ツール・ド・フランス2020 第21ステージパリ・シャンゼリゼでのスプリントはベネット完勝 21歳ポガチャルはマイヨジョーヌほか3冠達成

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2020は現地時間9月20日に行われた第21ステージで、3週間の戦いの幕を閉じた。最終ステージは、しばしのパレード走行の後にパリ・シャンゼリゼ通りを舞台とした平坦レースに。スプリントによる勝負となって、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がステージ優勝。同時に初となるポイント賞のマイヨヴェール獲得を決めた。そして、前日のステージで個人総合首位に立ち、個人総合優勝を濃厚にしていたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)も問題なくフィニッシュへ。改めて、第107回大会の覇者に確定し、マイヨジョーヌを戴冠。山岳賞、新人賞も獲得し、今大会3冠を達成した。

ツール・ド・フランス2020第21ステージ、大会の最後を飾るスプリントはサム・ベネット(中央)が勝利。マイヨヴェール初獲得に花を添えた Photo: Pool / BELGA / SUNADA

3週間の旅を締めくくるきらびやかな1日

 前日19日に行われた山岳個人タイムトライアルで、ポガチャルが2位以下に1分以上の差をつける圧勝劇。57秒のビハインドを跳ね返し、それまで11日間トップを守っていたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)を逆転。個人総合優勝を決定的なものにした。

スタート前のプレゼンテーションに臨むUAE・チームエミレーツ ©︎ A.S.O./Alex Broadway

 そんな劇的なレースから一夜明け、いよいよツールは最終日を迎えた。8月29日に南仏・ニースを出発し、第1週はピレネー山脈へ。第2週は中央部を横断するように駆け抜け、中央山塊とジュラ山脈へ。第3週はアルプスを主たる戦いの場としながら、最後にヴォージュ山脈でのタイムトライアルと、ときに海を見ながら、ときに急峻な山へと向かいながら、最終目的地のパリを目指してきた。

 フランスでは新型コロナウイルスの感染拡大が進み、大きな不安を抱えながらも、大会は状況に応じた対策を進めてきた。開幕前はパリ到達が実現するのか不透明だったレースだったが、出場選手の感染はなくパリが見えるところまでやってきた。

大急ぎで用意されたというタデイ・ポガチャルのマイヨジョーヌ仕様バイク。チームメートのバイクもバーテープがマイヨジョーヌカラーに Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そして、ついにパリ到達の日を迎えた。マント=ラ=ジョリーからパリ・シャンゼリゼまでの最終ルートは、122kmと比較的短めに設定されているが、基本的にコースの前半ではレースらしいレースは行われない。そこでは3週間を戦い抜いた選手たちによるパレード走行が行われ、選手同士でねぎらい合い、マイヨジョーヌ着用者や各賞受賞者などによる走りながらの記念撮影、チャンピオンチームのメンバーがそろっての“祝勝会”などがコース上で見られる。

 状況が変わるのは、パリ市内に入りシャンゼリゼの周回コースに入ったところから。1周7kmのコースは、ルーブル美術館の中庭やテュイルリー庭園、コンコルド広場を抜けてシャンゼリゼ通りに入るとエトワール凱旋門と、パリ中心部の見どころを多数含んだ豪華絢爛のルーティング。途中で中間スプリントをはさみながら、9周回してフィニッシュを迎える。スプリント勝負となるのが例年のセオリー。会期中最後のステージ優勝者が決まるとともに、マイヨジョーヌなど各賞も確定する。

王座決定に向けポガチャルは全身マイヨジョーヌカラーで

 スタート地マント=ラ=ジョリーのチームパドック、晴れてリーダーチームとなったUAE・チームエミレーツのバスが到着すると、真っ先に降りてきたのは全身イエローに身を包んだポガチャルだった。

全身をマイヨジョーヌカラーで固めたタデイ・ポガチャル。バイクとともに記念撮影を行う Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 前日の結果を受けて大急ぎで用意されたというマイヨジョーヌカラーのバイクに触れ満足げなヤングリーダーは、チーム広報用の記念撮影に応じる。さらにはマイヨジョーヌの着こなしをチームスタッフに整えてもらう様子も。そこには初々しさとともに、少しずつ王者の風格が漂い始めた様子が見られた。この日のUAE・チームエミレーツは、他の選手もマイヨジョーヌカラーのグローブとソックス、バーテープを用いてウイニングライドに臨むこととなった。

 パレード走行中はプロトン内で多くの選手たちから祝福を受けたポガチャル。チームメートやスロベニア勢との記念撮影にも臨む。その後は今大会で最大かつ最高のライバルだったログリッチとともに談笑する姿も見られた。

