2020男子エリート個人TTはガンナが優勝 イタリアに同種目初のアルカンシエル、ファンアールトが2位健闘

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 イタリア・イモラで開催されているUCIロード世界選手権は現地時間9月25日、大会2日目の種目として男子エリートの個人タイムトライアルを実施。31.7kmで争われたレースは、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が平均時速約53kmで走破。ライバルを圧倒するスピードで初優勝すると同時に、開催地イタリアに1枚目のマイヨアルカンシエル、さらには同種目採用以来始めて同国に勝利をもたらした。

UCIロード世界選手権・男子エリート個人タイムトライアル。平均時速53kmに迫るハイスピードで駆け抜けたフィリッポ・ガンナがロードでは初の世界王者に輝いた Photo: Yuzuru SUNADA

トーマスが好タイムで長くトップを守る

 前日の女子エリートに続き、男子エリートの個人タイムトライアルをイモラ・サーキットを発着とするコースで実施。今回は男女共通の31.7kmにレース距離が設定されており、獲得標高も200mとほぼフラットなレイアウトとなっている。

 この日のイモラは強風。前半は向かい風、一転して後半は追い風となり、コンディションをいかに味方につけるかもポイントと見られた。

 エントリーした57選手(うち未出走1人)が1分30秒おきにスタート。前半に出走した選手で基準となるタイムをマークしたのが、地元イタリア勢の先鋒を務めたエドアルド・アッフィニ(ミッチェルトン・スコット)。中間計測から前走者たちを大きく上回ると、フィニッシュでは37分25秒を記録。この後長い時間、ホットシートに座り続けることとなる。

好タイムをマークしたゲラント・トーマス。長くトップを守った Photo: Yuzuru SUNADA

 実力者が控える後半スタート組。優勝候補の中では実質一番手で登場したのはゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)。スタートからうまくスピードに乗せると、中間計測でアッフィニを25秒上回ってこの時点での一番時計。追い風に乗ったコース後半でさらに勢いづき、フィニッシュではトップタイムを54秒更新。36分31秒で走破して暫定1位となった。

 実力・実績的にトーマスのタイムに迫るとみられていたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)、カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)は、フィニッシュでそれぞれ15秒と10秒の遅れ。最後から6人目に登場したレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)も後半のペースアップで追い込みをかけたが11秒遅れ。

 残すは5人。トーマスのタイムに対してどれだけの走りをするかが見ものとなった。

平均時速53kmで走破のガンナ ライバルを圧倒

 最終盤で出走の5人は、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)、トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、ガンナ、ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)の順。彼らが実際に期待通りの走りを見せる。

2位に食い込んだワウト・ファンアールト Photo: Yuzuru SUNADA

 ファンアールトは中間計測こそトーマスから10秒遅れだったが、後半に入って猛然とスピードアップ。前半の遅れを取り戻すだけでなく、逆に10秒上回ってこの時点でトップに浮上する。

 次に出走したキュングは途中までファンアールトを上回るペースを刻んだが、後半に入って逆転を許す。それでもフィニッシュまで粘って3秒差にまとめる。この時点で2位とした。

 2017年にこの種目を制しているデュムランも、中間計測までは10秒遅れにとどめてその後の走りに期待がかかるが、後半に入って鋭角コーナーでタイヤを滑らせバランスを崩すなど、リズムに乗り切れず。フィニッシュではファンアールトから47秒遅れとなり、上位戦線から脱落した。

3位のシュテファン・キュング Photo: Yuzuru SUNADA

 圧巻は最後から2人目でコースへと飛び出したガンナだった。スタートからしばらく続く向かい風もなんのその。ただひとり平均時速50kmに迫るスピードで中間計測を通過すると、ライバルを大きく上回っての一番時計。進行方向が変わった後半には追い風に乗って突き進むと、焦点はフィニッシュタイムに。そして記録はファンアールトのタイムを26秒更新する35分54秒。この日唯一となる平均時速約53kmでの走破には、ホットシートに座ったばかりのファンアールトも拍手。

 最終走者のデニスも2連覇をかけて前半から攻めるも、中間計測でガンナから20秒遅れると、後半はさらにタイム差が広がり、39秒差でのフィニッシュ。

 結果、ガンナの初優勝が決定。2位にはファンアールト、3位にはキュングと続き、前回覇者のデニスは5位だった。

上位3選手の表彰。左から2位ワウト・ファンアールト、1位フィリッポ・ガンナ、3位シュテファン・キュング Photo: Yuzuru SUNADA

ガンナ「言葉では言い表せないほどの喜び」

 マイヨアルカンシエルに袖を通したガンナは、1996年7月25日生まれの24歳。トラックとロードの兼任選手として各年代のトップを走り、なかでもトラック競技・インディビジュアルパシュート(個人追抜)のスペシャリストとしても知られる。今年2月にドイツ・ベルリンで行われたUCIトラック世界選手権では、同種目の予選で4分1秒934の驚異的な世界記録を樹立。決勝でも強さを発揮し、4度目の世界王者に輝いている。

表彰式でイタリア国歌を聴くフィリッポ・ガンナ Photo: Yuzuru SUNADA

 ロードでは、2017年にUAE・チームエミレーツでプロキャリアをスタート。昨年から現チームで走っている。プロ入り以来タイムトライアルを得意とし、キャリアにおける勝利はすべて個人タイムトライアルでのもの。直近で出場したティレーノ~アドリアティコ(9月7~14日)でも、最終・第8ステージの個人タイムトライアル(10.1km)を時速56kmで走り抜いて勝利。ロード世界選手権では昨年この種目で銅メダルを獲ったが、今年ついに世界の頂点を極めた。

 ロードでは初めて、トラックと合わせると5枚目のマイヨアルカンシエルに袖を通したガンナ。勝利を決めて開口一番「夢がかなった」と感激の面持ち。「レース中はチームカーからの情報が効果的で、フィニッシュラインを通過するまで私の助けになった」と振り返る。今大会に向けてはイタリア代表チームはもとより、普段所属するイネオス・グレナディアーズからのサポートも篤かったとし、「この喜びと感謝は言葉では言い表せない。ロードでは初のマイヨアルカンシエル。本当に特別だ」と述べた。

 地元勝利に沸くイタリア自転車界にとっても、記念すべき1日となった。1994年の個人タイムトライアル採用以来、初となる世界王者の輩出となったからだ。イタリア代表を率いるダヴィデ・カッサーニ監督は、ガンナのフィニッシュ直後から勝利を確信してガッツポーズ。悲願のアルカンシエル獲得に感情を爆発させた。

喜びに沸くイタリア代表チーム。男子エリート個人タイムトライアルでは初のマイヨアルカンシエル獲得。地元での勝利にダヴィデ・カッサーニ監督(左端)も感情を爆発させた Photo: Yuzuru SUNADA

 大会は翌26日からロードレース種目へ。女子エリートロードレースが143kmで争われる。

男子エリート個人タイムトライアル 結果
1 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) 35分54秒
2 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +26秒
3 シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ) +29秒
4 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +37秒
5 ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) +39秒
6 カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) +47秒
7 レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +48秒
8 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング) +52秒
9 アレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション) +1分6秒
10 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分14秒

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