タデイ・ポガチャル(右)とプリモシュ・ログリッチ、マイヨジョーヌを争ったスロベニア人ライダー2人が仲良く記念撮影に収まる Photo: Yuzuru SUNADA

 しばしの平和な時間を過ごしたプロトンは、パリの中心部に近づくにつれて徐々に統率がとられていく。大集団を率いるのは、ポガチャル擁するUAE・チームエミレーツ。リーダーチームの任務でもあるシャンゼリゼへの牽引が遂行されると、ようやく“レース”が幕開け。ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)のファーストアタックから選手たちが動き出した。

 それからは細かな出入りが連続したが、3周目に入ってコナー・スウィフト(イギリス、アルケア・サムシック)、ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス)、マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム)が抜け出しに成功。とはいえ、メイン集団も完全に容認することはなく、15秒前後の差で進行を続ける。この間に中間スプリントポイントを迎え、シャフマンが1位通過。メイン集団ではベネットが先頭を確保して全体の5位通過。ポイント賞を争ってきたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がここでのスプリントに加わらなかったこともあり、ベネットの同賞獲得が決定的な状況となった。

ベネットは初のマイヨヴェールを祝う有終のスプリント勝利

 逃げグループとメイン集団との形勢は、残り2周で崩れることとなる。粘り続けた先頭の4人だったが、周回後半でスウィフトが集団へと戻ると、他の3人もリードを保つのが難しくなってくる。

エトワール凱旋門の前を通過するプロトン ©︎ A.S.O./Alex Broadway

 15秒差で最終周回の鐘を聞くと、集団はNTTプロサイクリングやユンボ・ヴィスマ、トタル・ディレクトエネルジーなどがトレインを組んで主導権争い。自然と逃げる選手たちとの差が縮まっていき、残り5kmでファンアーヴェルマートとペリションをキャッチ。粘りに粘ったシャフマンも残り3.5kmで集団へと引き戻された。

 そうして勝負はスプリントへとゆだねられることに。ここまで他チームの動きを見てきたドゥクーニンク・クイックステップのトレインが残り2kmで満を持して先頭へ。その背後ではユンボ・ヴィスマ、トレック・セガフレードの隊列が続く。さらには単騎になったスプリンターが自らポジション争いに加わる様子も見られる。

シャンゼリゼの周回コースを走るタデイ・ポガチャル Photo: Yuzuru SUNADA

 ドゥクーニンク・クイックステップは、発射台のミケル・モルコフ(デンマーク)が他チームに先頭を譲ることなく、コンコルド広場を抜けて最後の直線へと突入。トレック・セガフレードのトレインも前線に加わったことで一瞬ポジションを下げたベネットだったが、残り200mを切ると猛加速。ベストなスプリントラインをチョイスすると、あとはフィニッシュめがけて突き進むだけ。最後の100mは時速57.7kmに到達したパーフェクトなスプリントで今大会2勝目となるステージ優勝を決めてみせた。

 スプリントキングの証でもあるポイント賞を決め、フィニッシュ直後は大興奮だったベネット。仲間たちとの激しい喜びようは、マイヨヴェールをかけた長き戦いを勝ち抜いた充実感に満ちたものに。この賞の「絶対王者」であった、元チームメート・サガンの8度目の獲得を阻止して新王者に輝いた。

マイヨヴェールを着てのシャンゼリゼ勝利に大興奮のサム・ベネット ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 レース後の記者会見では、シャンゼリゼでのスプリントを“世界スプリント選手権”と称して「グリーンジャージ(マイヨヴェール)でこのステージを勝てるなんて信じられない。シャンゼリゼへ来るまで本当に長かった。だけど、山で苦しみぬいただけの価値はあった」と、その表情には達成感があふれる。最終局面については、「向かい風が吹いていたので、タイミングは慎重になった。トレック・セガフレードのトレインに抜かれたが、誰かが上がってくることは想定していた。(スプリントラインは)左右どちらでも行けるよう意識していたので、あとは空いたラインで加速するだけだった」と余裕のスプリントだったことを匂わせた。

ポガチャル「応援してくれたみんなにありがとうと伝えたい」

 スプリントが熱を帯びていた後ろでは、マイヨジョーヌのポガチャルがチームメートや個人総合2位のログリッチらとならんでフィニッシュラインを通過。第107回ツール・ド・フランスの勝者が確定した。

スロベニア国旗をはためかせて喜びを表現するタデイ・ポガチャル Photo: Yuzuru SUNADA

 個人総合優勝を決めたタデイ・ポガチャルは、1998年9月21日生まれ、スロベニア中央部のコメンダ出身の21歳。兄を追って8歳でサイクリングを始めると、ジュニアカテゴリーで頭角を現し、国際レースでも多数の成功を収める。2017年に自国のUCIコンチネンタルチームであるログ・リュブリャナ加入後は、アンダー23カテゴリーの国際レースでも結果を残し続け、2018年には「若手の登竜門」といわれるツール・ド・ラヴニールで個人総合優勝。同年10月にはジャパンカップ サイクルロードレース出場のため来日もしている(11位)。

 プロデビューは2019年。このシーズンは序盤から好成績を連発すると、後半には初のグランツール参戦となったブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を含む個人総合3位で総合表彰台の一角を確保。今ツール同様、大会中盤からの猛追での好成績によって、グランツールレーサーとしての地位を確かなものにした。

 迎えた2020年シーズンも、ステージレースを中心に表彰台を次々と確保。ツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは個人総合4位とまずまずの成績を収めて、今大会へと臨んでいた。

個人総合上位3選手の表彰。左から2位プリモシュ・ログリッチ、1位タデイ・ポガチャル、3位リッチー・ポート Photo: Yuzuru SUNADA

 そしてツール個人総合優勝。21歳11カ月29日での戴冠は戦後最年少。昨年、22歳で頂点に立ったエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)よりも若い新王者の誕生となった。スロベニア人ライダーとしても初優勝で、同国対決となったログリッチとの最終総合タイム差59秒は史上10番目の僅差でもある。

 レース後に催された総合表彰式でマイヨジョーヌに袖を通したポガチャルは、勝利のスピーチで「本当に信じられない」と切り出すと、「ここパリで表彰台に上がることになるとは思いもよらなかった。最後まで惜しまずサポートしてくれたチームメートや家族には心から感謝している。そして3週間にわたって私を応援してくれたファンのみなさんにありがとうと伝えたい」と述べて大きな祝福を受けた。

 なお、ポガチャルは前日のステージで山岳賞のマイヨアポワも実質確定させていたほか、25歳以下が対象になる新人賞のマイヨブランでも当然の首位獲得。今大会の3冠王に輝いた。

2021年大会はブルターニュ地方で開幕

 4賞のほかでは、各ステージのチーム内上位3選手のフィニッシュタイム合算で争われるチーム総合はモビスター チームが1位に。大会全体を通じて果敢な走りを見せた選手が選考対象となるスーパー敢闘賞には、逃げで魅せ、第12ステージでは独走勝利を挙げたマルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ)が選ばれた。

ツール・ド・フランス2020の4賞。タデイ・ポガチャル(左)はマイヨジョーヌ、マイヨアポワ、マイヨブランの3冠を達成。右はマイヨヴェールのサム・ベネット Photo: Yuzuru SUNADA

 新型コロナウイルスの感染拡大によって当初の予定を2カ月遅らせて開催となった今大会。レースディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の大会期間中の感染発覚や、一部チームスタッフの感染による大会離脱などあったものの、選手からの感染は一例も確認されなかった。期間中はコース内外や関係施設でのマスク着用や消毒が徹底されたほか、一部レースコースへの立ち入り制限など、でき得る限りの対策が講じられた中で大会が進んだ。パリ到達は、それらが一定の成果を収めたといえるだろう。フランス国内にとどまらず、世界的な感染状況はいまだ予断を許さないが、この大会に関しては来年の通常日程での開催に向けて動いていくことだろう。

 ツール・ド・フランス2021年大会は、フランス北西部のブルターニュ地方で開幕することが決まっている。会期は同年6月26日から7月18日まで。全体ルートは10月29日にパリで行われる発表会で明らかになる予定だ。

第21ステージ結果
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 2時間53分32秒
2 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) +0秒
3 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
4 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ)
5 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)
6 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
7 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
8 ユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)
9 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
10 マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 87時間20分5秒
2 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +59秒
3 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +3分30秒
4 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +5分58秒
5 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +6分7秒
6 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +6分47秒
7 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +7分48秒
8 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +8分2秒
9 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +9分25秒
10 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・マクラーレン) +14分3秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 380 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 284 pts
3 マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) 260 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 82 pts
2 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 74 pts
3 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 67 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 87時間20分5秒
2 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +6分7秒
3 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマ・エフデジ) +1時間42分43秒

チーム総合
1 モビスター チーム 262時間14分58秒
2 ユンボ・ヴィスマ +18分31秒
3 バーレーン・マクラーレン +57分10秒


【J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継】

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